パーティーから追放された魔力ゼロのロクデナシ冒険者、十年ぶりに再会した高スペックなヤンデレ気質幼馴染達の求婚を回避しながら魔剣を握る!~最高の冒険者になるための魔王奇譚~
三氏ゴロウ
第一章 Sランク冒険者のヤンデレ幼馴染、再起のロクデナシ編
第1話 お荷物冒険、追放される
「スパーダ、てめぇは今日で俺達のパーティを抜けてもらう」
「……え?」
王都から馬車で一日程度掛かる距離にある町、『ロードス』。
そこにある地方ギルド局、その待合室で俺は二年以上加入しているパーティーからクビ宣告を受けた。
「い、いやいやいやいや!! ちょ、ちょっと待ってくれよ! 何で急に!?」
『そうじゃそうじゃ!』
焦った俺は堪らず声を上げる。
だがそんな様子を見せても眉一つ変えずにパーティーリーダーであるリュードは口を開いた。
「先日、俺たちのパーティーはAランクに昇格した!! だから、役立たずのお前はいらないんだよ!!」
「……っ」
リュードの言葉に俺は何も返す言葉が無かった。
「その通りよ。どのクエストを受けても、貴方の無能ぶりは目に余るわ」
更に追い打ちを掛けるのは同じくパーティーメンバーのミランだ。
彼女は酷く突き放すように俺に棘のある言葉を刺す。
「そ、そんな……! な、なぁレナも何か言ってくれよ?」
俺はパーティー内のもう一人の女性であるレナに助けを求めた。
気弱な彼女なら、こう言えば俺に手を差し伸べてくれると思ったのだ。
「え、えぇ……と。ご、ごめんなさい……」
しかしその期待はあっさりと裏切られる。
「ま、待ってくれよ! きゅ、急にクビなんて困るって!!」
『全くじゃ!! 儂らはこれからどうすればよいと申すか!!』
「そうは言うがなスパーダ。なら自分が有能だと証明してくれないか?」
そう言って俺を見たのはパーティーメンバー最後の一人、ロイドだ。
「うっ……」
彼の言葉に、またも俺は反論ができなかった。
「お前の剣の腕には時折、目を見張るものがある。だがそれだけだ……魔法の使えないお前は、パーティーにはいらない」
そう……彼の言う通り俺は魔法が使えないのである。
本来魔法は差こそあれど誰でも使えるものなのだ。
だが俺はそれが使えない。
そもそもの話として、体内に魔力が存在しないのである。
大勢のモンスターを殲滅するにも、強力なモンスターを倒すのにも魔法による攻撃や強化、回復は必須だ。
『戦士』であるリュードは魔法によって自身を強化したり剣に火属性の魔力を付与したりして攻撃する。
『重戦士』であるロイドは魔法によってターゲットを自分に集め、魔法によって強化した盾と肉体で攻撃を防ぐ。
『魔法使い』であるミランは様々な属性の攻撃魔法を用いて、モンスターの大群は殲滅し、大型モンスターには大きなダメージを与える。
『付与術師』であるレナは、回復魔法で仲間を回復させ、強化魔法を仲間に付与し対象の魔法の威力を底上げする。
対して俺はと言えば……本当に何もしていなかった。
強いて言えば道中で襲って来た小型モンスター数匹を倒したり、細かい雑用をしていた程度だ。
「しかも笑えるのが元々魔法が使えてたのに使えなくなったってことだよなぁ!! そんな奴聞いたことねぇぜ!!」
「……」
リュードが俺を嘲笑う。
そうだ。俺は魔法が使えていた――――使えないのではなく、使えなくなったのだ。
しかし、その理由を語ったところで信じてくれるわけがなく、証明も……できない。
「という訳だ。Aランクになった俺たちのパーティーに、てめぇみたいなお荷物はいらねぇんだよ!! てめぇだけだ!! 何の成長もせず、のこのこと後ろに引っ付いてるのはよぉ!!」
パーティーランクの昇格は、パーティーリーダーの個人ランクと連動する。
つまり、リーダーであるリュードの個人ランクがAランクになったということだ。
当然、個人ランク昇格は容易なことではない。
しかし、リュードはみるみる内に力を付け実績を積み重ね、ギルドからランク昇格を認められたのだ。
そしてそれは他のメンバーも負けてはいない。
