3-3【山賊を追跡】

俺は全裸のおっさんと別れて山沿いの街道を進んでいた。


目指すは山賊の討伐。


全裸のおっさんが言うように、まだ山賊どもがそこらに潜んでいるやも知れないので、周囲を気にして進んだ。


俺は周囲を警戒するだけでなく、足元も良く見て歩みを進める。


何を見ているかって言えば、足跡である。


この辺は乾燥地帯で埃っぽいし砂地も少なくない。


だから地面に足跡も残りやすいはずだ。


その証拠に全裸おっさんの裸足の足跡もハッキリくっきりモッチリと残っていた。


あっ、モッチリはおっさんのほうだった。


それは、さておき──。


素人の俺ですらちゃんと分かるぐらいに足跡が残っていた。


これなら辿れるだろう。


そして足跡を追う俺は、しばらくして目的のポイントを発見する。


全裸おっさんが山賊どもに襲われたと思われるポイントだ。


その場には複数の足跡が広がっていた。


ここで全裸おっさんが襲われて、身ぐるみをすべて剥がされてから素足が始まったのだろう。


更に複数の足跡は、右側の山に続いていた。


そちらから来て、そちら側に戻って行ったのだろう。


足跡からして、件の三人組だと分かった。


一つは大きな足跡で、もう一つは普通サイズだ。


更にもう一つ残る足跡は明らかにハイヒールである。


こんな荒れていて足元が悪い土地をハイヒールで歩むなんて、かなりビジュアルを気にした女なんだろうなって思った。


出来ればエロイ女でないことを祈る。


もしもエロエロ衣装のセクシーダイナマイトレディーだったら、俺の場合は強面の強者より強敵になるだろうさ。


そこは特別に気を付けなければならないだろう。


俺は右側の山へ上って行く複数の足跡を追って、山を登り始める。


とにかくヤツらを追跡する。


それに確かこちら側には、スカル姉さんからもらった情報のキャンプ候補地の一つがある方向のはずだ。


それは古い神殿跡地らしい。


かなり昔の悪魔教団が築いた神殿らしいのだが、数百年経っているために、ほとんどが崩壊していて、建物の壁が僅かに残っているだけだそうな。


しかし、壁があれば、埃っぽい風だけは防げる。


それだけでもキャンプ地としては上等なのだろう。


こんな荒れ地では風だけでも防げないと夜は辛いからな。


とにかく遺跡跡地が怪しい。


おそらくヤツらは、そこにキャンプを張っているはずだ。


正確な場所は分からないから、やはりこの足跡を追跡するのが得策だろう。


俺はひたすらに山を上り足跡を追った。


やがて山の頂上に到着して、辺りを見回す。


すると山の裏側を下った先に、話に聞いた神殿跡地の壁を見つけた。


10メートル四方ぐらいの崩れかけたレンガ造りの壁が建っている。


天井は一つも残っていない。


扉らしい物も見当たらない。


壁の高さは大体2メートルぐらいしかないだろうか。


それと、そちら側に向かう三人組の背中も見つけた。


「よし、ビンゴだ!」


ヤツらとアジトを見つけたぞ。


三人組の先頭は、黒いマントと長い黒髪を靡かせている女性だった。


遠目で後ろ姿しか見えないからセクシーかプリティーかも分からない。


その後ろを全裸おっさんから奪ったと思われる荷物を背負った矮躯な男が続き、更に両手に荷物鞄を下げた痩せた男が続いていた。


これで後は不意打ちをやり放題だ。


隙を突くも寝首を刈るも作戦は自由である。


俺は身を隠して三人の動向を見守った。


さてさて、ヤツらの次の行動次第でこちらの動きも変わってくる。


三人組を見張っていると、奴らは壁の裏側に姿を隠した。


尾行はここまでだ。


「やはりあそこがキャンプ地だな」


しかしだ、しばらく待ったが出てこない。


ヤツらの動きが止まった。


もしかして今日の仕事は終わりだろうか?


朝一から獲物を狩れたから満足したのかな?


それとも休憩中かな?


飯なのかな?


