第101話 ドリアードの解放
『ケント、あの黒いローブを着た者達五人があの緑色の髪の毛をした者を使い、魔物を集めているようですね』
(あの檻自体が魔道具っぽいし、祭壇の上ってドリアードじゃない? 森の精霊でしょ? それなら魔物も、ほら、普通の動物まで集まってくるわよ)
アンラの言う通りなら、祭壇の上にいる緑の髪の毛した女の子がドリアードらしい。
そのドリアードが魔物や動物を集めるんなら、あの黒ローブ達は何者で、何をしようとしてんだ?
囲われた檻の四角に
祭壇の横に置かれた木箱の蓋を開けると、木箱の中に入っていく。
一人が入ればいっぱいになりそうな木箱なんだが、次々と入っていく黒ローブ達。
は? あんな箱に何人も入れんのか?
『地下への入口のようですね、何か目的があって魔物達を集めているのは確実ですが、このままだとあの者達も檻から出る事もできないでしょうし、もしかすると、どこかに続いた地下道でもあるのでしょうか』
そうだよな、地下室って言っても、食料や水なんかも必要だろうし、あの祭壇の下は最低でもそれだけの物があるはずだ。
(ん~、私が見てこようか?)
そうだな、すまねえが頼めるか? あっ、とりあえずあのドリアードは怪我してるっぽいよな?
手首に足首が、祭壇に鎖のような物で縛られているのが分かる。
その手首、足首だけじゃなく、叩かれたのか、傷のようなものが目にグッと気合いを入れると見えてしまったからだ。
(そだね、ケントが回復魔法かけてやればすぐ治りそうだけど、早い方が良いかもね~、相当弱ってるみたいだし)
おう、アンラ、あそこまで俺も連れて飛んでくれ、魔物は後にしてドリアードを助けてから黒ローブは一緒に追いかけよう。
言うが早いか俺とアンラは立ち上がり、アンラの肩に手をまわして掴まると、ソラーレにもしっかり掴まるように言っておく。
すると少し潰れた感じで掴まったソラーレを見てすぐに、アンラは俺の腰に手を回し、くいっと持ち上げた次の瞬間、崖から檻に向かって飛び下りた。
トサッと草を踏む音を立て着地したアンラは俺を下ろし、ドリアードに向かって急いで祭壇の脇に走りよる。
クロセル、この拘束具を切れっか? さっさと切って回復させっぞ。
背中からクロセルを抜き、気合いを入れて四回振り下ろす。
キンキンキンキンと軽い金属音をたてて鎖を断ち切り、俺はドリアードに向かって小声だが気合い全開で
「
ドリアードに伸ばした手から出た、光る玉はデカく一メートルはありそうで、手から出てすぐに体へ吸い込まれたため、手のひらから玉が抜けきること無く繋がった状態だ。
みるみる内に縛られていたところの傷や、殴られただろう白い肌が青くなっていたアザも消えていく。
「んんっ」
「よし、気が付いたようだ、もうちょっとで治っからな」
大の字で、ぐでって力無く寝ていたドリアードはピクリと動き、小さなうめき声を漏らした。
『ケント、ドリアードの首に巻かれた魔道具に触ってください、特別製だと思うのですが、奴隷の魔道具です、なんとか収納してみます』
「ん~、私が爪で切っちゃおうか? その首輪、私も収納しようと思ってたんだけど、なんでかできないのよ」
「『
俺と同時に驚いたクロセル。
「こんな気持ち悪いの初めて見たけど、精霊に言うこと聞かせようと作られた物かもねっと!」
アンラは俺の横にピッタリくっつき、ドリアードの首に嵌まった首輪と肌の間に人指し指の爪をスルリと差し込み、そこについていた魔石には親指から伸ばした爪を当て、砕いたかと思った瞬間――簡単にスパっと切ってしまった。
『くくくっ、アンラよ、奴隷の魔道具を切って壊すなど非常識な事をしおって』
「にひひ♪ やっぱりこの魔石を一瞬で壊せば余裕だね~、革の所だけ切っちゃうと、首がスパって切れちゃうけど」
なんか怖い事を言ってるが、なんとかなったようだ。
切られてポトリと首から離れた魔道具を、摘まんで首の下から引き抜いたアンラはポイっと放り投げて捨ててしまうと、ほぼ怪我の無くなったドリアードが目を開けた。
「な、なんじゃ? 体が動くぞ?」
大の字のまま、手をニギニギと動かし、その見開いた緑色の目で、手から出した光の玉を押し付けている俺と、横でにひひと笑い、腰に手を当てドヤ顔のアンラを交互に見てきた。
「そなたら奴らの仲間ではなさそうだな、助けてくれたのか?」
「おう、もうちっとで怪我も治っからよ、大人しくしていてくれよ、ほりゃっ!」
さらに魔力を流し込んでいくと、見たところ怪我はすべて治してしまえたようだ。
「うっし、治ったぞ、なあ、聞きたいんだが喋れそうか?」
「うむ、調子は良さそうじゃ、どっこらしょ。ふう、お主、喋るのは良いがあの黒づくめの奴らは倒したのか?」
祭壇に手をついて体を起こして立ち上がり、ぴょんと地面に飛び下りたドリアードは、俺の腰くらいまでしかない身長だから、見上げるようにして俺達に向かってそう言ってきた。
「おう、奴らは倒してねえがそこの木箱から地下に下りていったぞ、ってかよ、さっきまでうるさかった魔物達が黙っちまったな?」
「うむ、話をするのにやかましいからの、森に住むこの者達ならわらわが威圧すれば多少は言うことを聞くのじゃ」
ドリアードはさっきアンラがしていたように腰に手を当て、ドヤ顔をしたんだが……まずは服だな。
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