第74話 魔法の修行開始
ドン、ドドドンと、クローセがゴブリンの列を弾き飛ばし、踏み潰しながらダンジョンの出口に向かう。
そしてアンラも運良くクローセの突進から逃れたゴブリンに、色々とボール系の魔法を当てて倒している。
火球が当たれば爆発したように燃え上がり、水球、風球、石球はゴブリンの体を吹き飛ばして穴が空きそうだ。
格好いいじゃねえか、やっぱり最強目指すなら剣も槍も強くなって、魔法も当然使える方が絶対強いよな。
次々と放つ魔法を目で追いながら、アンラに魔法の師匠になってもらう事に決めた。
「なあアンラ、俺にもその格好いい魔法を教えてくれよ」
「ん? 良いけど私のは普通の人間達が使う魔法と違うから、呪文無いよ? ケントに使えるかな?」
簡単に教えてもらえる許可が出た。
揺れるクローセの背中の上からでも外すこともなく、いくつもの魔法を回りに浮かべて、飛ばせばゴブリンに当たり、一発で倒してしまってる。
確かに呪文は、ファイアーボールやウォーターボールと名前すら唱えてすらいない。
「でもよ、
「ん? あれは何か気分? 無くてもつかえるよ。でも何かその方が効きそうじゃない?」
た、確かに言う通りだが、なんか違う気がするぞそれ……口に出して唱えるも、唱えないもどっちでも良いように聞こえる。
「ん~、そんなもんか? 呪文唱えないとなると、生活魔法みたいなもんか……よし! やってみてからだな」
とりあえず、狙いはつけず、適当に腕を伸ばして魔力を手のひらに集めてみる。
魔力の動かし方はできるはずだ、でも呪文を唱えて放つ物は、練習はしたんだが、出たためしはない。
覚醒している今ならアンラを見れば、どんな魔力の動きをしているのかわかるはずだ。
次々と放たれる魔法を見る、……分からん。
魔法が出てくるところを見る……ん?
「ほとんど動きはねえが、ぐるぐる回ってる?」
アンラのまわりはもちろん、中でも回ってるのは見えないが感じる事ができた。
「ぐるぐるかぁ、そうね、その例えでいいから初めは手のひらにそれを集めるの、それから火にするか~、水にするか~とか決めて、体の中にある魔力を外に出せば――うそ!」
アンラの説明どおりに、魔力を操作して体の中をぐるぐる回し、左手の手のひらに集め、やっぱ魔法は火だろと思い、メラメラと燃えてる感じを思い浮かべて体から出してみた。
「うおっ! 出たぞ! うわっ崩れる!」
驚いた拍子に一握りにできそうな小さい火球が揺らめいて、消えかけたが、魔力を継ぎ足して、形をもとに戻した。
「ふう、出した後でも、気を抜いたら失敗しちまうんだな」
「なぜ一回目でできるのよ! 普通は悪魔でも自分の属性以外は教えてもらって何年もかかるのよ! ケントに属性なんか一つもないのにできる方がおかしいわよ!」
ぐりんと首を回して俺を見てくるアンラ。
な、なんか、魔法は飛ばしてゴブリンをやっつけてるが、そっちに集中もしてないってのがすげえな。
「駄目なんか? で、飛ばすんはどう……投げてみっか、ほりゃ!」
石投げは得意だからな、利き手じゃねえが、いっぱい練習して当てるだけなら百発百中にまでなってる。
アンラの放つ火球よりだいぶ小さいし、革手袋してっけど握ったのに熱くもないとは驚いたが、俺の投げた火球は狙い通りにゴブリンに当たった。
まあ、飛んできた火球を防御のため胸の前に腕を出し、止められ――。
「マジかよ! ファイアーボール強すぎだろ!」
俺の投げた火球は、防御した腕をなんなく突き破り、狙った胸を貫き背中に抜けて、地面に落ちドゴン平らだった地面で爆発して穴を空けた。
「だからケント! そんなのおかしいから! 火の魔法を掴んで投げるって馬鹿なの? それに小さいくせになんなのよあの威力は!」
器用にまた俺の方を向き直し、胸ぐらを掴んでまくし立ててきた。
「え? でもよ、飛んで行きそうにないなら投げるしかねえだろ? 威力は俺も驚いたがそこまで言うほどの事じゃねえだろ?」
ジトって目で見てくるアンラ。
俺が悪い事をしたみてえじゃねえか。
「あのね、ファイアーボールの強みは多くの魔物にとって弱点だからなんだけど、普通は当たって爆発するの、それなのにケントの火球は他のボールと同じで突き抜けたわ」
『それに、小さかったですが、質は二階層で副魔道師長の放ったファイアーランスと同じでしたね』
その時、急激に体が後ろに倒れるよう斜めになった。
アンラがそのせいで俺の胸に寄りかかって来て、なんだと思い前を見ると、外へ向かう階段に突入して上り始めたようだ。
そこは大人五人が余裕をもって、並びながら行き来できそうに広い。
だがそこにはゴブリンが詰まっていた。
外へ出ても壁があるから出られないから、動きが止まったんだろう。
駆け上がるクローセは後少しで外に出そうってところなのに、走りを緩めてしまった。
「魔法の話はまた後ね、さっさと残りを倒しちゃいましょう」
階段を上るゴブリン達は、ここへたどり着くまでに全てやっつけてきたから後は前にいるだけだ。
アンラもだが、俺もクロセルをしまい、次々と火球を作り、前にいるゴブリンに投げつけ倒しまくる。
外の光も見えてきて、もうすぐだと思っていたが、外からドン、ドゴンと魔法の爆発する音が聞こえてきた。
「おっ、外も魔法で応戦してるみたいだな、アンラ、クローセ、挟み撃ちといくか!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます