第26話ポートレート
ユリア王太后は、パーシヴァル様を気に入ったのか彼をドナドナしていく。
私はすかさず追いかけた。
希少なスーツパーシヴァル様をこの瞳にたくさん焼き付けなくては。パーシヴァル様にかける情熱は誰にも負けませんわ。
パーシヴァル様のお話はすごく面白くて王族女性の心を鷲掴みにした。
その上あの美貌だ。
みんながうっとりと見惚れている。
皆様、パーシヴァル様の麗しさを共に愛でましょう。
パーシヴァル様をじっと見つめていると、ふと目があった。軽く微笑まれキュンとなる。
満足ですわ。今日はパーシヴァル様を堪能いたしました。しあわせ。
翌朝、王宮の庭を散歩していると、パーシヴァル様に出会った。
なんて、ラッキーなの!早朝からお会いできるなんて。今日は最高の1日確定ね!
パーシヴァル様は、昨日の一分の隙もないダンディなお姿とはまた違っていた。
朝起き抜けの、少し着崩れた感じがまた堪らない。
髪もいつものビシッと固められた姿とは違ってキラキラのフワフワなの。
少しハネているのが、可愛くてキュン死にしそうだ。
パーシヴァル様、もしや私を萌え殺すおつもりですか?
成仏する自信しかありませんけど…。
「レディ・エスメラルダ、今度任務で国境に出兵することになったんだ。」
なんと。
「ご無事で。ご武運をお祈りしていますわ。」
前世の漫画に出てくるパーシヴァル将軍は連戦連勝。傷ひとつ負うことはなかった。
ただ一度十年戦争終結後、女王エスメラルダを庇ってその腕を負傷した以外は。
女王エスメラルダは、その時パーシヴァル将軍の溢れる血を押さえたハンカチを生涯オルゴールに入れて手元に置いていた。
最後に亡くなった時にただそれだけを棺に入れるように遺言したくらいだ。
血染めのハンカチを洗わずに手元におくなんて…。
なかなかレアな推しグッズだけど、私には直筆のお手紙や絵画がある。漫画の女王エスメラルダには勝ったわ!
パーシヴァル様がご無事であることだけが願いなのです。神に祈りましょう。
全能の神よ、八百万の神も、ええい、萌神様にもお願いいたします!パーシヴァル様がご無事でありますように。
「私の無事を祈ってくれているの?ありがとう。」
朝の光に照らされたキラキラの金の髪が眩しい。
いやそれ以上にその微笑みが眩しい。眩しすぎて昇華してしまいそうだ。
「パーシヴァル様、何卒ご無事でありますように。」
淑女の作法に乗っ取って綺麗に膝を折り、神に祈りを捧げた。萌え神にまで祈っているが、将来当て馬女王となる私は間違いなく神秘的で、美しい。
「嬉しいな。きっと無事に戻ってくる。見送りに来てくれるかな?」
あぁ、いくら当て馬とはいえ、パーシヴァル様の美しさには負けるわ。
「はい!もちろんですわ。」
喜んで。
「ふふ。レディ・エスメラルダは可愛いね。これこの前手紙に書いてくれた劇のポートレートだよ。」
おねだりしたポートレート、しかも直筆サイン付き。感激で胸がいっぱいになる。
「見送りに来てくれた時には、エスメラルダ嬢のポートレートも欲しいな。」
なんと。パーシヴァル様が私のポートレートをご所望とは。ありがたき幸せ。
私のお気に入りの逸品を用意いたしますわ。
もちろん、直筆サイン入りで。
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