5-8【感染屁】

プリッ、プリッ、プリッ……。


「おはようございま~す」


「やあ、アスランくん。おはよう」


プリッ、プリッ、プリッ……。


俺が目を覚まして一階に降りて行くと、パーカーさんがテーブル席でコーヒーを飲んでいた。


部屋の中にはコーヒーの良い匂いが漂っている。


プリッ、プリッ、プリッ……。


「キミも飲むかい、コーヒーを?」


「飲んで良いのかい。ならば頂くぜぇ」


プリッ、プリッ、プリッ……。


俺が眠気眼でコーヒーを啜っていると、厨房からピイターさんが食器を運んで来た。


皿の上にはダブルの目玉焼きが置かれている。


プリッ、プリッ、プリッ……。


「やあ、アスランくん~。昨日は良く眠れたか~い。ほら、朝御飯だよ~。食べるだろ~?」


「有り難うございますだ~。ピイターさん」


プリッ、プリッ、プリッ……。


俺たち三人は、こうして朝食を頂いた。


目玉焼きとパン。


それにコーヒー。


なんともモーニングで簡単な朝食である。


プリッ、プリッ、プリッ……。


「ところで、アスランくん。本当に今日から閉鎖ダンジョンに入るのかね?」


「ああとも、入りますとも」


プリッ、プリッ、プリッ……。


「マジでかい~。本当に冒険者ってヤツは怖いもの知らずだね~」


「だなぁ。俺だったら命令でも断るぜ」


プリッ、プリッ、プリッ……。


「まあ、これも仕事だからな。それと俺が閉鎖ダンジョンに入っている間は、鉄扉を閉めないでくださいな。いつでもダッシュで避難できるようにさ」


「ああ、分かっている。どうせモンスターも上がって来ないから問題無いだろう」


プリッ、プリッ、プリッ……。


「二人とも、良かったら俺と一緒に閉鎖ダンジョンに入らないか? ここに居ても暇だろ」


「冗談はやめてくれよ」


「そうそう、僕たちは死にたくないからね~」


プリッ、プリッ、プリッ……。


「…………」


「…………」


「…………」


プリッ、プリッ、プリッ……。


「ところでさ?」


「なんだよ、パーカーさん?」


「この屁は誰がこいているんだ?」


プリッ、プリッ、プリッ……。


「俺です。アスランの屁です……。俺のお尻が緩みきっています……。ガス漏れまくりです」


「やっぱりそうか……」


プリッ、プリッ、プリッ……。


「え、なに。キミは病気なのか?」


「ええっ!? 俺、病気なの!?」


プリッ、プリッ、プリッ……。


「これだけ屁が止まらないと病気だろ」


「僕もそう思いますよ~」


プリッ、プリッ、プリッ……。


「ちょっと二人とも! 逃げないでくださいな!!」


「そりゃあ、逃げるだろ。移されたら堪らんからな……」


「あれ?」


「どうした、アスランくん?」


「屁が止まったぞ!」


「本当だ。ガス漏れ音が聞こえなくなったぞ!」


「やったーーー!!」


プリッ、プリッ、プリッ……。


「「あれ……」」


「アスランくん、また出始めたのか?」


「俺じゃあないですよ?」


プリッ、プリッ、プリッ……。


「パーカー、アスランくん~。僕だよ~………」


「「!?」」


プリッ、プリッ、プリッ……。


「今度は僕のお尻が緩みだしたよ~……」


「何故にアスランくんの屁がピイターに移るんだよ!?」


プリッ、プリッ、プリッ……。


「知らないよ~。僕だって初めてさ~!!」


「とりあえず俺に近付くな!」


「なんでだよ~!?」


「移ったらたまらんだろ!!」


「移るわけないだろ~!!」


「ちょっと待て……」


「屁が止まってないか?」


「と、止まっているな?」


「止まっているね~……」


プリッ、プリッ、プリッ……。


「いや、またガス漏れ再開だ!!」


「誰だ、今度は!?」


プリッ、プリッ、プリッ……。


「アスランくんですか~?」


「俺は大丈夫だ。ピイターさんじゃあね?」


「ぼ、僕は大丈夫だよ~……」


プリッ、プリッ、プリッ……。


「俺だわ。ガス漏れしてるの俺だわ!」


「「今度はパーカーさんか!!」」


プリッ、プリッ、プリッ……。


「どうするパーカーさん、ピイターさん。とりあえずゆっくり落ち着いて考えよう!」


「そ、そうだな、アスランくん……」


プリッ、プリッ、プリッ……。


「それよりも、どうしてこの屁は伝染するんだい~!?」


「知るか、ピイター!」


プリッ、プリッ、プリッ……。


「落ち着けよ、パーカーさん。とりあえず俺は閉鎖ダンジョンに旅立つからさ、それからゆっくりと二人で考えてくれよ。じゃあ、ピイターさん、閉鎖ダンジョンの鍵を開けてくれないか?」


「ああ、分かったよ~。今開けるね~」


プリッ、プリッ、プリッ……。


「いやいやいや、ちょっと待てよ、お前ら!?」


「「なに?」」


プリッ、プリッ、プリッ……。


「まずはこの屁をどうにかしないとさ!?」


「「なんで?」」


プリッ、プリッ、プリッ……。


「いゃ~~、なんでとかじゃあないでしょうが。謎の伝染屁ですよ!」


「ほら、それはパーカーさんの屁だからね」


プリッ、プリッ、プリッ……。


「そうそう、もうじきスパイダーが来たら僕も交代で帰るからさ~。あとはスパイダーと考えてよ~」


「ちょっと待てやお前らな!」


プリッ、プリッ、プリッ……。


「そもそもお前らから移った屁だぞ!」


「だが、今はパーカーさんの屁だ。もう俺には関係ない」


「僕にも関係ないです~」


プリッ、プリッ、プリッ……。


「畜生、こうなったら意地でもお前らに移し返してやるぞ!」


「うわ、ちょっと尻をぶつけて来るなよ、キモイ!!」


プリッ、プリッ、プリッ……。


「うーわ、止めてくれ~!!」


「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラ!!」


「うわ、バッチイ!!」


「これで、どうだ!!」


「ひぃーーー!!!」


「「「あっ……」」」


「止まったな……?」


「止まりましたね~?」


「パーカーさん、ピイターさん、本当に止まったのか?」


「うん、止まってるよ~……」


「おう、止まってるな!」


「「「よっしゃーー!!」」」


プリッ、プリッ、プリッ……。


プリッ、プリッ、プリッ……。


プリッ、プリッ、プリッ……。


「「「あーーーー……」」」


「またかよ……」


「またですね~……」


「もしかして、全員が屁をしているのか?」


プリッ、プリッ、プリッ……。


プリッ、プリッ、プリッ……。


プリッ、プリッ、プリッ……。


「そのようだな」


「そうみたいです~……」


「畜生、今度は分裂したか!」


その時である。


もう一人の登場人物が現れた。


「ちぃーす、皆のスター兵士スパイダーの出勤でーす」


「「「おらーーー!!」」」


三人が尻から一斉にスパイダーに飛び掛かった。


「「「食らえ!!!」」」


「ぬぬぬーーーっ!!!」


出勤して来たばかりのスパイダーに、三人が揃ってヒップアタックを仕掛けたのであった。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る