2-12【わくわくチェック】

ゴブリンたちとの戦闘が終わって一息ついていると、完全に日が沈む。


夜になったのでマジックトーチをショートソードの先にかけて明かりを灯した。


その光で周囲の森がぼんやりと明るく照らし出される。


辺りの森は静かだった。


フクロウがホーホーと呑気に鳴いているだけである。


それにしても、まことに今回は済みませんでした。


暴力的描写や残酷的描写にチェックを入れていない作品なのに、ついつい思わず本気で戦ってしまいましたわん。


ザクッとか、ザバッとか、ブスッとか、モッチリとか、やってしまいました。


あれ、モッチリはないか?


その結果、今の俺は頭からホブゴブリンの返り血を浴びてスプラッタゾンビのようなエグい見てくれになってしまっています。


もう、ベトベトですがな。


てか、ギャグもなかったよね。


マジで本気に戦い過ぎました。


まあ、それだけ強敵だったのかな。


ホブゴブリンとゴブリンシャーマンの存在がさ。


そんなこんなで休憩を終えた俺は、ゴブリンたちの死体と山小屋内部を漁って目ぼしいアイテムをゲットする。


そして、俺がだいたい戦利品を漁り終わったころである。


その辺に転がっているゴブリンたちの死体が銀色に光出したのだ。


「あぁ……、またか」


その光たちは淡くて切なく朧気に輝くと、死体から浮き上がるように離れて、そのままユラユラと夜空に向かって飛んで行ってしまう。


「あれは、コボルトの時と一緒だな……」


おそらくゴブリンたちの魂なのだろう。


その光たちは、絡まるように戯れながら天に昇ると星々の瞬きに溶け込んで消えていった。


その光景が、俺には何やら楽しそうにも窺えた。


だから勝手に感じ取る。


「あいつら、成仏したのかな──」


俺はゴブリンたちの魂を夜空に見送ると、それから村の近くに流れている川に向かった。


水浴びと洗濯が目的である。


何せ全身返り血でドロドロだからね。


このままでは村長のところに戻れないだろう。


こんな姿で帰ったら、完全に引かれるか、下手すりゃあ悲鳴を上げられて大騒ぎになりかねない。


最悪はゾンビと間違われて討伐の冒険者を呼ばれるかも知れないしね。


俺は夜の川で洗濯をした衣類を近くの木に引っ掻けて乾かしている間に、新スキルや戦利品のチェックを始めた。


まあ、全裸でだ……。


でも、この瞬間だけは、いつもわくわくするな。


戦利品チェックってさ、冒険の醍醐味の一つだよね。


なんにしろ御褒美タイムは楽しいものである。


まずはレベルが8に上がったので新スキルのチェックからだ。


どんな新スキルを習得できたか楽しみである。


とにかく、キャラの成長も楽しいものだ。


「ステータス画面、かも~~ん!」


おっ!


今回は三つも同時に新スキルを覚えているぞ!


凄くね!!


どれどれ、どんな新スキルかな。


説明文を見てみよう。


【ショートボウスキルLv1】

小型弓の戦闘力が上がる。


【ダガー投擲スキルLv1】

短刀を投擲した際の命中率と威力が上がる。


あ~、この二つは戦闘力の基本値が上がるタイプだよね。


でも、ダガースキルを覚えてないのにダガー投擲スキルを先に覚えてしまったぞ。


なんじゃこりゃ……。


それにしても今回の戦闘は初めて弓とかダガーを使ったもんな。


やっぱり新スキル取得の種類は、行動に比例するんだね。


まあ、これで、また一つ強くなったってことだし問題はないけれどさ。


まあ、よしよしだ。


えーと、次は──。


【マラソンコストダウンLv1】

長距離を走っている間の体力消費が軽減される。


うむ、今回の旅は随分と急いだからな。


先を急ぐ余り、走りもした。


遅れを取り戻すためにだ。


そう言えば、ソドムタウンに来る前に、少女Aに追われて随分と走ったっけ……。


それでマラソン系のスキルを覚えたんだな。


これはないよりましなスキルってやつか──。


まあ、貰えるものは貰っておこう。


必ず何かの役には立つはずだからね。


さて、残りは成長したスキルだな。


【ショートソードスキルLv3】がLv4にアップして、【忍び足スキルLv1】と【気配消しスキルLv1】が各々Lv2にアップしてるぞ。


まあ、だいぶ敵の寝首を刈ってるもんな。


てか、俺のクラスって、もしかしたらアサシンなのかな?


それだと陰気なクラスだな~。


そして【魔法マジックアローLv1】と【魔法マジックトーチLv1】がLv2にアップした。


これで魔法の矢が二発撃てるぜ。


さてさて、次は戦利品だな!


お金は全部かき集めて42Gだった。


なんか少なくね?


ショボ過ぎだろ。


ゴブリンって、こんなに貧乏なモンスターなのね。


まあ、ほぼほぼ蛮族だもんな。


そもそもゴブリンが人間の通貨を持っていても使うところがないだろうしね。


これだと報酬はクエストボーナスしか期待できないってわけかい。


冒険者の収益は、クエストをクリアしたさいに貰える報酬だけなのかな?


