最終章-14【ミケランジェロvsロデム】

「おおぅらぁっ!!!」


ぶつかり合う巨漢と巨体。サイクロプスのミケランジェロが巨大ウォーハンマーをバッティングフォームのように真横に振るった。踏み込みから振り回される全力の鉄槌が巨漢モグラのロデムを狙う。だが、巨大モグラは鈎爪を上げてウォーハンマーを掌で受け止めた。甲高い激音が鳴り響く。


「掴まれた!?」


モグラなのに以外にも器用だ。そして、引っ張られる。


「モグゥ!!」


「なんのなんのっ!!」


ミケランジェロはウォーハンマーを引っ張られるがままに体の流れを任せる。そして、引かれる勢いを利用してモグラの額を蹴り飛ばした。


ローリングソバットだ。廻し飛び蹴りの踵がロデムの額に命中する。しかし、その蹴りの威力はほとんど鎧兜に阻まれた。衝撃が甲冑に威力を落とす。それでもロデムの巨漢が少し後退する。


「いいっ!!」


続いてミケランジェロは奥歯を噛み締めながらウォーハンマーを引っ張って鈎爪を振りほどく。


「こ~れ~で~も~、く~ら~え~!!」


背筋をピンっと伸ばしてウォーハンマーを高く振り上げると同時に真上にジャンプしたミケランジェロが降下の勢いを乗せてウォーハンマーを叩き下ろした。


全力の上に腕力と降下の体重を乗せて振り下ろされたウォーハンマーの槌頭がロデムのアイアンヘルムを打ち殴る。


するとガィィイイイっと鋼と鋼が鳴り響いた。鼓膜を貫くほどの激音だ。打たれたロデムは顎を地面にぶつけて目を回している。


「モ、モグぅ……」


ロデムの巨体がグラリとフラ付いた。攻撃が効いている。


「そぉ~~~らっ!!」


更にミケランジェロはウォーハンマーを横に回して身体をスピンさせると、一回転の後に槌撃でロデムの頬を打ち殴った。更に力任せに振り切る。


「ぶはっ!!」


頬をウォーハンマーで殴られたロデムの口から折れた牙が数本ほど飛んで行き、家の壁に突き刺さった。


「危ないっ!!」


飛んで来た牙がオアイドスのすぐ横にも突き刺さる。危うく牙がオアイドスに命中するところだった。


更にミケランジェロは逆回転に身体を回すとウォーハンマーでロデムの逆の頬を打ち殴った。


力んで振り切る。


今度はロデムの口から大量の鮮血が吐き飛ばされた。


飛び散る鮮血。家の壁がビシャリと鮮血で染まった。


ロデムが左右に鮮血を吐き飛ばすとオアイドスの身体も赤く染まった。


物陰からモグラとサイクロプスの殴り合いを見ていたオアイドスが顔についた鮮血を腕で拭いながら叫ぶ。


「効いているぞ。ミケちゃんが勝てるんじゃないのか!?」


呆れた顔でバイマンが言う。


「ミケちゃんって、お前ら、ちゃん付けで呼び合えるほどに仲が良かったの……?」


「いや、ぜんぜん」


「だよね……」


ハープーンガンを空に向かって放つゴリがバイマンに向かって援護を求める。


「バイマン、そんな変態吟遊詩人なんてほっといて、こっちを手伝ってくれ!!」


「あ~、ハイハイ分かりました」


三馬鹿トリオを無視してミケランジェロはウォーハンマーでロデムを乱打していた。


「このっ! このっ! このっ!!」


だが、乱打の途中でウォーハンマーの柄がポッキリと折れてしまう。


「ちっ、鋼が折れたか!!」


しかし、ロデムが被っていたアイアンヘルムもボコボコにへこんでいた。ウォーハンマーも折れたがアイアンヘルムも防御力がだだ下がりだろう。それだけベコベコだ。


ミケランジェロは折れたウォーハンマーの柄を捨てる。


「モグぅぅうううう!!」


無手となったミケランジェロにロデムが頭から突っ込んで来た。体当たりのヘッドバットだ。


