許された危険
橘むつみ
【1】アリオン
第1話
もちろん、誰よりも幸せになりたいなんて思っちゃいないし、高望みするつもりもない。
手の上にあるものを指折り数えるだけでもまずまず幸せで、意図的に線引きされた
そこそこ充実した生活だ。
なのに、なぜだろう。
虚しさとも退屈とも違う何かが心の中に滞り、絶えずささやき続けている。
正面から理由を尋ねるには
欠落を持て余しているのに、消化不良で胃が重い。
「おい、コピー機潰したの誰だ」
フロア中に響き渡るような
しんと静まり返った室内に、気まずい沈黙が降りた。
何食わぬ顔でキーボードをたたく長い指と、突如として書類整理を始める慌ただしい物音と、椅子を引いてトイレに立つ人影。
それら全部を通過して、視線の矛先は彼に突き刺さる。
「
「はい」
返事が遅れると更なる
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます