最終章-21【真打ち登場】

再び第九に向かって飛んだギルガメッシュがレーザービームに弾かれた。二度目である。ギルガメッシュの身体が出力の勢いに飛ばされて、建物の壁に激突して背中がめり込んだ。


「普通のゴーレムとは違うのだよ! 食らえ!!」


父親に向かって放たれる追い討ちのレーザービーム。


「なんのっ!!」


赤く発光するレーザービームを回避したギルガメッシュが町中を走って翻弄する。


ギルガメッシュが走った後ろをレーザービームが追いかけるのだが、レーザービームになぞられた壁がドロドロと溶けながら燃え上がった。


「おのれ、バカ息子がっ!!」


悪態をつきながら走るギルガメッシュが第九の周りをグルリと回った。だが、レーザービームは途切れることなくギルガメッシュを追いかける。出力が落ちることなく360度全方向にレーザービームを発射していた。


「ぬぬぬぬぬっ!!」


レーザービームに追われたギルガメッシュがゾディアックたちの前を横切った。


「「「危ないっ!!」」」


物陰に隠れていたゾディアック、ドクトル・スカル、エスキモーの三人が頭を伏せてレーザービームを避ける。すると、レーザービームを躱したドクトル・スカルが周りを見ながら叫んだ。


「ヤバイわよ、町中が炎上しているぞ!!」


ドクトル・スカルは、かつて自分の家が放火で炎上した事件を思い出して顔を青ざめていた。トラウマを抉られたのだろう。


しかし、少し離れた場所で炎を見ているバイマンが蕩けるような眼差して燃え上がる建物を凝視していた。


「う、美しい……」


こいつが放火の犯人だ。


ゾディアックがエスキモーに言う。


「エスキモーさん、早く火を消して!!」


「ちょっと待ってください。こんなレーザービームが飛び交う中で消火活動なんて無理ですよ!!」


ドクトル・スカルがボソリと言った。


「ちっ……、役に立たないオカマだな……。」


「オカマとは失敬な。僕はただの女装趣味な変態です!!」


「「変態なのは自白するんだ……」」


三人が揉めていると、レーザービームに追われたギルガメッシュが建物の屋根の上に飛んだ。瓦を鳴らしながら駆け巡る。その背後をレーザービームが追いかけ続けていた。


ギルガメッシュは平屋の屋根から二階の屋根に飛び乗り、更に三階建の屋根に飛び移る。そして、レーザービームを飛び越えると第九に向かって高くジャンプした。第九の頂上に立つアマデウスに迫る。それは人間とは思えないほどのジャンプ力だった。


「引退したとは言え、元は一流の冒険者だ。現在現役ギルマスの父を舐めるなよ、バカ息子が!!」


拳を握りしめたギルガメッシュがアマデウスの高さまで到達していた。残る距離は2メートル。


「食らえ、ギルマスパーーーンチっ!!」


唸る拳がアマデウスの顔面に迫る。


あと10センチ。


しかし──。


「甘いのは親父だ。マジックイレイザー!!」


「くさっ!!」


もう少しでパンチが届く間合いでアマデウスの反撃魔法にギルガメッシュの全身が包まれた。掌から放出された光の波動がギルガメッシュの全身に叩きつけられ押し戻す。


ゾディアックとエスキモーが声を揃えて叫ぶ。


「「欲しかった!」」


そして、マジックイレイザーで20メートルほど押し戻されたギルガメッシュに第九からのレーザービームが追い討ちで放たれた。そのレーザービームを食らったギルガメッシュが空中で爆発する。そして、煙を上げながら真っ黒な炭の塊となって地面に落ちた。


