本当に困った時に鶴は恩返しをしてくれない！

ドングリ……コロコロ Hモード

　ドングリちゃんは木の妖精。

　彼女は毎日森の中で一人で遊んでいました。

「チョウチョさんこんにちは！」

「アリさん。今日は何を運んでいるの？」

　森の中は不思議がいっぱい。

　ドングリちゃんは毎日が楽しくてしょうがありません。

「さて、今日は何して遊ぼうかしら」

　ドングリちゃんは森の中をどんどん進んでいきます。

「おやおや、ドングリちゃんじゃないか」

　顔見知りのイモムシさんがドングリちゃんに声をかけてきました。

「ええ、イモムシさんこんにちは！」

　ドングリちゃんは今日も元気いっぱいです。

「あまりそっちに行ってはいけないよ」

　イモムシさんは慌てたように言います。

「そっちには底なしの沼があるからね」

「分かったわ。イモムシさんありがとう！」

　ドングリちゃんはお礼を言うとまた歩き始めました。

　森の中はドングリちゃんの遊び場です。

　ドングリちゃんは楽しくなってその日も夕方近くまで遊んでしまいました。

「暗くなってきたしそろそろ帰ろうかしら」

　ドングリちゃんは暗くなり始めた森の中を歩きだしました。

　下り坂に差し掛かりました。

　その時です。

「――きゃっ！？」

　ドングリちゃんは木の根につまづいてしまいました。暗いせいで足元がよく見えていなかったのです。

　コロコロコロコロ

　ドングリちゃんはどんどん転がっていきます。

　どんどん斜面を転がって――

　どぷん！

　ドングリちゃんは池に落ちてしまいました。

「あーあ、落ちちゃった」

　ドングリちゃんはウフフフと笑いました。

　濡れるくらいはへっちゃらです。

　雨に濡れたって池に落ちたってドングリちゃんはいつだって元気いっぱいなのです。

「あ、あれ……抜けない！」

　ドングリちゃんは身体を動かそうとして慌てました。身体がはまって動けないのです。

「ここは……底なし沼だわ！」

　ドングリちゃんはイモムシさんの言葉を思い出しました。

「誰か！　助けて――！」

　ドングリちゃんは泣きそうになりながら叫びました。

「おやおや、これはドングリちゃんじゃないですか」

　沼の中から姿を現したのはドジョウさんでした。

　ドジョウさんはニヤニヤとしながらドングリちゃんを見ています。

「ドジョウさん、沼にはまって動けなくなっちゃったの！　助けてください！」

「そうかいそうかい。そりゃ大変だねぇ」

　ドジョウさんは落ち着いた声でそう言いました。

　その間にもドングリちゃんはどんどん沈んでいきます。

「せっかくここまで来たんだ。オレと遊んでくれないか」

「嫌よ。このままじゃ沈んじゃうわ！」

　ドングリちゃんが叫びますがドジョウさんは知らん顔。

　ドジョウさんのぬめぬめとした身体がドングリちゃんに巻きつきます。

「イヤ、やめて服の中に入ってこないで！」

　嫌がるドングリちゃんの服の中にどじょうさんは容赦なく侵入していきます。

「ああ♡　ダメ♡」　

「お嬢ちゃん、一緒に遊びましょう！」

　ドジョウさんの高らかな笑い声が沼に響き渡りました。