24. 終業式、告白への道筋

 いよいよ終業式。アンサンブルコンテストの前日、そして私の運命の日。

 この日はなんと朝から雪が降り、今は粉雪が舞う程度である。雰囲気は最高!

 (自転車での往復だから路面凍結してないのを祈るばかりだけれど。)

 終業式は午前中で終わり、昼から部活である。

 最初は個別練習で、15時位から顧問によるアンサンブルコンテスト本選出場の全チームの演奏チェックが始まった。

 我らが顧問、山城照輝やましろてるき先生が灰色の髪をかきあげながら私達の演奏の最終チェックをし、改善点を告げていった。

 全チームが顧問のチェックを受け終わり、終礼ミーティングで全体は解散したが、私達は残るのが確定していた。

 予想通り、19時までみっちり練習だった。

 昨日シルバーポリッシュでピカピカに磨いた、銀色に輝くユーフォニアムに、私は自分の顔を映す。

 あの文化祭前日とは違うのだ。ユーフォニアムに映る私自身に頷くと、なんだかあの文化祭前日の臆病だった私が、水の中から応援してくれている気がしてきた。

 時計が19時を回ったところで片付けを始め、戸締まりをして顧問に報告をして部室の鍵を渡す。

「じゃあ僕は帰るからね。明日は頑張れよ。」

「はーい」

 鍵を受け取った顧問は私達を激励すると明日に備えて帰っていった。

「いよいよ明日だ。今日は早く寝て体調整えて、明日はベストを尽くすのみ!」

「応ッ!」

 千利が金管8重奏チームに檄を飛ばす。(ごめんよ私はすぐには帰らないから!)

 金管8重奏チームのみんなと昇降口まで(一旦)降りていき、

「水筒をどこかに忘れたかもしれない、探すのに時間がかかりそうだから先に帰って。」

と言って離脱、私は図書室へ向かう。

 途中の廊下で一息つき、私は高ぶる心を落ち着かせる。

 大丈夫。練習してきたとおりにすればいいの。

 わかってはいたことだけれど、どうしようもなく、失敗すれば世界の終わりが来るかのような不安に飲み込まれそうになる。

 図書室が見えてくる。扉からは明かりが漏れている。

 ん?  扉から誰か出てくる? 出てきたのは……

「優音先輩! お久しぶりです!」

「琴葉ちゃん久しぶり! こんな時間に図書室?」

「ええまあ、はい。先輩は追い込みですか?」

「うん。図書室でも自習できるようになったって聞いて。他の自習室もいいけど、ずっとやってると飽きてきちゃって。気分転換に、たまに図書室でもやってたの。

 琴葉ちゃん、アンコンはどう?」

「はい。金管8重奏で出ます。めっちゃ緊張しますけど、良い演奏してきますよ!」

「頑張って! もう帰らないといけないから帰るね。……あれ、 琴葉ちゃんは何しに来たの?」

「と、図書室の先生に相談です! どうしても藤枝先生が良くて、でもこの時期ってアンコンで時間取れないじゃないですか。だから無理言ってこの時間押さえてもらったんですよ。」

「藤枝先生って図書室にいるあの若い女の先生だよね? 今も図書室にいるはずだけど。  ふうん……? まあ、それならそうなの。それじゃあね。アンコン頑張ってね!」

 優音先輩は帰っていった。

 図書室の先生に相談、半分くらいは本当だが半分くらいは嘘である。

 最後に若干怪しまれた気がするが、なんとかなっただろう。

 私は図書室の扉の前に立ち、深呼吸して扉を開けた。

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