凛音side ②

 凛音side ②





 ふん。あの二股ハーレム生徒会長もなかなか面白いことを考えるわね。


 私はそう思いながら、北島永久が引いてきたくじを持ってバスケ部のチームメイトの元へと向かったわ。


『グラウンドの端』と『綱引きの綱』


 まぁ、交渉のカードとしては悪くないものを引いてきたわね。


「こんにちは、佐竹さたけさん。ちょっと良いかしら?」

「こんにちは!!南野さんも実行委員だったよね!!」


 佐竹亜美さたけあみさん。同じバスケ部の同級生。


 彼女が持っているのは、


『体育館』と『大縄跳びの縄』


 霧都が説明に使っていた組み合わせね。


「もし良かったら貴女の持ってる『体育館』と私の持ってる『グラウンドの端』を交換して貰えないかしら?」

「え……それって南野さんには良い事ないよね?私は得をするけどさ」


 少しだけ訝しげな表情の佐竹さん。

 まぁ、そうよね。普通に考えたら私に『利益』は無いわね。


 でも私には『体育館』のくじが必要なのよ。


 そのことは伏せておくけどね。


「実はちょっと佐竹さんにお願いがあるのよ」

「お願い?」


「このあと部活があるでしょ?遅れて参加することになるけど、実は予定があって早くに帰りたいのよ。だけど今日は私が清掃当番だから、佐竹さんに変わってもらいたいのよね。もちろん、佐竹さんの日と交換。と言う意味よ」

「あはは。そういう事だったのね!!良いよ。今日は私が掃除当番を変わってあげるよ!!」


「ありがとう、佐竹さん。助かるわ」


 私はそう言って、『グラウンドの端』のくじを『体育館』に変えることが出来たわ。


 さて、次は『あの女狐』の所に行こうかしら。


 私は放送部の部長。三郷先輩の所へと足を運んだわ。


「こんにちは、三郷先輩。ちょっと良いかしら?」


 部屋の橋で交渉を傍観していた先輩に、私は話しかけたわ。


「うん。良いよ、南野さん。貴女が来るのを待ってたからね」


 先輩は笑いながらそう言ったわ。


「そう?なら話は早いわね。私の持ってる『体育館』と先輩の持ってる『グラウンドのトラック』を交換して貰えないかしら?」

「あはは!!随分と強気な交換を持ちかけてくるね?私が『ドッチボールの球』を持ってるから、『体育館』なら交換に応じると思ってるのかな?」


 それは流石に無理筋だよね?


 そう言ってくる先輩。

 そうよね。そんなことは百も承知よ。


 だから私は言葉を続けたわ。


「もちろん。私が提示するカードはこれだけじゃないわよ?ねぇ、先輩。放送部と新聞部はライバル関係よね?」

「……そうだね。それで、それが何か関係あるのかな?」


 スっと目を細める先輩に私は続けるわ。


「私が『次期生徒会長』と言われている桜井霧都の幼馴染だと言うことは知ってるわよね?新聞部も掴んでいない、彼の昔話とかを昼の放送で話をする。面白そうじゃないかしら?」


 私がそう言うと、先輩の目が三日月を描く。


「へぇ……面白いことを言ってくるじゃない」

「ちなみに、当然だけど私が昼の放送であいつのことを話す。と言うのはその時はまで口外しないわよ。あくまでもこの交換は『三郷先輩の善意で行われた』そのように取り計らうわよ」


「なるほどね。そこまで配慮してくれるのね。でも、それだと貴女のカードの方が強いわね。もう少しこちらに求めてくるものがあるんじゃないの?」


 そう言う先輩に、私は言ったわ。


「私は『北島永久のポジション』を奪いたいと思ってるのよ。私の味方になってくれないかしら?」

「ふぅん?具体的には私に何をして欲しいのかしら?」


「放送部の昼の放送枠に『私が桜井霧都の昔話をするコーナー』を常設して欲しいわ。全校生徒に『桜井霧都と南野凛音は十年来の付き合いのある男女だ』という情報を定着させたいのよ」

