第3話

3日目


「さっむ!」


また寒さで目を覚ました。夜に計画停電すんなと言いたい。


我が家も次世代型のモデルハウスって言っても機能の全てを把握しきれとらんしね。


『新種のウィルスが変異か?石川県に非常事態宣言……』『削除されました』


『石川県封鎖!新種ウィルスの変異種感染か?』『削除されました』


『石川県に変異ウィルス上陸?県内の様子』『削除されました』


『変異ウィルス感染者が石川県に上陸!石川県は封鎖へ』『削除されました』『削除されました』


『石川県で変異ウィルスの感染爆発か?石川県への立ち入りが禁止されている謎?』『削除されました』


「変異ウィルス?それはなんぞ?相変わらず、ツイッター消しおるな……まあ、良いや。石川県内で変異ウィルスとかなんとかがクラスター起こしたってか?やれやれだわ。」ズズズズズズズ……


そんな俺はインスタントコーヒーを飲みながらツイッターを見ていた。


トレンドは「新種のウィルスが変異?」だった。


実にタイムリーなトレンドを開くと韓国に新種ウィルスの変異種らしい病気が発生したらしい。


『石川県に渡航の韓国人旅行者が変異ウィルス発症、国立医療センターに搬送……片町では観光客が暴徒化?』


『続報!石川県内の現在の様子……』


『誰か助けてくれ!片町に人食いが……』『削除されました』


『迷惑な観光客のせいで石川県が封鎖へ』


『ふざけんな!韓国の旅行者への不満噴出か?』


『民度を問われる日本と韓国……』


『韓国人は日本へ来るな!迷惑渡航者への苦言……』


「おいおい、韓国の旅行者大丈夫なのか?ちょっとヘイト溜めすぎだろ?」


しかも、病気を発症した韓国の観光客が観光船に乗って金沢市に来ちゃったらしい。やっと隠蔽はやめたのか?大々的に韓国人を非難する論調のツイートが流れる。


『韓国人は国へ帰れ!』


『韓国人最悪だわ!』


『韓国人消えろ!』


「うわー、ドン引きだわ……なんだコレ?」


相変わらず日本人ってのは右に習えって感じだな。確かに新種のウィルスに感染した状態で韓国の人が隣国の日本へ渡航しちゃうのは問題だけどな。


ちゃんと日本に入って来る前に検査しとけよ。ついでに言うならば、日本に着いた時に検査しとけば良いだろ?韓国人に全部責任を押し付けんな。


それにな、韓国人には良い奴がいっぱい居るんだ。


だいたい、今回の新種ウィルスは中国だかからスタートしたんだろ?えーと、冷凍食品に混じってたんだっけ?まあ、よく知らんけど。


韓国からの観光客が感染してたのは不幸だったが金沢市的には最悪なクリスマスになって笑えたよ。リア充共ざまぁ。そんな感じの俺だったが次のツイートが深刻だった。


『日本国内で新種ウィルスの変異種を確認か?』


『世界で4番目に新種ウィルスの変異種に感染された人間の多い日本とは?』


「え?マジか?新種ウィルスでも洒落にならんのだが……買い占め、起きるんじゃね?やっべ!ラムー行くべ」


日本中で新種ウィルスの変異種が確認され始めた。


ただでさえマスクの買い占めが起きる国なのに変異種ウィルスの蔓延なんて笑えない。


「やっぱね。こんな時間にも買い物客は大量だわな」


「店内が混みあってます!並んで下さい!」


「早くカップ麺買わなくちゃ!」ざわざわ……ざわざわ……


「皆さん、落ち着いて下さい!」


「水だ!水を買え!」ざわざわ……ざわざわ……


「現在、店員を呼んでいます!しばらくお待ち下さい」


「缶ジュースどうする?」ざわざわ……ざわざわ……


「並んで!並んで下さい!」


「あれ?パンが売り切れ?店員さん!パンは?」


「本日のパンは売り切れました。入荷未定です!」


俺の仕事は当分の間休業、俺は早朝の町を眺めながら駅西の8号線近くにある大型の24時間営業のスーパーであるラムーに向かう。


俺と同じように急いで買い物に来たらしい家族が店の中の至るところに居たが、俺は大量に水やカセットボンベ、保存が効くビスケットなんかをカーゴに詰め込んだ。


「えーと、水OK、カセットボンベOK、ビスケットOK、エナジードリンク?へぇーやっすいな!」


「お客様、8番レジにお願いします!」


「はいよ」ガラガラガラガラ……


何故かゴールデンハンマーって名前のエナジードリンクも大量に買っちまったが1本48円って安くないか?思わず銀色のシュガーフリーを買ったんだが、糖分入りにしとけば良かったと気付いたのは後の話。