それを見ていたドクトル・スカルが骸骨仮面を手で押さえながら首を振って述べる。


「ああ~、最強の変態でも、あの一物は止められなかったか~……」


第九の前方、路上に落ちた消し炭を見下ろしながらアマデウスが指示を出した。


「全力前進。あのゴミ野郎を踏み潰せ!!」


とどめを指すつもりだ。第九が二つのタマタマを回転させながら前に走り出した。焼け焦げたギルガメッシュを踏み潰すつもりだ。


屋根の上のゴリが叫ぶ。


「皆、一斉射撃で止めろ。ギルマスを助けるんだ!!」


無駄だと分かっていながらも全員が飛び道具を第九に向かって放った。ゴリが爆発のハープーンガンを放ち、ミーちゃんがロングボウを放つ。地上の魔法使いたちも魔法を乱射した。マッチョエルフたちが弓矢や槍を放つと、ビキニノームたちすら煉瓦を投擲していた。全員でギルガメッシュのピンチを救おうとしている。


「ちっ、小賢しい。っに、しても前が見えないぞ」


爆風で前方が見えなくなったアマデウスが進行の足を緩めた。その隙に、オアイドスとカンパネルラ爺さんの二人が全裸でギルガメッシュに走り寄る。


カンパネルラ爺さんが丸焦げになったギルガメッシュの頬を叩いた。


「おい、意識はあるか、ギルマス?」


ギルガメッシュが弱々しく答える。


「意識はあるが身体が動かない……」


とまうやら息はあるようだ。しかし全身が丸焦げである。


「オアイドス、そっちの肩を支えろ。二人で運ぶぞい」


「ああ、分かったよ、カンパネルラ爺さん!」


マジックイレイザーとレーザービームで衣類が焼け落ちて全裸になったギルガメッシュを、何故か全裸なオアイドスとカンパネルラ爺さんが肩を貸しながら裏路地まで運ぶ。


そして、全裸の親父を見失ったアマデウスが述べた。


「糞っ、逃げられたか。仕方無い、当初の目標を狙うか。糞親父は後回しだ!」


そう述べると第九は魔王城に向かって突き進んだ。



一方、魔王城街上空。



「へぇ~、あれがヴァルハラか~」


魔王城街の上空を浮遊しているヴァルハラの側を二匹のドラゴンが飛んでいた。


大きなドラゴンは青く、一回り小さいドラゴンは赤い。そのブルードラゴンの背中に人間が乗っていた。アスランだ。


「いや~、グラブル、悪いな~。乗せてもらってさ~」


ブルードラゴンがテレパシーで答える。


『今回は特別だぞ。私は人間の暮らしに興味はあるが、人間の争い事には口を挟まない主義なんだからな』


「まあ、固いことを言うなよ。ちょっと運んでもらうだけだからさ~」


『じゃあ、とっとと届けるわよ、ダーリン』


言うなりブルードラゴンが急降下した。グングンとアスランの視界に地上の町並みが飛び込んで来る。


「うひょ~~~!!!」


『じゃあ、行ってきなさい!!』


「はいっ、行ってきまーーーす!!!」


急降下するグラブルの背中からアスランがダイブした。今度は一人で降下して行く。


「目標、どんぴしゃだぜ!!」


アスランが第九の頂上に、ドシンっと音を鳴らして蟹股で着地する。


「ぬおおっ!!」


アスランの足に電撃の痺れが走った。その電撃が背筋を伝わり脳天に抜ける。ヅラの毛先まで痺れて揺れていた。


そして、アマデウスが突如空から降って来たアスランを見て声を上げる。


「貴様、アスラン!!」


「どうも~、アスランで~す」


「どうやって降って来た!?」


「ちょっと友達に送ってもらってさ~」


第九の天辺は8メートルほどの円形。その中で、アスランとアマデウスが向かい合って立っていた。アマデウスの長髪とアスランのヅラを突風が揺らしている。


アスランがお茶目にウィンクを飛ばす。


「お待たせアマデウス」


「まさか、上から攻めて来るとは死角だったぞ……」


「ガラ空きだったからな」


アスランは右肩をグルグルと回しながら腕を振るって見せる。やる気は満々らしい。



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