序之巻、矢来化石
夏の夜空に雷鳴とどろく。
ここは
今まさに、大商人の馬鹿息子と、今を時めく
「花魁、俺はあきらめねえ。親父や兄弟がどんなに反対しても、俺はおまえを
「
話の初っぱなからああん、も無いもんだが、腰を振っていた男も同時に小さくあえいだ。
障子が一瞬、鋭い光に照らされた。雷鳴が低くとどろく。情事に熱中するふたりの後ろ、暗い障子に一筋、光が弧を描いて落ちるのが映った。そして次の瞬間、百個の太陽が落ちてきたみたいに部屋中が光り、屋敷全体を衝撃が襲った。
階下が騒がしくなる。
熱に潤んだ瞳で、ふたりはみつめあう。
「雷?」
と尋ねた花魁に、
「どこかに落ちたか」
と答えて、それからふたりは同時に飛び起きた。
「「火事!?」」
慌てて障子を開いた男の目に映ったのは、下の庭でちろちろと燃えている老木、店の者たちが二、三集まり、
「そこに、落ちたのか?」
拍子抜けした声を出すと、
「へい、こいつでさぁよ」
と、老木の根本を目で示したが、影になり何があるのか分からない。
「星が空から落っこちて来たんですよ。なんか不吉なことでも起きるのかねえ」
「けっ、そんなこたぁあるもんか、今日は――」
「旦那、前」
別のひとりに指摘され、与太郎は慌てて障子を閉めた。
「花魁、もし俺たちが今天から子を授かったなら、名はこうしようぞ」
近くの筆を手に取り、柱に大きく書き付けた。
『 夜 来 化 石 』
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次回はいよいよお待ちかね、本作主人公の
なんせ盗賊ですからな、登場シーンは犯行現場と決まってるでしょ!
目ぇかっぴらいて見て行ってくんなせえ。
おおっと、フォローも忘れねぇでおくんなせぇよ!
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