1-22【ハーレムキング】

廃鉱内に俺の怒声が連呼して轟き響き渡る。


「オラ、オラ、オラ、オラ、オラ、オラ、オラ、オラ、オラ、オラ、オラ、オラ、オラ、オラ、オラ、オラ、オラ、オラ、オラ、オラ、オラ、オラ、オラ、オラ、オラ、オラ、オラ、オラ、オラ、オラ、オラ、オラ、オラ、オラ、オラ、オラ、オラ、オラ、オラ、オラ、オラ、オラ、オラ、オラ、オラ、オラ、オラ、わら、オラ、オラ!!!!!!」


怒りが頂点に達した俺は八つ当たりをブチ撒けるようにコボルトたちを襲っていた。


その光景は狂暴且つ野蛮。


今は取っ捕まえたコボルトのマウントを取って、拳で顔面をボコボコに殴り続けている最中であった。


倒れて仰向けになっているコボルトの腹に体重を乗せるように股がりながら顔面を左右の拳で繰り返し繰り返し繰り返し繰り返し何度も何度も何度も何度も往復で殴っているのだ。


俺は下にある柴犬顔が既にブルドックのような顔に腫れ上がっているのを確認していても馬乗りパンチを止めなかった。


「お前が泣くまで殴り続けるぞ!!」


いや、もうコボルトは意識を失っている。


いやいや、もう既に死んでいるかも知れない。


そのぐらい俺は無慈悲にもコボルトを残酷にボコリ続けていた。


それは完璧に動物虐待で逮捕されても可笑しくないぐらいの強行である。


もう俺は自分がお笑いエンタメラノベ作品の主人公だと言うことを忘れて怒りをぶちかましていた。


この怒りが収まるまで主人公としての好感度なんて考えてられるかってんだ。


殴られているコボルトは、もう既にピクリとも動かない。


そこで俺は殴るのを止めた。


「つ~ぎ~わ~~!!」


馬乗りになっていたコボルトの腹から腰を浮かせた俺は新たなる獲物を探す。


まだまだまだまだ怒りが収まらないのだ。


もっと殴りたい!


そして、直ぐ側に居たコボルトたちと目が合った。


俺がギロりと狂犬のように睨み付けるとコボルトたちは表情を青ざめながら肩を竦める。


こいつらは仲間が馬乗りでボコられているのに助けないで見ているだけだったのだ。


いや、俺の気迫に腰を抜かして動けなかったのだろう。


なんにしろ怯えまくっていやがる。


「み~つ~け~た~ぞ~~!!」


「ヒィーーー!!」


悪鬼羅刹のような凶悪な俺の眼差しに恐れをなしてビビりまくったコボルトたちが逃げ出した。


しかし俺は逃がすことなく追い回す。


もちろん追われるコボルトたちは必死に逃げ回る。


完全に廃鉱内は大パニックと化していた。


とにかく俺は追った。


逃げるから追うのだ。


そして一匹一匹捕まえると襲って拳でボコボコにしてやった。


もう立ち向かって来るコボルトは一匹も居ない。


と、言うか、もうほとんどのコボルトたちが死んでいる。


怒り狂う俺の被害者たちである。


「オラオラオラッ、待てやゴラァ!!」


「ヒィーーー!!」


俺は最後の一匹だと思われるコボルトの背中を追った。


迷路のような廃鉱内の通路を右へ左へと掻き回すように逃げ惑うコボルトも必死のようだ。


まあ、俺に捕まれば死ぬまでボコられるのだから必死にもなるよね。


「逃げんな、ゴラァ! 逃げたら殺すぞ! 逃げなくても殺すけれどよ!!」


「ヒィーーー!!」


その時には気付いていなかったが、逃げるコボルトは、廃鉱の出入り口側に逃げずに、奥の大部屋を目指して逃げていた。


そう、俺はまんまと誘きだされていたのだ。


そんなことにも気が付かずに俺は逃げるコボルトを怒りの表情で追い回し大部屋に飛び込んだ。


そこは丸いドーム型の部屋だった。


直径20メートルぐらいである。


その大部屋の奥には木材で作られた粗末な玉座があり、大柄のコボルトがふてぶてしく座っていた。


ハスキー顔のコボルトは、マッチョなボディーに革鎧を着込んでいる。


顔もなんだか勇ましい。


逃げていたコボルトは、その玉座の陰に逃げ込み隠れた。


コボルトのくせして玉座とは生意気だ。


まるで自分がコボルトキングだと言いたげな態度である。


何より生意気なのは、玉座の周りに、ふかふかの毛皮の絨毯が敷き詰められており、その上にビキニやらハイレグやらの水着を纏った雌コボルトたち四匹が、セクシーポーズで大柄のコボルトに寄り添うように寝っ転がっているのだ。


「こ、こいつ……」


このコボルトはハーレムを築いていやがる!!


超むかつく!!


俺が糞女神の呪いでハーレムどころか、イチャラブ行為にすら励めないのに、このコボルトはハーレムを築いていやがるぞ!!


そもそもコボルトがハーレムってなんだよ!?


こ、ろ、す!!


こ、ろ、し、て、や、る、ぞ!!!


ぜっーーーたいに殺してやるぞ!!!


俺は純粋な怒りのままにマジックトーチがかけられた木の枝を強く握り締めたまま腰からショートソードを引き抜いた。


俺が怨霊のような顔で大部屋の中を歩んで近付くと、大柄のコボルトは玉座からふてぶてしく立ち上がる。


「ガルル」


デカイ……。


そこで俺は冷静になる。


眼前のコボルトは、コボルトとは思えない身長と立派な体格である。


まさにマッチョコボルトだ。


今回のラスボスだろう。


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