#10 恨み感 第5話
「
「はーい、さよならー。気をつけてねー」
帰宅部の女子生徒達が、
「あら、しっかりと先生してるのね、政木先生……」
いつの間にか政木の背後に
「……周りに人がいそうな時に話し掛けないでもらえるかしら? えーっと……篠崎さん?」
「別に私達は単なる生徒と担任でしょ……」
「――ん? いや、お主のことじゃから既に会話内容は周りに聞こえないようお願いしておるな!?」
政木が腕を組んで不満そうに振り向くと、篠崎は
「過去の失敗から学ぶのは良いことね……。ところで、あの金髪クソ女はこの並行世界には来ていないの……? 不思議とまだ見かけていないのよね……」
「金髪クソ女ぁ? あぁレイラのことか。別にアレはワシとセットで活動しているわけではないから知らぬわ。お主が行く『閉じた世界』に現れる事が多い
――並行世界は人々が選択した行動によって世界が分かれ、新たな並行世界が生まれていく。
それは、まるで
しかし、世界という樹木の
その中には栄養が届かず、未来を生み出すことのできなくなった『閉じた世界』が生まれている。
閉じた世界ではどんな選択をしても新たに並行世界が生まれず、何をしても必ず決められた結果に収束してしまう。
彼女達が訪れたこの世界も、その『閉じた世界』の一つだ。
この世界に生きる人々は何をしても、あるいは何もしなくても、ただ一つの決められた未来を歩むことになる。
「しかし、閉じた世界とは
政木がグラウンドで練習をする運動部を見て
「未来を変えられるヨーコが教師をやっているのに、それは皮肉かしら……?」
閉じた世界で未来を変えられるのは、他の並行世界から来た篠崎、政木、レイラのような、その世界にとって異物である者しかいない。
本来、雅彦はヒカリに出会うことはなかったが、レイラが進路のアドバイスをしたことによって雅彦は現在の高校に進学することとなった。
そして、篠崎も同様に、雅彦がヒカリに再度告白をする後押しをしたことで、二人は交際するに至った。
この世界の未来は異物によってしか変えられない。
「ワシの
「ヨーコの事情なんて知らないわよ……。それより、アイツのこと、本当に知らないんでしょうね……?」
「しつこいのう、
「まぁ、それはそうなんだけど……」
面白いことを楽しみたいという気持ちはあるが、自分の知らないところで意図しないことが起こってほしくはない。そんな子供じみた考えを篠崎は持っていた。
「まったく、お主も
「うるさいわね……。さっき何事もなく想定通り告白が成功してしまって、ちょっと
「ほう、流石はワシの教え子じゃな。しっかりしておるのう」
「
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