四雨 「模索」

「ルー...」


"ルーシー・ハドー・カミムラ"


前回の御代の後継争いの折に御代の候補者の一人だった女で、


今 部屋のベッドに横たわっている雅とは同じAJUと呼ばれる


企業連合群を統括する立場として親しくしていた


"カッ カッ カッ カッ.....˛ཬ˛ཬ˛ཬ˛ཬ˛ཬ˛ཬ "


「.....もう、医者には、何人も見てもらったんだよネ?」


部屋の中にいる善波 征四郎、ジャンそして近藤を横目に見ながら、


ルーシーは寝そべっている雅の側へと歩み寄る___________


「....一応、思いつく限りの医者だとか精神科だののその辺りの人間には


 話を通してみたんだがな。」


「… ……何か、医者とかとは別に占い師だとか、スピリチュアルな人にも


 雅の様子を見てもらったって聞いてるケド・・・」


「・・・まあ、一応な。」


自分でも現実的な話では無いと思っているのか、


善波は軽く笑みをこぼしながらルーシーの前にある


椅子に片手を掛けると、そのまま椅子へ憮然(ぶぜん)と座り込む


「 ᱹ ᱹ ᱹ ᱹ ᱹ 」


"スッ"


「まったく┈┈┈… !、何でこんな事になっちまったんだろうネ...」


ベッドの側まで来ると、雅の前髪に触れルーシーはその髪を


そっと上に撫で上げる____________


「  ᱹ ᱹ ᱹ ᱹ ᱹ 」


「  ᱹ ᱹ ᱹ ᱹ ᱹ 」


「  ᱹ ᱹ ᱹ ᱹ ᱹ 」


部屋の中が少しの間、沈黙する


「....少し、空気が悪いな。 オイ、近藤。」


「┈┈┈…畏(かしこ)まりました」


"タッ タッ タッ タッ....


窓の方に向かって善波がアゴを傾けると、近藤はすぐさま踵(かかと)を返し


窓の側へと向かって歩いて行く


"ガラ"


「私も、医者の先生から話を聞いたケド___________ 」


雅の髪を撫でながら、部屋の中に向かってルーシーが声を上げる


「雅が、今、こうやって寝たままで起きないのは


 間違いなくこの間の、"ミダイ"のコトが原因┈┈┈… ! そうでしょ?」


「  ᱹ ᱹ ᱹ ᱹ ᱹ 」


「  ᱹ ᱹ ᱹ ᱹ ᱹ 」


周りを見渡すと、何故か征四郎が軽く俯き、静かに目を閉じている.. .. ..


「....精神科の医者の話だと、どうやら雅は何か前回のコトに何か、


 強いストレスを感じて.... よく分からないけど、


 自分の心の中に入り込んでしまった˛˛˛˛˛˛」


「  ᱹ ᱹ ᱹ ᱹ ᱹ 」


「  ᱹ ᱹ ᱹ ᱹ ᱹ 」


「  ᱹ ᱹ ᱹ ᱹ ᱹ 」


すでにこの部屋にいる全員がその事を分かっているのか、部屋の中にいる


全員はただ無言でルーシーの話を聞いている


「....ソレで、私も、色々少しその、意識を閉じてる、精神的な


 病気に詳しい人とかにたくさん話を聞いてきたんだけど...」


「・・・だから何だ?」


周りくどい女の話が苦手なのか、善波が言葉を促す


「たくさんの人間から話を聞いて私も、精神的な___________


 言ったら、病気なんだケド、その病気についてよく知ってる人がいないか


 聞いて回ってたんだ。」


「… …そうか。」


"ザッ"


「あ、善波。」


「・・・何だ?」


まとまりの無い話を聞くのを嫌っているのか、背を向けようとした善波を


ルーシーが後ろから呼び止める


「....たぶん、雅の状態を治すには医者とかの助けも必要だけど


 雅の心の内側__________ 精神的な不安を無くすコトが


 大事なんじゃないかって∙∙∙∙∙  !」


「・・・だから、それをどうにかするために


 俺たちが今こうして集まってるんだろう」


「・・・ちょっと待って」


"ガサ"


「┈┈┈┈…、?」


自分の履いていた細めのジーンズのポケットから、


一枚の紙をルーシーが取り出す


「....色々な人間に話しを聞いて、


 雅の状態が治らないって言ってるケド┈┈┈┈…」


「何だ┈┈┈┈…?」


"ガサ"


差し出された紙を、善波が手に取る


「・・・何だ、これは?」


手渡された紙を見ると、そこには何かよく分からない 怪しげな宗教的な


衣服を思わせる服を着た老人と、その老人の前に跪(ひざまず)いている


ボロボロの服を着た病人の様な気味の悪い男の姿が見える


「...それは、こういう、精神の病を治すのにすごい評判のある....


 医者みたいな人だって__________」


「… … これ、お前が調べたのか?」


"カサ"


手渡された紙を顔の前でヒラつかせながら、


善波が疑わしい顔つきを浮かべる


「....私も、AJUのグループの人間とか色々な人に話を聞いてどうも、


 この写真に写ってるお爺さんとかは、かなり雅みたいな


 症状の人間を治すのに評判がある人みたいなの」


「・・・そんな奴がいるのか?」


"ガサ"


顔を顰(しか)めながら善波がルーシーに目をやると、ルーシーは自分の顔の前に


突き出された紙を再び自分の手に取る


「....この、たぶん、写真に写ってるお爺さんは


 "Speaker"って呼ばれてて、聞いた話だと誰も治せない様な病気でも


 この人にかかれば治せるって話らしいんだケド...」


「Speaker?」


紙の中に写っている怪しげな格好をした老人を、


善波が訝(いぶか)し気な表情で見る


「どうも、私が集めた情報だとこの、"Speaker"は、こう言う


 人の心の内側の病気みたいなのを治すのに


 特別な方法を使ってるらしいんだケド...」


「—————....」


「  ᱹ ᱹ ᱹ ᱹ ᱹ 」


"ガサッ"


「どう思う┈┈┈…? 征四郎くん?」


「いやᱹ ᱹ ᱹ ᱹ  」


問いかけられるが、まるで征四郎にも判断が付かない


「  ___________」


"スッ"


寝息を立てている雅の肩にルーシーがそっと手を置く


「でも、とにかく、今私たちが出来る事は全部やったし、普通の方法では


 雅を治す方法が見つかるかは分からない… … … そうでしょ?」


「  ᱹ ᱹ ᱹ ᱹ ᱹ 」


「だったら、このSpeakerって呼ばれてる写真に写っているお爺さんに


 雅の様子が治るかどうか、聞いてみてもいいんじゃない?」


「  ... ... .. 」

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