第54話 仮説
「うーん」
無事にプロミネンスさんと会うことができた私だけど、どうやって距離を詰めていこうか攻めあぐねていた。
陽キャと陰キャ。
私的には特に気にならない……というか、あくまで本人の性格であるだけで陽キャとか陰キャとか区別できない……と思ってる。
まあ、それをツナちゃんに言ったら「それは陽キャの思考ですぅ……っ!!」と敵を見る目で言われたケド。
「無理に距離を詰めることが正解ではない。私はクラちゃんの件で失敗した時にそう学んだからね」
だとしても【学力王決定戦】という公式のお仕事である以上、ある程度のコミュニケーションは進行上必須だし、大規模コラボが初めてなのもあって不安要素はできるだけ消しておきたい。
「何かヒントが無いかプロミネンスさんの配信でも見てみるか」
私はそうと決まれば即座に見よう! とパソコンをカタカタと弄ってプロミネンスさんの直近の配信を見ようとすると──丁度配信をしていた。
「およ。随分とタイミングが良いなぁ」
これは見るしかあるまい、と配信を開くと──
『あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!゛』
「うわっ、ビックリした!!!」
──プロミネンスさんの大絶叫とともに、画面いっぱいにはホラーな画像が映し出されていた。
コメント
・どこからそんな声出せんねんwww
・正しく絶叫してんだよな……
・もう凡百なVTuberの「きゃぁぁ!!」みたいな可愛い悲鳴じゃ満足できなくなってしまった……
・これだからプロミネンスのホラー配信はやめられねぇんだ
・まだ始まって5分ですけど???
『むりむりむりむりっ!!! ホラーむりっ!!』
コメント
・お前が始めた物語なんだよなぁ
・開始前に『ホラゲーとか余裕に決まってるでしょ』とか言ってたのはどこの誰ですかねw
・毎回即オチ2コマやねんなwww
どうやらプロミネンスさんはホラーゲームを配信しているらしい。……ふふ……あの絶叫はクセになるんだよねぇ……。
「ふはっ、久しぶりにプロミネンスさんの配信見たけど変わってなくて安心。狂気的な絶叫と調子に乗りやすいのが芸風なんだよね。どうも見てる限り素っぽいけど」
やっぱり配信では普通に……むしろ普通以上に喋ることができている。対面でのコミュニケーション能力に難を抱えていることは間違いないけれど……う〜〜ん、趣味について話す……いやー、こういうタイプは趣味を共有したくないと思ってもいそうだし……。
「多分一回でも間違った行動をしちゃったら、もう二度と心を開いてくれない」
私がもしもグイグイ距離を詰めに行って、プロミネンスさんに嫌われてしまったら、恐らく殻に閉じこもって心を開いてくれることは無い。
だからこそ失敗してはいけない。
『みぎゃぁ゛ぁ゛ぁ゛あ゛あ゛ッッッ!!!! 二回目に振り返った時に何かいるのは禁止カードでしょうがぁぁああ!!!』
コメント
・草ァ!!!
・こんなに綺麗に製作者の意図にハマるヤツおるんかwww
・一回目に振り返って何もいなかった時、あからさまに息吐いて安心してたもんなw
「ふふっ……」
そんな悩み事はさておいて、やっぱりプロミネンスさんの配信は面白いなぁ。
配信者としての正解を踏み続けている……というか、ゲームにしろ雑談にしろ綺麗に全てのフラグを回収していくから見ていて気持ちいいんだよね。
ただね……私が気になるのは一つだけ。
これはリスナーの時だと気づきにくい。VTuberとして、配信してきたからこそ違和感を覚えたこと。
それは──、
「リスナーをあんまり見てない……?」
『ヒェッッ!!! 絶対動く奴だ……動かねーのかよ!!! ──動くんかい!!! ギャァァァ!!!!』
コメント
・初見が引っ掛かる罠に全部引っ掛かるなw
・これ絶対動くやつやん……動かねーんか……動くんかい!! を全部言葉で説明するヤツ
・鮮やかなフラグ回収
「コメント読み……いや、しない方針の人もいる」
VTuberとリスナーを繋ぐものは何か。
勿論それはコメントだ。
大多数のVTuberがコミュニケーションツールとして、配信中にコメントを読んでコミュニケーションを図っている。
しかしその一方で、あまりコメントを読まないよ〜? って方針のVTuberもたまーにはいる。
例えば……そうだね、普段しているゲームが集中を要するものだったり、話すことがメインではなく魅せることをメインとするVTuberはコメント読みをしない! という方針を取る人もいる。
でもプロミネンスさんは少し違う。
一見すると……一見するとコメントを読んでいるんじゃないか、と錯覚するほどにリスナーが立てたフラグに引っ掛かっている。
だからこそリスナーも盛り上がりを見せているんだけど……。
「違うコレ素でフラグ回収してるだけだ。もしかしたら──あんまりコメントを見ていない可能性も出てきた」
配信者としての微かな違和感。
私は──それこそがプロミネンスさんと距離を詰めるヒントになるのではないかと思った。
たった一つの仮説を携えて。
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お久しぶりです……(震え)
(一週間以内にもう1話更新しますヨ!!)。
息抜きと実験を兼ねてTS×VTuberモノの新作を書いたので、お暇な方は読んでいただけると幸いです……!
『TSヤサグレVTuberは輝きたい』
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