第七話 ~流から恋愛相談を受けました~

 第七話





 夜。夕飯と風呂を終えた俺は自室へと戻って来ていた。


 父親と母親はまだ戻ってきていない。


 多分来週くらいになるだろう。ってメッセージが来ていた。まぁ、特に問題なく生活は出来るので、しっかりとした作品を世に出して欲しいとは思う。


 美鈴は自室に戻って勉強をしている。


 出来の悪い俺と違って、かなり優秀な美鈴。


 来年は海皇高校を受験する。と公言している。


『お兄ちゃんと同じ高校に行くのは当然だよ!!』


 と言っていた。美鈴の学力なら問題無く受験は成功すると思っている。


『待たせたな、流。いつでも電話して平気だぜ』


 俺はそうメッセージを送った。


 彼からの相談はいつもライジンのチャットで行っていた。

 こうしてリアルを通して友人……いや親友になれたので、電話でやり取りをすることになった。


『ありがとう、霧都。じゃあ今から電話するよ』


 と返信が来た。


 そして、すぐに俺のスマホが流からの着信を伝える。


 俺はすぐにそれに応えた。


『こんばんは。夜分にごめんね、霧都』

「気にすんなよ、流。親友だろ?」


 申し訳なさそうな声の流に、俺は笑いながらそう話した。


『あはは。そう言ってくれると助かるよ』

「それで、俺に相談したいことってなんだよ?」


 俺がそう話を切り出すと、流は少しだけ言いにくそうに話を始めた。


『そ、その……恋愛相談をしたいんだ』

「なるほどね。桐崎さんとどうしたら仲良くなれるか?って所かな」

『な、なんで相手がわかるのかな!?』


 動揺する流。もう答えを言ってるようなものじゃないか。


「いや、あの様子を見てわからないほど、俺はバカじゃないし……」

『そ、そんなにわかり易かったかな?』


「うん。俺も永久さんも見て一発でわかったよ」

『あはは……』


「それで?休日にショッピングモールで仲よくご飯を食べるくらいに仲良しの二人に、俺は何を助言すれば良いんだ?」

『そ、そこまで見ていたのかよ!?』


 驚く流に俺は笑いながら言う。


「その日にさ、俺も永久さんとショッピングモールでデートをしてたんだよ。たまたまご飯の時間が合ってたんだろうな。お前と桐崎さんの一幕は見てたよ」

『あはは……てことはさ、わかるだろ……』


 情けないところを見せてしまった。俺はもっと強くなりたい。力が欲しいんだ。


「厨二病はまだ卒業出来てない感じか?」

『あまりからかわないでくれないかな!!』


「あはは。ごめんごめん。どうしてもチャットの時の感覚が抜けなくてさ」

『その気持ちはわかるけどさ。俺も本気なんだ』


「内気な性格を治すために、体育祭の実行委員になったりもしてたな」

『そうなんだ。あとはさ、筋肉を付けて、舐められないようにしたい』


「なるほどね。確かに流はひょろっちいよな」

『返す言葉も無いよ……』


「恋愛相談の前にトレーニング方法とか聞きたい感じ?」

『そうだね。とりあえず君を目標に身体を鍛えたいと思ってるんだ』


「俺を目標に!?」

『うん。君は背も高いし、身体もしっかりしてる。俺の理想なんだよね』


「それは照れるな。でも……そうだな。俺を目指すって言うなら……一緒にトレーニングするか?」

『良いのかい!?』


「うん。俺もちょっと鍛え直そうかなって思ってたからね」


 武藤先輩にホームランを叩き込まれたのは悔しい。

 次は勝ちたいからな。


 もう少し自主トレの強度を上げていこうと思ってた。


「体育祭もあるからな。そうだ、永久さんや桐崎さんも誘って皆でトレーニングするか」


 凛音はバスケ部の朝練があるだろうからな。


『親睦を深めることも出来て、身体も鍛えられる。一石二鳥だね!!』

「あはは、だろう?」


 俺はちょっといい気分になりながらそう話した。


「あとはさ、流はもう少し飯を多く食べた方がいいぞ」

『ご飯を?それはなにか理由があるのか』


「筋肉をつけるにはまずは元になる『肉』が無いとつかないんだよ。しっかりと食べて身体に肉をつけていかないと、俺みたいにがっしりとした身体にはならない。『細マッチョ』を目指してるなら話は別だけどさ」

『体質的に肉が付きにくい部分はあるけど、そうだね。もっと沢山食べることにするよ』


「あとはさ、お兄さんから話を聞いた方が良いよ」

『明兄さんから?』


「そうそう。サッカー部のエースストライカーだろ?絶対自主トレはしてるはずだよ。自宅で出来るトレーニングは詳しいと思う。それに、兄弟仲は悪くないだろ?」

『あぁ。兄さんは俺が尊敬している人の筆頭だ』


「俺は妹が居るけど、下から頼られるとやっぱり嬉しいものだよ。コミュニケーションの一つとして話をするといいよ」

『わかった。ありがとう、霧都。参考になったよ』


「あはは。流の助けになれたのなら良かったよ」


 俺はそう言うと、時計を見た。


 時間は二十一時だった。


 うん。悪くない時間だな。


「よし、『スター』!!」

『OK『ブラザー』!!』


「『ライジンやろうぜ!!』」


 俺と流は電話を切ると、それから二時間ほどオンラインゲームをして遊んだ。



 永久さんに話をして、明日から早朝トレーニングをしないか?と聞いてみよう。


 場所は……あの公園にしようかな。


 四人が身体を動かすにはちょうど良いスペースだと思うし。


 そんなことを考えながらライジンをプレイしていた。

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