　この箱の中には、人が閉じ込められている。

　四方から剣を刺すが、中の人は無傷というよくあるやつだ。

　今回はリハーサルだが、だからといって手は抜けない。俺は思い切り剣を指す。

「うげ」

　中から声が。周囲からもきゃあ、と驚きの声。本番を意識しての反応だろう。さすがプロフェッショナルだ。

　さらに次々と剣を突き刺していく。そのたびに周囲が唖然とする。

　やがて、全ての剣を刺し終わった。

　厳かな空気の中、用具係の声が静かに響く。

「すみません。その箱リハーサル用だったんです」

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