「へぇ……つまり貴女は『桜井霧都は南野凛音と付き合うべきだ』という派閥を作ろうとしてるんだ?」


「そうよ。学校を二分してやろうと思ってるわ。北島永久派と南野凛音派にね。今はまだ勝負にもなってない状態だもの」

「なるほどね。面白いことを考えてるのね。良いわよ、交換に応じるわ」


 先輩はそう言うと『グラウンドのトラック』のくじを出してきた。


「ありがとう、先輩。それじゃあこれからもよろしくね?」

「あはは。こちらこそ、たくさん楽しませてもらうよ、南野さん」


 私と三郷先輩は『体育館』と『グラウンドのトラック』のくじを交換した。


 よし。次は藤崎先輩の持ってる『バトン』を取りに行くわよ。



 私はまず最初に藤崎先輩のところに向かったわ。


「こんにちは、藤崎先輩。貴女の持ってる『バトン』のくじが欲しいわ」

「おやおや、南野さん?いきなりやって来て凄いことを言ってきたね?」


 藤崎先輩はそう言いながら、笑っている。


「貴方が持ってる道具は『綱引きの綱』だよね?交換するにはちょっと微妙だよね」

「そうね。先輩が持ってる場所も『体育館』だから、活かしょうがないわね」


「そこまでわかってるなら、どうしてこんな話を持ってきたのかしら?」


 そう言ってくる先輩に、私は言うわ。


「深緑の令嬢こと、首藤美月しゅとうみつきさん。その彼氏は学園の王子様よね?」

「うん。それがどうかしたのかしら?」


「王子様の弟が実行委員をやってるわ。首藤先輩は彼と話す機会が欲しいと思ってるんじゃないかしら?」


 私はそう言うと、実行委員をやってる首藤先輩を指さす。

 彼女はチラチラと彼氏の弟。流くんの方を見ていたわ。

 それに、彼の方も首藤さんの事が気になってるみたいね。


 きっかけさえ作れば上手く話をするんじゃないかしら?



 ちなみに、首藤先輩は『バスケットボール』のくじを持ってる。


「私がそのことを餌にして『バスケットボール』を取ってくるわ。そしたら『バトン』と交換すれば、貴女の大好きなバスケが出来るわよ?」

「あはは!!なるほどね。なかなか面白いことを言ってくるね南野さん!!」


 良いよ。貴女が『バスケットボール』のくじを持ってきたら『バトン』と交換してあげるわよ。


 藤崎先輩がそう言ったので、


「ありがとう、先輩。じゃあ私は首藤先輩の所に行ってくるわよ」

「私も着いていくよ。貴女のことを紹介してあげるわよ」


「あら、それは嬉しいわね。感謝するわ」


 そして、私は藤崎先輩と一緒に首藤先輩の所へ向かったわ。


「美月ちゃーーん!!」

「朱里ちゃん、どうしたの?」


 首藤美月しゅとうみつき先輩。

 深緑の令嬢の二つ名を持ってる三年生。


 サッカー部のエースストライカーで学園の王子様。

 星流くんのお兄さん。星明ほしあきら先輩の彼女ね。


「あのね。彼女は私の可愛い後輩の南野凛音ちゃん」

「初めまして、首藤先輩。南野凛音よ」


「初めまして南野さん。首藤美月です。それで、朱里ちゃんと一緒に来てどうかしたの?」

「貴女の持ってる『バスケットボール』のくじと私の持ってる『綱引きの綱』を交換したいのよ」


「えと……私が持ってる場所は『グラウンドの端』だから『綱引きの綱』が貰えるのは嬉しいかな。うん、良いよ!!」


 あら?私が知ってる時は彼女は『体育館』だったと思ったけど……


 まぁ、それなりに時間が経ってるから交換したのね。


「ありがとう、首藤先輩。それと本当ならもうひとつ用意していたカードがあったのよ」

「えと……それって何かな?」


「貴女の彼氏の弟が実行委員をやってるのは見てたわよね?もしかったら話をしに行ったらどうかしら?」

「め、迷惑じゃないかなぁ……」


「向こうも貴女のことを気にしていたわよ。私とくじの交換をした。そんな話題で話し始めたら良いと思うわ」

「そうだね。じゃあちょっとお邪魔してこようかな!!」


 首藤先輩はそう言うと、くじを交換したあと、私のクラスの方へと向かったわ。


 しばらく見てると、流くんと話し始めたわ。


 あの様子なら上手く行きそうね。


「はい。藤崎先輩『バスケットボール』のくじを貴女に渡すわ」


 私はそう言って、藤崎先輩に『バスケットボール』のくじを差し出す。


「うん。じゃあ私も約束通り『バトン』をあげるわよ」

「交渉成立ね」


 私と藤崎先輩は『バスケットボール』と『バトン』のくじを交換した。



「ふぅ。任務達成ね」


 私の手元には『グラウンドのトラック』と『バトン』のくじが握られている。


 これで霧都と夕飯を共にすることも出来るわ。


 別に何かをするつもりは無いけど、久しぶりにあいつと食事が出来るのは楽しみね。


 私は意気揚々と自分のクラスへと戻ったわ。

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