進軍

主要メンバーの自己紹介が終わり、作戦会議に移った。


「後1日の距離に蛮族の国を監視する国境砦ガーターが見えてくる。知っての通り、すでに蛮族達の居城となっている」


「今回の作戦は国境砦を取り戻して、蛮族達の戦力に打撃を与えるのが目的である」


ジャンヌの言葉にメビウスが質問した。


「首尾よく国境砦を取り戻した後、蛮族の国に攻め入るのかい?」

「いいや、蛮族とて人間だ。子供も含めて一人残らず虐殺するわけにもいかない。『取引』もあるし戦力として、すぐに立ち直れないほどの打撃さえ与えれば作戦は終了とする」


コンドはレグルスが質問した。


「蛮族はどれほどの数がいるんでしょうか?」

「そうだな。ヴァイキングという国で言えば30万ほどだろう。そして砦にいる戦力は1万5千ほどと報告を受けている」


!?


「こちらより5千も多いじゃないですか!しかも砦攻めって通常は3倍の数が必要ではなかったですか!?」


「うむ、よく知っているじゃないか。『一般的』な戦争ではそうだな。こちらも、もう少し傭兵を雇う予定だったのだが、聖王の邪魔が入ってな。もっともらしい理由をでっちあげられて遠征軍の数を減らされたんだ」


ジャンヌはやれやれと言った感じで首を振った。


「いや、やれやれじゃないでしょう!?少ない兵力でどうやって砦を攻略するんですか!?」


ジャンヌはその言葉を待ってましたと言う風に不敵に微笑んだ。


「言っただろ?一般的な戦争では厳しいが、こちらには『切札』が2つある。まず、向こうには魔術師が居ない。『賢者の塔』は邪教徒に、魔術師を派遣しないことになっている。魔法で城門を破壊し、一気に占拠する予定だ」


「な、なるほど。それなら何とかなりそうですね。それでもう1つの切札とは?」


ジャンヌはビシッと指を差した。


「それはお前だよ!最悪、魔法で城門が破壊できなくとも、レグルスの『神剣』ならバターを切るように城門も破壊できるだろう?」


「確かに神剣の切れ味ならいけますね」

「期待しているぞ。この戦いでお前には悪いが神託の勇者と言う事を触れ込む。いずれ次の戦いの布石になるからな。十分な戦果を上げて欲しい」


「頑張ります!」


こうして細かい作戦を話しながら時間が過ぎていった。次の日になりしばらく歩くと遂に国境砦が見えてきた。



「今日はここで野営をする!広範囲に斥候を放ち、奇襲を警戒せよ!明日の早朝に総攻撃を仕掛ける!各自、準備を怠るなよ!」


「「はいっ!!!!了解しました!」


レグルス達は街道を進み、小さな山を越えた頂上で野営の準備に入った。ここなら国境砦が一望でき、奇襲もわかり易いという理由からだった。街道の左右はちょっとした森にもなっているので防衛にも向いていた。


レグルス達ははやる気持ちを抑えて一夜を過ごすのだった。








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