ミランは既にAランク、ロイドとレナはまだBランクだがいつ昇格の話がギルドから来てもおかしくない。
それに比べ俺は、リュードの言う通り何の成長もせず……彼らとの差がどんどんと乖離していった。
自分でも分かる――――俺はこのパーティーにふさわしくない、と。
「いい加減、皆我慢の限界なんだよ!! てめぇみたいな奴の尻拭いをすんのはなぁ!!」
吐き捨てるように、リュードは俺を睨み付ける。
だが、そんなこと関係ない。
俺には俺の事情がある。
「な、なぁ本当に俺クビか!? 困るって、俺これからどうやって金稼げばいいんだよ!? 貯金も無いしさぁ!!」
「それはあなたが食費に使い過ぎなのが悪いんでしょ?」
全く以てその通りである。
ミランの正論が耳に痛い。
「そ、それはしょうがないだろ!! 腹が減るんだから!!」
「どこの世界にほとんどの報酬金を食費に使う人間がいるんだ?」
「いるんだよ!! ここに!!」
『むしろお前らが食わなすぎなんじゃ!! もっと食え愚か者共が!!』
俺は自分を勢いよく指差した。
空腹は自然現象で生理現象なのだ……いや、本当は違うのだが仕方ない事である。
『おいおい、まさか本当にぱーてぃーを追放されてしまうのかスパーダ!?』
「そうなんだよ!! お前からも何か言ってやってくれゼノ!!」
俺は背中に背負っている剣に話しかけた。
「ほらそれ……」
「え?」
呆れたように言うミランの方に俺は目を向ける。
「あなた時々背中の剣に向かって話すでしょ。正直不気味なのよ、レナも怖がっているし」
「ス、スパーダさんは本当に、いつも誰と話してるんですか……?」
「ミラン、レナ! 聞いてくれ!! お前らには聞こえないかもしれないけど、俺にはちゃんと聞こえるんだよ!! だから安心してほしい!!」
「な、何も安心出来ないんですけど……」
レナは肩を縮こませる。
「それにスパーダ。何故お前はいつもその剣を抜かず、腰の剣で戦う?」
そう言ってロイドは俺の腰に携えている剣を見た。
彼の言う通り、俺はクエスト中、背中の剣を使わずに腰の剣を使って戦っている。
「そ、それもちょっと……色々あって……」
しかしその理由を答えることは出来ない。
ロイドの質問を俺ははぐらかした。
「はぁ……質問には明確に答えられない、魔法は使えない、おまけに背中の剣と話し始める……。本当に、救いようがないわね。あなた」
「ぐはぁ……!?」
ミランの言葉の槍が、俺の心の中心を穿つ。
『かぁ~! 高貴な儂の声が聞こえぬなどなんと下等な生物よ!! 哀れじゃ哀れじゃ!!』
強がるようにゼノはそう言うが、この声も勿論皆には届いていない。
「とにかく!! てめぇは今日でクビ、これは確定事項だ!! 達者でやれよ……もっとも、てめぇみたいな奴は誰もパーティーに欲しくないだろうがな!」
「ま、待てって!! 何でこのタイミングなんだよ!!」
このタイミング、というのも今日俺達のパーティーはモンスター討伐のクエストに向かう予定なのだ。
いくら俺を切り捨てると言っても、それが終わってからでもいいはず。
あまりにも急すぎる展開に、俺は違和感を感じずにはいられなかった。
「っ!! う、うるせぇ!! いいんだよそんな事は!! じゃあな!!」
一瞬動揺を見せたリュードはそう言い放つと、仲間たちと共にそのままギルド局から出て行ってしまった。
「ま、マジかよ……」
『剣士』スパーダ、十六歳。
パーティーを追放されソロになりました。
◇◇◇
小話:
次話からここに小説内では書ききれない情報やその話の軽い解説なんかを書いていきます。
読んでくださりありがとうございます!
応援してくださる方は作品のフォローや★評価、感想などいただけると嬉しいです!
※現在『ギャルにパシリとして気に入られた俺は解放されるために奮闘する。』というラブコメも連載中です!
かなりとても面白い感じになってると思いますのでよろしければこちらも読んでいただけると嬉しいです!
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