第2話 ラスボスエリアで、目指せ快適ライフ!
このラスボスエリアの所有者――か。
どうやらダンジョン全体ではなく、あくまでこの空間に限定されるということらしい。
まあラスボスって言っても雇われというか、職業みたいなもんだしな。
拠点ができただけでもよしとするか。
……というか待てよ。
万が一。もしかしたら。
「――あ、あの、音声さん? もしかして反応してくれたりは」
『はい、何でしょう? 私にお答えできることであれば、何なりと』
は、話せたああああああああ!!!
機械に反応もらってこんな喜んでしまうあたり、我ながら切なくはあるが。
しかしそれでも、まったく誰とも話せないよりは数百倍マシだ。
「あの、えっと……オレこの世界に転生したばかりでここのこと何も知らなくて。いろいろと教えてもらえませんか?」
『小鳥遊蒼太様、私に敬語は不要です』
「そ、そうなのか。じゃあ遠慮なく。オレのことは蒼太でいいぞ」
音声に実体はなく、傍から見れば1人で喋ってるヤバいヤツにしか見えないが。
しかし今は、このやり取りを見て「ヤバいヤツ」認定してくれる人すらいない。悲しい。
『かしこまりました。では蒼太様、この世界のこと、と言いますと?』
「……質問が大きすぎたか。じゃあまず、ここってダンジョンのラスボスステージってことで合ってるんだよな?」
『はい。ここはアース王国領内の秘境に位置するダンジョンの最下層、地下32階層のラスボスエリアです』
――くそ。やっぱりあの女神の言ってた転生情報は本当だったのか。
「じゃあ、このラスボスエリアについて分かることを教えてくれるか? オレはいったい、ここで何をどうすればいいんだ?」
『ラスボスエリアは、ラスボスである蒼太様の専用エリアです。ほかのモンスターたちは許可なく立ち入ることはできません。入り口の鉄扉を開ける特殊アイテムを入手できた冒険者のみ、たどり着ける仕様です』
つまり、その特殊アイテムを手に入れてやってきた強者冒険者たちと戦い、倒されないように生き残るのがオレの役割ってことか?
戦闘どころか護身術を習った経験すらないこのオレが?
どう考えても無理がすぎる。
もしかして、あの女神バカなのか???
とはいえ、転生してしまった事実を覆すことはできないだろう。
この生を終えるには、このラスボスエリアまでたどり着いた冒険者たちに倒されるしかない。
しかも多分立場からいって、倒されたオレは悪役で、ダンジョンを踏破した冒険者たちは勇者や英雄として賞賛される。
そんな、そんなふざけたことがあってたまるかああああああああああ!!!
「……なあ、ラスボスってここに来た冒険者を倒す義務があるのか?」
『ラスボスの仕事は、あくまでこのラスボスエリアを守り抜くことです。しかし倒さなければ倒されてしまうので、結果としては――』
「なら、このラスボスエリアを守れれば倒さなくてもいいんだな?」
『……そう、ですね。そういうことになります』
なるほどだったら――
「よし決めた。オレはこのラスボスエリアで、おいしいごはんを作りながら快適ライフを送ってみせる!!!」
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