第51話 果たされる復讐

 敵を引き付けつつ、斬り捨てていくブラウズの姿は見ていて心強い。

 いつの間にか紫色の小鬼ゴブリンを全て斬り終わっていた。


「さあ、もう終わりだ。そのアリアを大人しくさせるんだ」

「確かに貴様は強いだろうが、私のアリアほどじゃない」


 ゼノが合図するとアリアの髪が伸びてブラウズとシェルが巻き取られてた。

 二人はアリアの髪から抜ける事ができずにいる。


願いの種オリジンよ、来なければこの二人を殺す」


 ゼノの有無を言わせない問いに、君は……従う事にする。

 拒否すれば、確実にブラウズもシェルも死んでしまうだろう。


「そうだ。それでいい。我が愛しの願いの種オリジン


 君がゼノに近付いて行くと、ブラウズとシェルの叫び声が聞こえる。

 

「ぐっ、行かなくていい、アッシュ! 行くな!」

「アッシュ! 行ってはいけません!」


 ゼノの元に辿り着くと君の頭にゼノの手が乗せられる。

 怒りが君の中から噴出しそうなったが、耐えた。

 だが、そんな君の気持ちも虚しく、ゼノから無情な言葉が聞こえた。


「よし、開放してやろう。放してやれアリス……壁に向かってな」


 二人はアリスに壁に向けって勢いよく投げつけられた。

 壁にぶつかり、何かが砕けたような嫌な音が聞こえる。

 ブラウズは投げられている途中で態勢を変えて直撃を避けたが、シェルは壁に打ち付けられて頭と口から大量の血が流れていた。


 君は見た瞬間、理解してしまった。

 シェルが死んでしまった事を。

 ゼノへの怒りを抑え付けていた理性が外れる。


 そうだ、ゼノは大量の魔物と犯罪者の人間の犠牲から君を生み出した。

 たとえ魔物であろうとも、たとえ犯罪者であろうとも、生き物としての尊厳を犯し命を好き勝手にする事は許されない。

 君は実験のために使われた大量の犠牲によって生み出されたのだ。

 その犠牲になった命を還さねばならない。


 今、君は果たさねばならない。

 シードと交わした契約を。そして復讐を。


 君は、君の復讐を果たす・・・・・・・為に、ゼノの手を払いアリアの元へ駆け出した。アリアから放たれる髪を叩き落としながら、一直線に向かって行った。

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