給与とボーナス、貯金を全部下ろして今日も買い物に奔走する。まあ、200万前後有る貯金と前日下ろした80万ほどの給与とボーナスを使えば大抵の物は買える。


「ふう、とりあえず最低限の食い物は大丈夫だわな。他に何か要るかな?確かサバイバルマニュアル有ったな?ふむふむ、発電機にライターか……タバコも要るな」


今日使ったお金なんて2万ほど、これで安全を買えるなら安いもんだろ?ついでに乙丸町のホームセンターで安い発電機が売ってたんで購入し、電子ライターを箱買いする。


「おっ?こんな時間にスーパームサシやってる?よっしゃ!色々買うべ」


「いらっしゃい!」


「おう、こんな時間に営業しとんの?」


「はい、今日は特別ですね」


「ふーん、明日は?」


「明日からは休業となります」


「ほうか、じゃあ今購入するしかないね」


「そうですね。防寒具なんかも買った方が良いかも知れませんよ」


「おう、あんがとさん」


もちろん、煙草も購入するがね……俺はヘビースモーカーじゃないんで2カートン程で十分だ。ついでに色々と作業着やら防寒着やら購入し、帰る時には目出し帽にゴーグルをかけた変人になっちまった。


「うわ、変な奴居るわ」ざわざわ……ざわざわ……


「何あれ?ウケる」パシャ!パシャ!


「俺は珍獣かなんかか?写真撮んなよ!」


周囲の視線が俺に突き刺さるが無視だ無視。帰宅して購入した品物を棚に並べたら、俺の部屋がどんどん物置に変わっていく。


『日本へ変異ウィルス感染者が渡航……』


『日本政府が石川県を完全封鎖へ……』


『日本は4番目?変異ウィルス流入か?』


「えーと、マジか?ヤバいな」


SNSではついに隠せなくなったのか、色々な国の情報が入って来た。どうやら、日本は変異ウィルスが入って来た4番目の国らしい。


『変異ウィルスの初期症状は……』


『高熱の後の吐血に注意!』


『退院患者無し?変異ウィルスの謎……』


「なんか、洒落にならんな」


まずは中国、次に韓国、そしてアメリカ、日本と続いていく。今回のウィルスは正体不明らしい。症状も第一段階は高熱で次に吐血し、病院に隔離されるまでの情報は入って来るんだが、患者が退院した話は聞こえて来ない。


「クリスマスの悪夢」なんて呼ばれる出来事のほんの触りの部分に俺達がいた事を思い知るのは先の話となる。


「レトルトカレーはどれでも美味いぜ!カレー最高だわ!」


まだまだ、金沢市内には物資があり、現在のところ暴動なんかの兆候はない。良くも悪くも日本人。俺は特に気にする事なくレトルトのカレーを食べながらゲームをする。


この時の俺は馬鹿だった。とりあえず、300万近い金で生活物資を買い込んでたのは評価出来る。だがそれだけだ。


深刻な状態はすぐそこまで近寄ってきていた。




現在の状況


インフラ

電気・計画停電中

ガス・正常

水道・正常

電話・不通

道路・県境で封鎖


装備

ダサい目出し帽

安物のダウンジャケット

安価なヒートテックの服

ジーパン

革手袋

スマホ

財布


所持金

2785550円


備蓄品

カロリーメイト30パック

フルーツグラノーラ10袋

カップ麺98個

パックご飯38パック

水2Lペットボトル54本

米10kg

エナジードリンク24缶

フレックスコーヒー200袋

ビール48缶

アルコール飲料99缶

安い業務用ブランデー2本

炭酸水48本

缶詰め60缶

レトルトカレー40袋


自動車・ガソリン満タン

小型発電機1台

ガソリン48L

石油ストーブ1台

灯油191L

焼肉用コンロ1台

カセットコンロ2台

カセットボンベ39本

急速充電器2個

手回し充電器2個

電池パック122本

防災グッズ1袋


赤ちゃんのお尻拭き10パック

ティッシュ30箱

トイレットペーパー95ロール


色々と増えたもんだな……。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る