目覚めのアッシュ【完結】

うららぎ

第1話 君がいる場所

 君は町にいた。

 行き交う人々はそれぞれ思い思いに道を歩いている。

 大きな荷物を持ちゆっくりと歩く者。

 声を上げて走り回る子供たちと、それを見守る大人。

 

 屋台からは、肉の程よく焼けた匂いが道行く人を誘い呼び寄せている。

 整備された道には馬車が走り、巨大なお城へと向かっていた。

 馬車の出入りに合わせて城内から兵士のような装いをした人が集まっていた。


 しばらく町の様子を見渡していた君は、この場所がどこなのか大体把握する。

 どうやら城下町にいて人を見ていたようだ。

 そうして人の流れを見ていると、横からの衝撃に君は倒れてしまう。


「おっと、悪いね。しかし、こんな場所でボケっと立っている君にも問題はある。危ないからもう少し道の端に行きなさい」


 君は起き上がろうとするが、足に力が入らずに立ち上がれない。

 空腹と倦怠感で身体が思うように動かず、起きられずにいると男は慌てた様子で君を立ち上がらせた。


「お、おい。そんなに強く当たっていないはずだ。どうした?」


 男が立ち上がらせてくれるが君は力なく座り込み、思うように身体が動かせずにいた。

 お腹から別の生物がいるような音が鳴り、男は笑った。


「そうか腹が減って動けなかったのか。よし、それなら俺が君に飯を食べさせてあげよう」


 男の声を聞いて、安心した君は気が緩むと同時に意識が途絶えた。



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