第104話 エンペラーイーグル
「お前らは邪魔だ! どいてやがれ!」
飛び上がり、手前にいて、向かって来るオークの肩や頭を足場にして、オークウォーリア達に迫る。
二メートルは余裕であるオークの上に乗ってやっと、オークウォーリアと目線が合う。
ギョロっとこぼれてしまいそうなほど目を剥いて、睨み付けてくるから睨み返し、まずは一匹目の振るった丸太を、オークの下にいた魔狼に降りてやり過ごし、次の一歩でまたオークの肩に戻る。
そして頭を蹴るように前に向かって飛び、気合いを入れまくったクロセルを真横に振り抜いた。
固まっていたオークウォーリア七匹の内、三匹の首を一度に落とした俺はさらに踏み込む。
右手にいた二匹を続けて倒したんだが、残りの二匹を潰す前に土の魔法が飛んできやがった。
『ゴブリンメイジです! 連発はできませんが、気を付けて下さい!』
「ぐっ!」
クロセルの注意があったから、直撃は免れたが左肩をかすっていった
くそっ! 俺はまだ自分で投げねえと飛ばないってのに生意気だぜ!
お返しに俺も
当たるのを見届ける前にオーガリーダーの首を前足でシバき倒したクローセが見え、俺も残りのオークウォーリア二匹の首を飛ばしてやった。
それと同時にパンッパパンッと少し遠くから聞こえ、そちらを見ると、ゴブリンメイジを護るように立ちふさがったゴブリン二匹をぶち抜き、ゴブリンメイジの頭を俺の
「ざまあみやがれ! くっ、痛っ――くねえ!
『次は――――』
――――三十分ほどか、崖下に集まった魔物達のアンデッドを中心に倒しまくっていた時、空から近付く気配に気が付いて空を見上げた。
「こりゃ、ワイバーンか? そりゃ!」
まだまだ減ったように見えねえ魔物達を蹴散らしながら、気配の主が近付いてくるのを待つ。
『あの属性を表す羽が無いって、真っ黒な羽という事はエンペラーイーグル! 全属性の魔法を使い、空最速の魔物、あのドラゴンでさえ飛ぶことに関して勝てないとされる鳥の魔物です! ここの魔物とは桁違い、ワイバーンでも可愛いと思えるほどの強さです!』
「マジかよ! ってか下りてくっぞ! クローセ危ない!」
降下し始めたと思った瞬間、エンペラーイーグルは既にクローセの背後に――――は?
エンペラーイーグルはクローセの真上を通りすぎ、くるりと器用に向きを変え、向きを変える際に羽ばたいた風で魔物達を吹き飛ばし、その空いた場所に着陸した。
「どうなってんだ! 敵じゃねえのかよっ! はっ!」
クローセのところに駆けつける事も今はできないほど取り囲まれている。
心配だが、回転切りをしながら二匹を見ていると、エンペラーイーグルは火、水、土、たぶん見えねえが風の魔法をまわりに浮かべては、次々と放っている。
放たれた先はクローセではなく、まわりに群がる魔物達に対してだ。
「なんだ? しっ! 友達なんか? はっ!」
『そのようです。なにか言葉を交わしているようですが、エンペラーキャットとエンペラーイーグルが共闘するなんて……』
「なんにせよっ! 手伝ってくれんならぁ! なんでもいいぜっ!」
なんか喋っている風だった二匹は、なんかニヤリと笑ったように見えた次の瞬間、エンペラーイーグルは魔法を放ちながら飛び上がり、ドリアードが捕まっていた檻の真上で器用に羽ばたき、空中で止まって魔法を放ち続ける。
「ぬお! よく見ればフルフルではないか! お主助けてくれるのか! 感謝するぞ!」
なんだ? ドリアードの知り合いみたいだな、まあ、戦力が増えたんはありがてえ。
これでちっとは減らす速度があがり、もっと減らせれば、ドリアードが言ってたように散らしてしまえそうだしな。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
――エンペラーイーグルのフルフルが魔物討伐に加わってからまた三十分ほど過ぎた頃、アンラも地下から出てきたみたいで、ドリアードと話をしているみたいだ。
(ねえねえケント、黒ローブ達は隣国のセシウムってところから来たらしいよ~、ここの狙いはコバルト公爵って言ってたからギルマスさんだね~)
は? だが今は王都にいるし、帰ってくるのを待っていたってことかよ、ってかここのってどういう事だ?
(みたいだね~、ああ、何ヵ所かこんなところがあるみたいだよ、ドリアードを使ったスタンピードの計画はここだけみたいだけど)
そりゃ……知らせねえとまずいだろ! アンラ、ここのは全部やっつけて、急いで知らせねえといけねえ、お前も討伐に加わってくれ!
(ん? 後半分くらいだしね~、任せて~)
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
結局、深夜まで討伐は続き、動物はほとんど逃がすことができたし、沢山の魔物達が集まっていた崖下には俺達だけが残って、今回の魔物の騒ぎは走り出す前に終わらせる事ができたようだ。
この峠近くの魔物が激減したはずだ、冒険者の依頼は減っちまうが、そこは我慢してもらうしかねえな。
「お疲れさん、えっとフルフルだったか、加勢ありがとうな、クローセもお疲れ、アンラも助かったぜ」
「お主達、まっことたまげた者達じゃ、あの数を倒してしまうとはな」
「いやいや、途中から逃げねえようにしてくれたんだろ? 森に消えそうな奴らが引き返してきたしよ」
数が少なくなり、やっとヤバいと気付いたのか、パラパラと森に向かって逃げていく奴らがいた。
だが途中で足を止め、振り向いた顔はどことなく嫌そうな顔に見えたんは気のせいだよな。
そんなこんなで今夜は遅くなっちまったし、この檻の中で寝ることにしたんだが、クローセが元の小さい体になって俺ん所に戻ってきて、なぜかフルフルも小鳥の大きさになって飛んでくると、ソラーレの上にちょこんと乗ってしまった。
ソラーレは特に気にしてねえようだから良いけどよ……とりあえず寝るか。
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