人間

 わたくしの最大の不幸は人間の体を持って生まれたことであります。人間の体を持ちながら人間のフリをする、この摩訶不思議な人生は、次第に矛盾を孕んで、いつしか人間ではなくなり、不気味な生き物として生きるしかなくなるのでしょうな。

 理解など、とうに期待しておりませぬ。ああしかし、わたくしは理解したいのです。人間という生き物を。友達になりたいのです。人間という生き物と。

 どうすれば、どうしたら仲間入り、出来ますでしょうか。夢も希望もなく骨になりたくないのです。ああ、もう、わからない。わからない。どなたかわたくしを、人間にしてくださいませ。

 愛してくださいませ。

 寂しくって、たまらんのです。頭を撫でてくださいませ。猫のように、犬のように。共に寝てくださいませ。赤子のように、幼児のように。

 この脚は生まれつき腱が切れております。

 あなた様がここ迄おいでくださいませ。近づいて、頬擦りをして、わたくしの呪いごと、抱きしめてくださいませ。愛してくださいませ。

 できないのならあなたを殺して私も死のう。

 なんて。

 冗談の通じない人。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る