でも、今回のゴブリンたちはマジックアイテムを持ってやがったもんね。


これも俺のハクスラスキルの恩恵だろう。


そしてマジックアイテムは、ホブゴブリンが持っていた大きな戦斧と、ゴブリンシャーマンが持っていた禍々しい杖と、動物の牙っぽい飾りのネックレスから魔力反応があった。


それと、ゴブリンシャーマンが魔法のスクロールを一枚持っていたぞ。


このスクロールの鑑定は最後の楽しみに取っておこう。


まずはゴブリンシャーマンの杖とネックレスから鑑定してみる。


杖とネックレスの鑑定結果はこうだった。


【ムーンワンド+1】

月夜の晩に魔力が大向上する。


【ウルフファングネックレス±1】

視力が向上する。ただし野外で狼の怒りを買いやすくなる。


むう~……。


どっちもどっちだな。


ムーンワンドの月夜限定ってなんだよ。


でも、魔力向上が大だな。


大向上は初めてである。


月夜のみ大魔術師な設定かよ。


まあ、いいか。


これは売り物候補だな。


さて、それと──。


ウルフファングネックレスは視力アップなのか?


文字通り、遠くが見えたり、小さな文字が読めるようになるのかな?


眼鏡の代わりか?


てか、村や町で見るからに、眼鏡を掛けた人をほとんど見ないから、この世界だと眼鏡とかは高級品なのかな?


だとすれば、目が悪くなった金持ちな老人には、高値で売れそうだぜ。


でもなに、このペナルティーみたいなの。


【ただし野外で狼の怒りを買いやすくなる】


こんなパターンもあるんだな。


てか、良く見たらプラスマイナス1って書いてあったわ。


マジで、新パターンだな。


まあ、このアイテムを使ってる人物が町から出なけりゃあ関係ないか。


そうそう町の中に狼も居ないだろう。


ほぼほぼ±1じゃあなくって+1であろうさね。


勝手な解釈だが、そう言うことにしておく。


よし、次だ──。


俺はホブゴブリンが振るっていた大きな戦斧を鑑定した。


これには大きな期待を抱いている。


派手なの来いや!


派手な効果があってこそのマジックアイテムだもんな。


そして、鑑定結果は──。


【バトルアックス+1】

装備者のみ、この斧の重量軽減効果。


んん?


また分からん説明だな。


まずは試しだ、装備してみよう。


ああ~、見た目より装備してみると軽く感じるなあ。


これが重量軽減効果ってやつかな


そして俺は、ちょっと近くの木の枝を斧で叩いてみた。


すると木の枝をサックリと軽々切り裂いてしまう。


なるほどね~。


装備した人は軽く持てるけど、食らう側は重たい一撃のままなのね。


これならパワフルな戦いができるぞ!


派手でいいじゃんか!


これはいいものだぜ!


当たりのマジックアイテムじゃんか!!


テンションが上がってきましたよ!


さてさてさて、最後はスクロールだ。


どんな魔法でもいいから、ピカソだけは無しにしてもらいたい。


ここで再びピカソが来たらトラウマになるぞ、マジで!


そんでもって鑑定結果は──。


【魔法ファイヤーシャードLv1】

攻撃力は小。火属性。射程距離10メートルの飛翔体魔法。回数は魔法レベル分だけ撃てる。


おお、攻撃魔法だぜ!


当たりだ!


よし!


これって、さっきゴブリンシャーマンが使っていた炎の飛礫攻撃だよな。


射程距離がマジックアローより少し短いけれど火属性がついているぞ。


これで遠距離魔法が撃てる回数も増えるだろう。


今はまだ一回だ。


でもマジックアローと合わせれば遠距離魔法が三回撃てる。


なんかこれで派手な戦いができそうだぜ。


もうそろそろ、土を投げつけたりとか、ダガーを投げたりとかの、苦し紛れの攻撃をしなくても済みそうだな。


何せ二種類の飛び道具魔法をゲットしたのだから。


完全に魔法戦士っぽくねえ!


やっぱり俺は陰気なアサシンなんかじゃあないぞ!


俺はド派手な魔法戦士だ!


いや……、もしかしてマジックアサシンとかかな?


まあ、どちらにしても、俺、かっこよくねえ!


よし、早速スクロールを使って習得しよう。


そして、スクロールが灰になった。


俺は一通り戦利品の整理が終わると服が乾くのを待っていた。


でも、ぜんぜん乾かない。


何せお天道様が隠れた夜だもの。


「しゃあねぇなぁ~」


俺は全裸で服と装備を持って村長の家を目指す。


暖炉の火を借りて衣類を乾かそうと考えた。


それに全裸の夜は寒いのだ。


何より水浴びが効いている。


そして、村の中を全裸で進む俺は、初めてこの異世界に転生したころを思い出していた。


服は偉大だ。


やっぱり全裸は寒いしアカンよね。


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