第27話 スタンピードの終わり
「どういう事だサブマス! なぜスタンピードが起きておる!」
「それはギルドマスター権限で、ありったけの薬を撒けと言ったからじゃないですか、俺達は一応止めましたぜ。まあ、これでイリジウム伯爵から援助と言う名目で金を引き出せるって事でしょ?」
「それはそうだが、出ていく金も無視できん! 私の兵も出さねばならんのだぞ! 犠牲が出ればその分補充に使った矢もそうだ! さらに冒険者ギルドにも緊急依頼として金を――クソクソクソクソ! 国からの支援も引き出さねば······何か良い案は······」
「あの病気で死んだ女、魔法が使えた
「まったくだ。おい、この騒動が終わればイリジウム伯爵の元に向かうぞ。その足で王都だが、途中の暗殺依頼は入ってるか?」
「無いですね。王都では確か――」
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「きゃははははは! ステーキステーキステーキ! あっ! オークリーダーもいるじゃない! おーにーくー!」
「クロセル! アンラの倒したのもっ! 入れておいてくれ! 後から来る奴にっ! 踏まれてぐちゃぐちゃになっからよ!」
『分かりました。それより、厄介な魔物が来てますね。ワイバーンです、アンラ! ケントをワイバーンに向けて投げなさい!』
「おい! 投げるってなんだよ!」
オークをズバズバ切り裂き倒していたアンラ。クロセルの声で急激に向きを変え、俺のもとに。
目の前のオークをぶった切り、オークをクロセルが収納した瞬間、俺の背後に回ったアンラは『は~い、手の上に立ってね~』と言い、ザクと俺の足の下に地面をえぐりながら手を差し込み、持ち上げ――
「行ってらっしゃーい。ほいっと!」
「ぬおあぁぁぁぁぁー! てめえら無茶苦茶じゃねえかぁぁぁぁー!」
チラリと見えていた上空の点に向けて俺は投げられた。
「いってらっしゃーい♪ 私は~、ステーキ肉の回収しちゃうよー! きゃははははは!」
んぐぐぐ! 風で息ができねえ――目も開けてらんねえ!
『真上に私を掲げて下さい! 早く!』
「――――! ――! ――――!」
上って頭の上で良いんだよな! ぬっ――ぬおりゃあぁぁぁぁぁー!
思いっきり力を込めて両手で剣を握りしめ、上に向けてまっすぐ突き上げた。
ザシュ! と手に感触があり、何か生暖かい所を通り抜けたようだ。
そのお陰か、なんとか目を開けられる速度に落ち、目を開けると、目の前にデカくて鋭い歯が生えた口が見えた。
「なんじゃこりゃー! 食われる!」
俺は頭の上に掲げてたクロセルを、その鼻っ面に思いっきり叩き付けた。
「フグゴガァァァァー!」
「くぬっ!」
鼻先を切られ頭を下げたところで上に飛んでた俺の体は止まり、今度は下に落ち出した。
俺の下にいた鼻っ面をシバいた奴の首筋にクロセルを突き刺し、まだ飛ぶ力が残っているのか急旋回しやがった。
横に引っ張られるように体が持ってかれそうだがなんとか踏ん張る。
「デケエな! ぬががががっ!」
『ケント! 頭に向かって走り、角の間に突き刺しなさい! 早く! 空にいたワイバーンはこれが最後です! 街に向かって墜ちていますよ!』
「おっしゃー!」
太い首の上で踏ん張りながら半ばまで刺さったクロセルを引き抜き、頭の左右から生えている角に向けて走り、逆手に持ち変えたクロセルを言われたように体重も乗せて突き刺した。
『収納! アンラ! 来なさい!』
足元のワイバーンが消え、街の外壁まで後百メートルくらいのところでワイバーンは倒せたようだが、俺はそのまま落ちていってる。
「間に合わねえよ! なんとか着地してやる!」
ズガン! と街壁に着地したんだが足元の石にミシミシッとヒビが入った。
「ふんぬっ!」
「先でゴブリンを倒していた奴がワイバーンを倒して落ちてきたぞ!」
「ワイバーンはどこに行った! 消えたぞ!」
俺が着地したところは、ワイバーンが迫っていたために、兵士達は避難していたから踏み潰さずに済んだが、えらい目に遭ったぜ。
「うっし! 足がジーンってしてるがオーク倒しに戻るぞ!」
(はいは~い。一緒にお肉を狩るよ~、そ~れっ!)
いつの間にか横に来ていたアンラは俺の手を握り、前線のオークに向けて街壁から飛んだ。
前線に戻った俺とアンラは、残りのオークを始末した後振り返り街側を見ると、魔狼達も全て倒された後のようで、動いている魔物はいなくなっていた。
「大漁大漁♪ ケント、夜はステーキね。街に帰りましょう~、あっ、クロセル~、私が倒したお肉も回収してくれたんだよね?」
『はい。血抜きと解体もしておきました』
「おおー! 後は焼いてもらうだけね」
「お疲れさん。アンラも助かったぜ。投げるのはどうかとおもったが、俺だけならこんなに早くやっつけられなかったからな。ありがとう」
「良いよ~、ペンと墨、それからお酒も忘れないでね~。ってケント、あなた注目の的じゃん。早くプリムを拾って宿に行きましょ。そうしないと捕まって話をしなきゃならなくなりそうだよ」
「ん? 本当だな、でも報告はしなきゃ駄目だろ。クロセルも色々とありがとうな、助かったぜ」
『どういたしまして。では戻りましょう』
俺達は街に向かって歩き出した。
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