第50話 三人の想いの行方
バンと半開きだった扉が、乱暴に開かれ、ドタドタと入ってきたのは――。
「ケント入るよ!」
「アシア勝手に入っちゃ駄目だよ、良いって言われてから入らないと」
「はわわわ! 引っ張らないで、こ、こけ、こけちゃいます!」
声でわかるんけどよ、一言かけてから入ってこいよな……。
机の下から革製品の加工補修道具を引き出しながら、適当に開けっぱなしだった扉を見ると……。
アシアが先頭で、その左腕を引き止めるようにエリスが、右手にはプリムの手を握り引きずってきたアシアがなんか怒ってる感じだ。
なんでか分からんが、ちょうど良いか。
道具箱を机の上に置いてみんなの方を見る。
「どうした? 話は終わったんか? よいしょっと。そうだ、アシアとエリスには土産があんだよ、んと……」
俺はクロセルに頼んで腕輪を出してもらう。
「これだ、んとまずは、アシア左手出せ」
一番前にいるアシアの左手を……エリスが持ってるから嵌めにくいがクイクイっと指先から通してしまう。
「え? こ、これ……」
「おう、似合うじゃねえか、次はエリスだ、手を出しな」
「うん、えっと、左手だね」
掴んでいたアシアの腕を解放して、スッと左手を俺の前に出すエリス。
アシアに嵌めたのを見てたからか、嵌めやすいようにしてくれたんで、スルッと嵌める事ができた。
「うっし、これでみんなお揃いだ、見ろ、俺もプリムもしてんだろ」
俺は右手で左手の袖をまくり上げ、前につき出すと、それに合わせてアシア、エリス、プリムも同じように手を前に出した。
(あっ、私も私も!)
後ろで見てたアンラは、俺とプリムの間から手を伸ばし、五人の手が俺たちの中心に集まった。
まあ、アンラの手は俺とプリムにしか見えねえんだがよ。
「仲間の印だ、いつか一回くらい、みんなで冒険できれば良いよな」
俺はみんなの顔を一人ずつ見ながら。
「アシアは韋駄天だろ? 素早さをいかして撹乱、エリスは後方から魔法で援護だ」
「仕方ないわね、後、火魔法もちょっと使えるんだからね」
アシアは照れてるのか顔を赤くして俺を見てくる。
「私も今はヨワヨワな魔法だけど、練習しておくね」
エリス、俺の方に手のひら向けてるけどよ、撃つのは敵にしてくれよな。
「プリムも魔法だろ、それから後はみんなの装備を頼む」
アンラの向こうのプリムには、装備関係は絶対頼みたい。
ちと鼻息が荒く、ふんすって気合い入ってるけど、まあ、頑張ってもらおう。
「はい! 最高の物を造りますよ!」
アンラは俺と一緒に暴れまくって敵をやっつけまくるんだ。
(ほいほ~い、任せなさい♪)
にひひと笑い俺を見てくるアンラ。
そういやアシアはなんで怒ってたんだ?
今は頬を赤くして、ニコニコしてるんだが……なぜか怒ってた感じは、土産を渡しておさまった。
「そうだ! ケント、プリムちゃんは冒険に連れていくの? 聞けば物造りでしょ?」
「おう、そうだぞ、この胸当てを造ったのもプリムだぜ、すげえだろ?」
アシアがプリムと俺を交互に見ながら聞いてきたから、ポンと胸を叩き、よく見えるように胸を張ってやる。
「あのねケント、プリムちゃんとお話しをしていてさ……プリムちゃんはこの村に残らないかって……」
(だって、ケントと二人っきりで……やきもち、嫉妬なのかな……)
少しうつむき、上目遣いで俺を見ながら話すアシア。
「プリムちゃんって私達と同い年でしょ? それに少し魔法は使えるから冒険者をするのも良いかもだけど、女の子と二人でってね?」
(ん~、私は仲間が増えるの歓迎するけどアシアちゃんは私よりずっと前からだもんね……)
アシアが言いにくそうに、チラチラと俺とプリムを見ているところに『はぁ』とため息を一つ。
仕方ないなあって顔で首を横に振り、助け船を出すエリス。
いや、二人じゃねえんだけどな?
「あの……ですね、この村で色々と造れば役立つのかなって」
(お二人の気持ちはよく分かりました、そうですよね、抜け駆けは駄目ですし……あれ? アンラさんは良いのかな?)
そして決意した顔で、想いを声に出すプリム、その後なんでかコテっと首を傾げた。
(でも、ケントさんとアンラさんは物凄く強いですから一緒の方が良いですよね)
傾げた首をもとに戻して手を胸の前で組み、見つめてくる。
ん~、女の子だしな、あんまり連れ回すのは駄目か、それより村で働いてくれるんなら俺も安心できるか、ってよりそんな事を考えてたんかよ。
三人を見比べながらどうするかは本人の自由だ、やりたい事をやるのが一番だしな。
(ありゃりゃ? じゃあケントは私と二人で冒険者? じゃあ私も登録しちゃおうかな?)
それもそうだな、ってかよ、その角はフードか帽子で隠せば良いか。
おっと、返事をしなきゃな。
「プリムが村で色々と造ってくれんのは良いことだよな、でもどこで住むんだ? 空き家はボロボロのしかねえだろ?」
村の空き家か、俺達が秘密基地にしてたからそのボロボロさを思い浮かべる。
床が抜けたり屋根にも穴が空いているところしかなかったよな。
「あっ、それは私ん家でどうかな? お店を手伝ってくれるんなら良いと言ってくれると思う」
「アシアんとこか、アシアも少しは楽ができるし良いんじゃねえか? 駄目ならクソ爺に頼んでみるぞ」
「おう、よく分からないが構わないぞ、クソ生意気なケントに代わり、こんな可愛い子にいてもらった方が何百倍も良いってもんだ」
いつの間にか、扉から覗くクソ爺がいた。
「それよりケント、お前に渡すものがあると言ってただろ、ついてこい」
そう言うと、さっさと部屋の前から消えやがった。
そういや帰ってきたらなんとかって言ってたな。
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