第十九話 ~予算会議の司会進行をやることになりました~

 第十九話




 昼の放送のことでクラスメイトにはからかわれ、凛音からは脚にローキックを喰らい、そんなことがありながら放課後を迎えた。


「それじゃあ俺と永久さんと桐崎さんは生徒会室に行ってくるよ」


 俺はSHRが終わったあと、席の近くに来ていた流にそう話す。


「頑張ってきなよ!!俺もここで予算会議の動画をスマホで見てるからね」


 流はそう言うと、笑顔でスマホを見せていた。


「私は普通に部活をしてるわよ。なんか良くわからない人間から支援が沢山来てるけど、気にしないことにしてるわ」

「まぁ、貰えるものは貰っておけよ」


 俺がそう言うと、凛音は笑いながら言う。


「そうね。美少女の宿命だと思って受け止めるわ」


 手をひらひらと振りながら彼女は教室を出て行った。


「さて、じゃあ俺たちも行こうか」

「はい!!」

「うん!!」



 庶務としてやることは、資料を配布することと先輩の背中を見ながら来年以降の自分の立ち振る舞いを学ばせてもらおう。


 そんなことを考えていた。




『会議室』




 目的の場所に着いた俺たち三人は扉をノックした後に中に入る。


「失礼します。生徒会の庶務。桜井霧都です」

「生徒会の会計。北島永久です」

「生徒会の書記。桐崎雫です!!よろしくお願いします!!」


「待ってたよ、三人とも。それじゃあ早速だけど桜井くんには資料の配布をお願いしようかな」


 中には既に桐崎先輩と黒瀬先輩が待っていた。


「北島さんは私の隣に来てね。数字のことで聞かれたら貴女が答えなさい。わからなければ私がフォローするわ」

「はい!!了解しました」


 あはは。尊敬する先輩の隣に座れるから永久さんのテンションが高い。


「雫は書記の席で会議の内容を記録してくれ」

「りょーかいだよ!!」


 そして、段々と会議室に人が増えてくる。


 俺はその人たちに手渡しで資料を渡していく。


「よろしくお願いします!!」

「ありがとう、桜井くん。頑張ってね!!」


「よろしくお願いします!!」

「おう、桜井!!頑張れよ!!」


「よろしくお願いします!!」

「君が桜井くんだね、南野さんから色々話は聞いてるよ。頑張ってね!!」


 放送部の三郷先輩。野球部の武藤先輩。バスケ部の佐藤優子先輩。


 資料を手渡しすると、皆から『頑張って』と言われた。


 なんだろ。俺の仕事はこれで終わりのはずだけど……


 そんなことを考えながら資料の配布を終え、俺は指定されている席に座る。


 放送部の機材設置もスムーズに終えていた。


「よし。定刻だ。会議を始めるぞ」


 扉の前に居た山野先生がそう言うと、会議室の扉を閉める。


 その様子を見た桐崎先輩はマイクを持って部長たちの前に立った。


「皆さんこんにちは。生徒会長の桐崎悠斗です。この場に経つのは一年ぶりですので、少し緊張しています」


「さて、これより第50回の海皇高校予算会議を始めたいと思いますが、その前に一つだけお話をしようと思います」


 ……え?


 桐崎先輩はそう言うと、俺の方を向いてニヤリと笑った。


 い、嫌な予感がする……


「皆さんに聞こうと思います。来年以降もこの場にいる方はこの場にいらっしゃいますか?」


 誰一人として手を挙げ無かった。


「これは来年以降の案にしようと思ってましたが、予算会議に出席するのは部長ですが、隣には自分の後継者を座らせることにしようと思います」


「年に一度の予算会議です。ですが、殆どの人が経験もなくただ参加してるだけ。になってしまっては勿体ないです。一度その空気を味わっておけば次年度以降の会議の質も上がると思います」


「後継者の育成。これはとても大切な事だと思ってます」


 はぁ……これがこの人のやり方か……



「では、桜井霧都生徒会庶務。君は俺の後継者だ。次期生徒会長として、この予算会議の司会進行をよろしく頼んだぞ!!」


 俺は席から立ち上がり、声を張り上げる。


「はい!!生徒会の庶務。桜井霧都が予算会議の司会進行をやらせてもらいます!!」


 俺はそう言って桐崎先輩の元へ歩く。


「……先輩の背中を見て学ぶ予定でしたが?」


 俺がそう問いかけると、先輩は笑った。


「背中を見て何がわかる。自分で経験したことしか学びにはならない。なに、安心しろ。お前では無理だと判断したら変わってやるさ」


 安い挑発だ。


「きっちりこなしますよ」


 俺はそう言うと、先輩からマイクを受け取る。


 そして、各部の部長たちに視線を送る。


 大丈夫。全員挨拶をしてる。顔見知りだ。怖くない!!


「皆さんこんにちは。生徒会の庶務。桜井霧都です。桐崎悠斗生徒会長に代わり、自分が司会進行を行います。なにぶん不慣れなところはあるかと思いますがご容赦をよろしくお願いします。何かありましたら責任は全て桐崎生徒会長でございますので」


 俺はそう言うと、先輩に視線を送る。


 先輩はそれを受けてニヤリと笑う。


「それでは、第50回海皇高校 部活動予算会議を始めたいと思います。皆さんどうぞよろしくお願いします」


 俺はそう言って頭を下げる。


 そして、桐崎先輩を中心に拍手が起きる。


 こうして予算会議はスタートした。

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