俺は適当な岩陰に荷物を下ろすと、バトルアックスとショートソードを取り出して装備した。


戦斧を背負い、短剣の鞘を腰に下げた。


三本の投擲用短剣が刺さった腰ベルトも確認する。


戦闘準備は万全であった。


それからしばらく神殿の壁を見張っていたが、ヤツらに動きはない。


「本当に休憩中かな?」


痺れを切らせた俺は坂道を下って神殿の壁を目指す。


少し迂回して進む。


その途中には【忍び足スキルLv2】と【気配消しスキルLv2】、更には岩影を利用して【潜伏スキルLv2】を使って徐々に徐々にと壁際に接近していく。


そしておそらく見付かることなく壁際に到着してから、念のためにショートソードを鞘から抜いておいた。


万が一に備える。


それから俺は、壁に張り付き裏側を覗き込めそうな場所を探した。


すると壁に小さな窓らしき穴があったので、そぉ~っと覗き混んだ。


「ほほ~ぅ」


内側の様子は結構凄かった。


沢山の荷物が山積みになっている。


おそらく何人もの旅商人から奪った荷物だろう。


「こりゃあ随分と貯め込んでいるな」


それと驚いたのは、その山積みの荷物の前に置かれた豪華なソファーだった。


その深紅で値打ち物の豪華なソファーに、女性が色っぽく横たわって居る。


黒髪の長い女性は、肩に黒いフサフサの羽が飾られた黒いマントを羽織り、その下には魅惑的な黒革のボンテージを身に付けていた。


そしてロングブーツを履いているだけで太股が露になった両脚をセクシーに組んでいる。


ケバい!


それより、ヤバい!


俺のエロス探知機が反応しちゃったぞ!


ピコピコと鳴ってますわ!!


すると心臓が、チクチクと痛み出す!!


あ、それと……。


女はこっちを見てやがる。


怪しい垂れ目で薄笑いながら、俺のほうを見てやがった。


俺と目が合う。


「バレている!?」


その刹那だった。


俺の背後でジャシリと砂利を踏み締める音が僅かに聴こえた。


「気配!」


俺は咄嗟に振り返る。


振り返った俺の視界に飛び込んで来たのは、棘付きの棍棒だった。


勢い良く棘付き棍棒が眼前に迫る。


俺は尻餅をつくように腰を落として棘付き棍棒を回避する。


すると棘付き棍棒が俺の頭上にあった神殿の壁を強打した。


ボコンっといい音が鳴ると、俺の頭に砕けた壁の破片がバラバラと降って来る。


棘付き棍棒を振るったのは、チビマッチョの男だった。


四角い強面の口元は、青髭が目立って見えた。


「あわあわあわ!」


俺は這いつくばりながら逃げる。


その俺を追っかけながらチビマッチョが棘付き棍棒をハチャメチャに振り回していた。


俺のお尻に棘付き棍棒で煽られた風が当たる。


あんな棘々しい物で、お尻を殴られたら切れ痔どころじゃあ済まないぞ!


畜生、これでも食らえ!


「ファイヤーシャード!」


四つん這いで逃げていた俺は体を返すと同時に魔法を放った。


「ふばぁっ!!」


チビマッチョが炎の飛礫に怯んでいる隙に俺は立ち上がってショートソードを構える。


「殺気っ!?」


俺は咄嗟に強い殺意を感じ取って、そちらを見る。


すると痩せた男がクロスボウを構えてこちらを狙っていた。


「今度は飛び道具か!?」


痩せた男は狙いが定まったのか引き金を引いた。


クロスボウから発射された矢が俺の間近を飛んで行く。


しかし矢は当たらなかった……。


「あいつ、外しやがったぜ、間抜けめ!」


痩せた男がクロスボウの弦を引き直している間に俺は走って壁の陰に隠れた。


俺は壁の蔭で息を整えながら作戦を考える。


不意打ちは失敗した。


逆に待ち伏せ的な不意打ち攻撃を食らっちまったぜ。


だが、敵のターンは凌いだぞ!


敵は棍棒の接近戦キャラと、クロスボウの遠距離キャラの組み合わせか。


バランスは良いな。


しかし、まあ、どうにでもなる。


こっちだって剣と魔法を使える魔法戦士なんだぜ。


接近戦も遠距離攻撃も可能なのだから、戦力は同等だろう。


問題は、あのエロイ姉ちゃんが、どう出てくるかだ。


戦士なのか、魔法使いなのか?


それで戦況は異なって来るだろう。


さてさて、来るは三対一の戦いだ。


さーて、楽しんで行こうかな!


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