第48話 懐かしの邂逅
「わっ、すごい。こんなお店あったんだ」
「お洒落でしょ〜」
最近の私は女子高生らしくカフェ巡りなんかもやっちゃっているため、検索せずとも良いお店に案内できるようになっていた。
クラちゃんの時と比べて私も成長してるのである。
例の女の子は、店に入るなりわっ、と小さく歓声をあげる。どうもTheお洒落チックなお店には慣れていない様子だ。
確かにキャピキャピした陽キャ系の人ばっかりだし、一人で入るのは敷居が高いかもね。
少しはしゃぐ女の子を微笑ましい目で見つつ、席に座り落ち着くと、私は話を切り出した。
「どう? コンタクトちゃんと見える?」
「うん、お陰様で。まさか街中で落とすなんてベタなことするとは思わなくて……」
「あはは、確かに。大変だったかもしれないけど、美味しいもの食べて元気出そ!」
元気づけるように笑うと、女の子もつられてはにかんだ笑みを見せた。
やっぱり女の子は笑顔が一番だからね。
堕とした先にあるのは笑顔が絶えない
……うーん、にしても何か見たことあるし聞いたことあるような気がするんだよなぁ……。
V関係じゃなくて……んー……?
私はジーッと女の子の顔を見つめる。
「な、なに……?」
すると、徐々に女の子の顔が赤く染まっていく。恥ずかしさ……いや、その視線は吸い込まれるように私の顔面から下に移っている。
……適性(?)あるね!!
女の子の抗議を無視して見つめること数分、私はようやく記憶の中にある容姿と女の子の姿が重なった。
「もしかして
「……やっぱり夢見さんか」
納得、といった表情で女の子……莉子ちゃんが首を縦に振った。
相澤莉子……私の小学生の時の同級生だ。
とはいえ、記憶にある彼女の姿とはかなり違う。
昔の莉子ちゃんは前髪の長い、内気な娘だった。人との輪に入ることが苦手で、いつも一歩引いているような。
しかし、今の莉子ちゃんはお洒落にも気を遣っていて、口調や態度こそ会話が不得意な気配を感じるが、普通の女子高生という感じだ。
まあ、3年以上経てば人も変わるよね〜。
多分莉子ちゃんも私のこと気がつけなかったと思うし。
「久しぶりだね。小学校の卒業式以来かな? だいぶ変わったね。昔も可愛かったけどもっと可愛くなったんじゃない?」
「うっ、夢見さんってそんなキャラだったっけ? 何でそんな言葉を真面目顔で言えるの……」
「本心だからだよ」
ストレートに言葉を伝えること。
それはこの現代社会においてすっごい大事なことだと思ってる。勿論、言葉を濁したり、オブラートに包まなきゃいけないシチュエーションは当然あるし、そこと履き違えてはいけない。
でも、褒め言葉。相手に誠意を伝える時は、遠回し、迂遠なやり取りはNO。
素直に、相手の目を見て伝えるのが一番良いのだ。
ちなみにだけど、私の小学生時代はちょーっと暗黒期なんだよねぇ……。
齢0歳でVTuberなってやるぜ! って意気込んだものの、努力が報われるにはそれ相応の時間がかかったし、特に小学生時代は何でもかんでもやろうと根を詰めていた。
だから傍から見たら、常に何かしらやってる仏頂面の美少女、って感じかなぁ。誰かに何かする余裕とか無かったし……。
ちゃんと行事とかのイベントには参加したし盛り上げたつもりだけども。
莉子ちゃんとは小学三年生の時? の同級生だから、多分あの時が一番根詰めてたと思う。
「私も時を経て成長したんだ。莉子ちゃんと同じようにね」
「……そもそもよくあたしだって気がつけたね?」
「記憶力は良い方だったし、声質とか雰囲気とかに見覚えがあったから」
「すっご」
ま、声に関係することやってますからね。
クラちゃんの声も一発で当てたりしたし、意外と役に立つ特技なのかもしれない。
自分の声を変える練習してるうちに他人の声にまで敏感になったんだよね。
私がリアルASMRマイクである。
「夢見さんはすごいなぁ。それに比べて……ハァ」
「何かあったの?」
目に見えてずーんと落ち込む莉子ちゃんは、かなりドンヨリとした雰囲気を醸し出していた。
堪らず何かあったのかと問うと、莉子ちゃんは身を乗り出すようにして言う。
「あたしの姉がね、それはもう引きこもりで! 四六時中部屋の中にこもってるし、なんかぶつぶつぶつぶつ聞こえてくるし。たまに発狂してるし……」
「へ、へぇ……」
それ配信やってんじゃないかな、とは言えなかった。まあ、ネッ友とボイチャ付けながらゲームしてる可能性もあるけど、ずっとぶつぶつ聞こえたり発狂するのは配信者の特徴でもある(失礼)。
普通に配信者なんて傍から見たら何やってんだろう? って感じだからね。当本人と視聴者からすれば関係のないことではあるけど、まったく知らない第三者が見たら誤解を生む。
だからと言って、配信とかやってるんじゃない? って言うのは、そのお姉さんが家族に配信稼業を知られたくない時に困る。
例えばエロ系とかヤバい系でやってるとかね。
「折角会ったのも何かの縁だし、愚痴くらいなら聞くよ」
結局濁してそんなことを慈愛の笑みで言い放つ。
すると、なぜか女神を見たかのような表情で莉子ちゃんは次々に愚痴を放ち始めるのだった。
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同じ配信者? と思ったら同級生の回でした。
閑話じゃないってことは何かあるようですね(すっとぼけ)。
皆様、お久ぶりでございます……。
書籍作業などで追われておりまして、その成果をようやく発表できそうです……!!
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素敵なイラストなども、HJ文庫さまの公式Xなどで上がっているため、ぜひぜひご確認いただけますと幸いです!!
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