その突進を胸で受けたミケランジェロが吹き飛ばされる。だが、倒れない。数メートル飛ばされたが踏ん張った。


そこにロデムが尖った口を開いて再度突っ込んで来る。紙付きを狙っていた。


「武器が無くてもサイクロプスは負けない!!」


噛み付き攻撃を躱したミケランジェロが脇の下でロデムの尖った口を抱え込む。ヘッドロックで上顎と下顎を力任せに押さえ込んで閉じさせて仕舞う。


「ぬうううううっ!!」


そして、ロデムの口をフロントヘッドロックで封じたミケランジェロが腰を落として背筋を反らした。そこから20メートルあるロデムの巨漢を持ち上げようと試みる。


「ぬうおををををををををを!!!!」


力む、踏ん張る、背を反らす。食い縛りながら唸りを上げる。単眼が血走っていた。ミケランジェロの額と首に青筋が浮かび上がって弾けそうだ。


更に腕や脚にも血管が浮かび上がる。ミケランジェロの全身が振るえていた。震える一つ目が飛び出しそうになっている。背骨がミシミシと悲鳴を上げていた。それでも力む。更に締め上げる。持ち上げる。


「ぞぉらぁぁあああ!!」


そして、ロデムの巨漢が浮き上がる。前足が地面から離れると、続いて後ろ足も地面から離れた。巨漢が浮いたのだ。完全にロデムの巨漢が持ち上げられている。更にその位置は高さを増して行く。


「ぬうおををををををををを!!!!」


そして、ミケランジェロはロデムの巨漢を逆さまにして肩に担いでいた。逆さまに抱え上げられたロデムは四本足をバタつかせて踠いている。ブレーンバスターの状態だ。そこからの急降下。


「死ねっ!!」


ミケランジェロは垂直落下式ブレーンバスターで真下にロデムの巨体を落とした。口から地面に叩きつけられたロデムの上顎と下顎が石畳に激突して同時に砕けて潰れる。そして鮮血が飛び散り大きな花を咲かしていた。


「ど、とうだっ!」


ロデムの身体は、そのまま墓標のように逆さまに立っていた。ロデムは痙攣こそしているが動かない。


そして、ミケランジェロが身体を離して起き上がると、ロデムの身体が背中側に倒れた。腹を見せて倒れたロデムは、もう動かない。気絶したのか、こと切れたのか……。どちらにしろミケランジェロの勝ちである。


「元魔王軍の副将を、舐めるからだ。このモグラ野郎が……」


言いながらミケランジェロは尻餅をついて地べたに腰かけた。溜め息を吐いて胡座をかく。


すると日食で隠れていた太陽が姿を表した。薄暗い景色が明るさを取り戻しだす。日の光が再び舞い戻る。周囲の町並みが昼の明るさに戻って行く。


「あれ、晴れた……?」


空を見上げながらミケランジェロが言うと駆け寄って来たオアイドスが歓喜にはしゃぎながら話し掛けてきた。


「ミケちゃん、やりましたね~。ダークネスマイナーもモグラに潰されたみたいですよ~」


オアイドスが指差すところを見てみれば、モグラの下敷きになったダークネスマイナーの下半身が窺えた。


「まずは一人か……」


そう呟くミケランジェロが座ったまま湖のほうを見ると、クジラ巨人と誰か人間が戦ってるのが見えた。


「あれは、誰だ?」


オアイドスも日差しを片手で避けながら湖のほうを見て言った。


「あれ、ガルガンチュワさんじゃあないですか?」


「ガルガンチュワ?」


「あの臍出しタンクトップにエロエロなホットパンツは間違いなくガルガンチュワさんの特徴と一致ですわ~」


「ガルガンチュワ? 誰、それ?」


どうやらミケランジェロはガルガンチュワを知らないらしい。顔合わせをしていないようだ。



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