14-13【ビキニノームズ】

「わーい、わーい、仲間だ~、仲間だ~」


「なーかま、なーかま」


「ビキニ仲間だ~」


ビキニノームたちが子供のようにジャレついて来る。


俺の太股に頬を擦り付けて来る者、高い鼻を俺の股間に押し付けて来る者、俺の後ろの割れ目に息を吹き込んで来る者。


ビキニを着込んだノームたちが様々なアクションで俺を歓迎してくれていた。


「わーはー、わーはー」


「グリグリグリ~」


「仲間だ、なーかーまー」


だが、しかし──。


「ええーーい、ウザったい!!」


俺は体を振るって群がるビキニノームを弾き飛ばした。


小人たちが周囲にころがる。


「「「うわー!」」」


「「「なんでー」」」


ビキニ姿の小人たちが1メートルほど飛んで転んだ。


その表情は悲しく曇っている。


するといち早く起き上がったビキニノームが言った。


「何をするんだ~。オラたちビキニ仲間じゃあないか~」


「ビキニ仲間でも股間やお尻をグリグリすんな!!」


「えー、気持ち良くなかったか?」


「気持ち良いが、キモイぞ!!」


「天邪鬼だな~」


うん、分かったぞ。


こいつら変態妖精だ。


一般常識が欠除したド変態たちだな。


間違いない。


「ところでお前らはここで何しているんだ?」


「住んでるに決まってるじゃあないか~」


言いながらキャンタマをボリボリとかきむしっている。


「それは分かる。そうじゃあなくって、ここで何して生きてるんだ?」


「主にお掃除して暇潰ししている」


そして、キャンタマをかいた指先を鼻に近づけ臭いを嗅ぎ始める。


綺麗好きなのか不衛生なのか分からん連中だ。


「なるほど……」


やはりダンジョンを綺麗に掃除しているのはこいつらの仕業か。


「じゃあ訊くが、このダンジョンにお宝が眠っていると思うんだが、何処か知らないか?」


もう俺は、このダンジョンの生態系にウンザリしていたから早く終わらせたかったのだ。


だから探索よりも帰還を優先させた。


とっととお宝をゲットして地上に帰りたいのである。


ビキニノームたちは顔を付き合わせながら話し出す。


「お宝ってアレかな?」


「多分アレだね~」


「そうだよ、お宝って言ったらアレしかないよね~」


おおっ、早速有力情報かな!


「お宝って言えば、皆で作ったポエムだよね」


「そうだよポエムだよ」


「ポエム最高~!」


ズコーー……。


おっと、やべえ……。


新喜劇のように転けてもうた……。


「どうしたビキニ人間、何故に転んだ?」


「いや、ちょっと……」


「なんだ、オラたちが作ったポエムを聞きたいか?」


「いや、結構だ……」


「そうか、聞きたいか!」


「聞きたかねーよ!」


「よーし、じゃあオラが朗読するぞ~」


「ヒューヒュー、待ってました大統領!」


「おい、ゴラァ。人の話を聞けよ!」


「ビキニ人間。今はポエムを聞く時だ。静かにしていろ」


「だから聞きたくないって言ってるだろ!」


「「「ええーー……」」」


ビキニノームたちが残念そうに声を揃えた。


表情が露骨に悲しんでいる。


「俺が言ってるお宝は、心が暖まる想い出とかじゃあないんだよ。物質的なお宝だ!」


「じゃあそれはビキニだ!」


「それも違う!!」


「ビキニじゃあないのか……?」


「もうビキニから放れろ!」


あー、もー、頭が痛くなる。


脳味噌の小さい妖精さん相手だと、本当に疲れるわ~……。


疲労とストレスがどんどんと溜まるわ。


「いいか、良く聞けよ。お宝ってヤツは、マジックアイテムだ」


「「「マジックアイテム~?」」」


ビキニノームたちが揃って首を傾げた。


やっぱり駄目かな……。


こいつらから有力な情報をゲットできそうにないな。


諦めるか……。


そんな感じで俺が諦めかけると一匹のビキニノームが口走った。


「マジックアイテムなら、アレじゃあないか?」


「アレってなんだよ。お前、心当たりあるのか?」


「奥の禁断の間にある水晶じゃあないか?」


「「「あー、あれかー」」」


おおっ、どうやら正解が出たかな!


俺は口走ったビキニノームの襟首を掴んで顔を近付けた。


「その水晶はなんだ!?」


「煩悩を叶えてくれる水晶だ。オラたちがこのビキニアーマーを貰ったのも、その水晶からだ」


ビンゴ、キター!!


禁断の間にある煩悩を叶えてくれる水晶だと!?


なんともエロイ部屋があったものだな。


しかもエロエロなマジックアイテムを崇めてやがる。


ここに来て凄いマジックアイテムが出てきましたよ!!


急にやる気が湧いて来たぜ!!


「でも、今は入れないんだ……」


しょんぼりした顔でビキニノームがそう言った。


皆が暗く俯く。


「なんでだよ?」


「今は禁断の間になったからだ……」


「なんで禁断なんだよ?」


「レッサーデーモンのルイレアール様が住んでおられるからだよ」


「レッサーデーモンだと……」


「数年前から水晶ごと部屋を乗っ取られただ」


ここで出て来たラスボスがレッサーデーモンかよ。


レッサーデーモンと言えば魔王城の地下に居たプロフェッサー・クイジナートがレッサーデーモンだったよな。


生前の話だけどさ。


今はアンデッドなのかな?


スケルトン化しているからアンデッドなのだろう。


んん~~……。


それにしても、まだ俺は悪魔系とはほとんど戦ったことがない。


レッサーデーモンより下級のサキュバスとすら出合ったことがないんだよな。


ガーゴイルはデーモンっぽいけど完璧な悪魔じゃあないしさ。


あれってゴーレム?


石像系モンスターなの?


魔法生物なのかな?


分からん……。


まあ、どうでもいいか。


とにかく生きてるデーモンと言えば、ロード・オブ・ザ・ピットぐらいだ……。


いやいや、アイツのことは忘れよう。


今は思い出すな、不吉だ……。


まあ、レッサーデーモンぐらいなら、どうにかなるだろうさ。


勝てない相手てもないだろう。


たぶん、知らんけど。


「じゃあ、そのルイレアールが居る禁断の間まで案内しな」


「「「「断る!!」」」」


「なんでやねん!?」


「だって怖いもん!!」


「殺されちゃうよ!!」


「殺されたらビキニを剥ぎ取られるよ!」


「ビキニは剥ぎ取られてしまえ」


「そんな酷い!」


「まあ、奥って言ってたよな?」


俺は祭壇の裏に進んだ。


しかし、何もない。


扉でも隠されてるかな?


「んん?」


ふと後ろを振り向いたらビキニノームたちが床を指差している。


口には出せないがヒントは出せるのね。


俺が指差された床を探すと隠し扉があった。


開けてみると地下に進む階段が出てくる。


「よし、じゃあ言って来るぜ。俺がレッサーデーモンを倒せるように、神様にでも祈っててくれや!」


「分かった。ビキニの神様に祈ってるだ。アーメン」


「「「アーメン、そーめん、冷や素麺!」」」


この世界に素麺ってあるんだ……。


俺はそんなことを考えながら地下へと進んだ。


「行ってらっしゃい、ビキニ人間~!」


あっ、ビキニ姿なの忘れてた!!


レッサーデーモンと出会う前に着替えておかねば。


変態だと勘違いされてまう。


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