その1-2 次の時には
「うん! やっぱり思っていた通り、すごいよ龍虎くん!」
山下さんとの会話はすっかり盛り上がり、すでにカフェから場所を変えて、昼食を食べるための個室の店に来ていた。
山下さんは、すっかりとタメ口だ。
初めの方のやり取りで、丁寧で
俺のプレゼン(?)というか、それなりにまとめた案を提示。
それが大成功。
今は、もうどっかの会社に持ち込んじゃおうという話にまでなっている。
オタクが共通の趣味を見つけたのと同じように、俺たちはどんどんと早口になっていった。
俺も山下さんも話したいことがあり過ぎて、口が回る回る。
「共感してくれて嬉しいです!」
俺が提案したのは、未来で流行ったソシャゲ。
ウマではなく羊がレースをするゲームで、完全な出落ちかと思われたそのタイトルは意外にもしっかりと作り込まれたゲームだったので流行したのだ。
6ちゃんねるではバカにされる一方だったこの概要も、ゲームをしっかりと学んできた山下さんには大いに刺さった。
「でも、持ち込みなんて……無茶すぎるかな」
「そうですねえ……」
ゲーム会社からしたって、素人二人が変な話を持ってきたからと言って、それを真に受けるとは思えない。
だが一つ。
可能性があるとすれば……
「僕に考えがあります」
「本当に?」
それは、これをリリースした会社に一か八か持ち込むこと。
会社の名前は「Dygames」。
俺の生きていた未来では、今までのテンプレを刷新するような、革新的なソシャゲを数々世に送り出した。
大好きだったVTuberも、こぞってプレイしていたもんだ。
そして俺には、ノーズによる話術がある。
ノーズによる話術で、なんとか目を通してもらうところまでいけば可能性はある。
「来週、もう一度会えますか?」
「そうだね。ちょっと待って……」
山下さんはメモ帳を取り出して、日程を確認している。
もしかしたら土日も休みじゃない場合があるのか……。
ますます、過酷な労働環境だな。
早く手を差し伸べてあげなければ。
「ごめん、今のところはちょっと分からなくて……」
「そうでうか。分かりました、ではまた
「了解」
一応話は進むが、やはりばつが悪そうにする山下さん。
「ごめんね。僕から誘ったんだけど、仕事が空くか分からなくて……」
「いえ、立派な事ですよ。それに、僕はもう山下さんと手を組みたいって思っているんです。謝らないでください」
「龍虎くん……」
これは本当の気持ち。
話を聞く限り、山下さんとは前世の俺と本当に趣味が似通っている。
最初の方の話し方、自信がなさそうなところなんて、前世の自分を重ねてしまうほどだった。
前世の俺が腐り切らず、最後の一歩で踏み留まったらこうなっていたのかな、なんてて思ってしまう程に。
そんな山下さんと話す内に、ゲームのことはもちろん、俺はこの人を救いたいって思ってしまった。
これで、前世の自分を救っている気になっているのかもしれない。
「それに、期間が空くのは悪い事ばかりではないですよ」
「え? それはどういう意味だい?」
「覚悟を決めておいてください。次に僕たちが会う時は」
「会う時は?」
「一緒に会社に持ち込みに行きますよ」
「えええ!」
山下さんは、今日一番の驚きを見せた。
「ほ、ほほ、本当かい!? てっきり僕は」
「冗談だと思ってましたか?」
「いや、そんなつもりはないんだけど……」
「ここで一歩踏み出さなきゃ、何も始まらないですよ」
「そうか……」
これは、前世の自分に言いたい言葉。
中々一歩を踏み出せなかった自分に、掛けてあげたい言葉だ。
勝手ながら、山下さんに自分を重ねて言わせてもらっている。
踏み出さなきゃ何も始まらないのは、よーく分かったからな。
「……うん。分かったよ! 次は会社に凸してみよう!」
「それだと迷惑行為的な意味になるのでは……」
「はっ! そうだね! うーんと、話をしに行こう!」
「はい。では、また連絡をください!」
「了解!」
本日二度目の了解で、今日のところは終わり。
俺は次までに、会社持ち込みの段取りをつけておこう。
≪自分で歩き出すのは良い事です≫
ふっ、だろ?
けどノーズの力も、もちろん必要だぞ?
≪お役に立ちます、
ああ、よろしく。
「今日はありがとう。とても良い話が出来たよ」
「こちらこそです。ありがとうございました」
そうして山下さんと別れる。
昼ご飯に食べたとんかつ、美味しかった~。
一応俺は高校生なので、今回は
ラッキー。
「……よし」
その内また、山下さんと食べに来よう。
次は、焼肉かしゃぶしゃぶで!
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