第31話 湧き出す異形

 穴に向かって入ると奥のほうに明かりが見えた。

 音はそこから聞こえてくる。

 君はブラウズを呼ぶと、すぐに返答がくる。


「アッシュなのか!? どうやって……いや、今はそんな場合じゃない。この白い渦から魔物が出てくるんだ。もう何匹斬ったか分からないが、こいつらはヤバい」


 近くのランタンから照らされる光が異形の物体を映し出す。

 薄暗い紫色をした小鬼ゴブリンだった。

 確かこいつは緑色だとマリアは言っていたはずだ。


小鬼ゴブリンは普通は緑色をしているんだが、クッ。紫色の厄介なやつだ。毒を吐いてくる。おまけに普通の小鬼ゴブリンと比較にならない強さだ!」


 それでも毒を斬り、複数で組んで攻撃してくる紫色の小鬼ゴブリンをブラウズは軽々と斬り裂いているように見える。

 次々倒れて砂のように消えていく小鬼ゴブリンたち。

 だが、消えていくほどに次々に湧き出してくるのにうんざりしたのか、ブラウズは白い渦へと突撃して斬った。


「クソッ。手応えは感じるのに、破壊まではできないんだ」


 斬った時に白い渦は形が歪んで硬いものを斬ったような音がしている。

 まったく効果は無い訳ではないが、決め手に欠けているように見えた。

 ブラウズも流石に息を切らし始めている。



 ―――哀れな亡者共め。見るに耐えない。

 ―――お前アッシュが鎮めるのだ。

 ―――それがお前アッシュの責任でもある。



 突然の声に君は驚くが、君の責任でもあるとはどういう意味なのだろうか。

 だけど声は嘘を言ってるように聞こえない。

 記憶が無いからなのだろうか。


 いや、それよりも今はこの紫色の小鬼ゴブリンたちをどうにかしないといけない。


 鎮めるのだという声に君は……。

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