第17話 親友が美少女でイケメンな件

Side 川内江里子


 私はどこにでもいる普通の女子校生だ。

 見た目も運動も何一つ秀でちゃいないけど劣ってもいない。男子だったらラノベ主人公じゃねーかと最近は思ってる。


 そんな私だけど、自慢できることがたった一つだけある。


 ──私の親友がドチャクソ美少女だということである。


 川内かわない江里子えりこなんてどこにでもありそうな名前と違って、親友の名は夢見ゆめみ蓮華れんげなどと超オサレネーム。

 黒髪の正統派美少女で、性格は結構サバサバしてる。美容にも健康にも気を遣えるし、笑顔はとてもキューティクル。

 テストは常に百点で博識。それは傲ることもなければ過度に謙遜することもない。ただの事実として気にしていない。


 そして巨乳だ。私は一度その手で掴み取りたいと思っている。むねを。あれ、語呂がいい……。


 さておき、全方位にこの美少女すぎる親友をアピールしたいなぁ、と日々考えているけども、なんで私と親友になってくれたのかが非常に分からぬ。


 私の長所なんて、少々思考がギャグ気質なだけだろ。

 なんの役にも立たねぇなおい、と自虐できる唯一の長所に蓮華が食いついた……!? んなまさか。


「私の顔になにかついてる?」


 ぼうっと蓮華の美少女フェイスを見ていると、隣を歩く蓮華が首を傾げる。その仕草だけで牛丼食えるわ。

 

「いんや、なんでもないけどさ。蓮華って本当に美少女だよねぇ。ケチつけれないくらい」

「ははっ、なにそれ。私の顔にケチつけるつもりなの?」

「やっぱり無理だったわ!」

「まあ、容姿には自信あるからね」


 こう言い切れるところも尊敬している。

 あるがままの事実を脚色も謙遜もなしに答えることができる。日本人的視点から言えば、調子乗ってんのか! とか言われそうだけど、私は蓮華のあけすけな部分が好きだ。


「いやぁ、これで彼氏いらないって言うんだからすごいわ。選び放題だろうに」

「あー、普通に興味ないんだよね」

「だろうなぁ……」

「川内は最近どうなの? 恋愛とか」

「私ぃ!? いやいや、むりむり。好きな人とかもいないし、いてもそもそも付き合えないし」

「そう? 結構モテるタイプだと思うんだけど」

「えぇ……」


 嫌味を感じさせない偽りなき言葉だった。

 本当にモテるって思ってるんだろうなぁ……いや、なんの手違いか告白されたことは中学校の時にあったけどもよ。

 恋愛とかよく分かんなくて断ったんだが。


「私は蓮華と一緒にいるのが一番楽しいし。男とかいらねぇわ! 我が親友美少女で十分だぜ」

 

 アハハと笑う親友を尻目におどける私。

 今言ったことは全て本音だけども、最近私はこんな完璧美少女と親友でいて良いのか、という疑問が常々湧き上がる。

 全てが凡庸な私に対して、蓮華は余りにも眩しすぎる。

 庶民はその光に目を焼かれ、近づくことすら許されない……なーんてメルヘンチックなこと考えたりしちゃって。

 ははは、私に似合わねぇ!


「まあ、川内に彼氏ができたら私がチェックするかな。死んでも守り切れるかどうか」

「チェックが重すぎる! そんな覚悟で恋愛するやつなんて稀有でしょ。ただでさえラブが薄いとか言われてんのに」

「私は川内のためなら死ねるかな。状況によるケド」

「うぇっ、ちょ、何言ってんの」


 冗談はやめろと出かかった言葉は、目を据わらせる蓮華を見て沈んでいった。場の勢いで言ったのもあるけど、丸きり嘘じゃないのは理解できた。

 ……親友の愛が重くない? 私の自惚れ? 気の所為?


 すると、ふっ、と表情を緩めた蓮華が私の髪をすくい上げながら言った。


「まーたこのお馬鹿は釣り合いがどうとか考えてそうだったから。私の唯一無二の親友は川内だけ」


 唯一無二の親友と言われ、体がかぁと熱くなる。

 嬉しさと気恥ずかしさ、混ざる疑問と分からない想い。

 誤魔化すように小さな声で私は否定する。

 

「で、でも魅力とか無いじゃん? 私」

「あっはは、面白いこと言うね。川内は可愛いし優しいし気遣えるし癒やされる。何気ないいつもの行動が私にとっては嬉しいよ」

「うっ、ぐぐぐ……ぬぬぬぬぬぬ」

「続けて言うと──」

「分かった! 分かったから! さすがに……恥ずかしい」


 手で顔を覆うと、手のひらから伝わる体温がやけに沁みる。熱い。いったいこの親友はどれだけ美少女でイケメンなんだ。


「え、カワイイ。照れてる? 川内照れてる?」

「もう、やめてぇ……」


 前言撤回!

 好きだけどこうやって悪戯すんのやめろ!!


 自分の魅力分かった上で最適解の行動取るの策士すぎるでしょ。どこに脳みそ使ってんの、まじで。


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