サバイバーズ・極限都市Kanazawa

白熊堂

第1話

1日目


クリスマスイブ…北陸の町、金沢の元繁華街である片町は観光客でそこそこ賑わっていた。


世界中に新種のウィルスが蔓延し、死者は2000万人を越えているというのに人間の慣れは恐ろしいもんだ。


「はあ、世の中はクリスマスってか……」


俺の名前は金井斗草、やる気のない35歳の中年親父の底辺労働者だ。ちなみに未だに独身で彼女も居ないし、地元から離れた金沢には友達も居ないボッチってヤツな。


俺にとっちゃ、クリスマスイブなんて無意味な行事は無くなっても構わない。むしろ無くなれ、リア充爆発しろ。


そんな和やかな金沢市の元繁華街の片町のスクランブル交差点の近くのカフェでちょっとした事件が起きる。片町のそこそこお洒落なカフェで食事中の観光客の一人が突然倒れて血を吐き出した。


「ぐほっ!ぐぼぁっ!」ビシャッ!


「なんだ!?大丈夫か!救急車?警察?どうしたら?」


「ぐほっ!ぐほっ!かはっ!」ビシャッ!ビシャッ!


「キャアアアー!」


「ぐぼぁっ!がはっ!かはっ!」ビシャッ!ビシャッ!


「こっちもかよ!早く救急車呼んでくれ!」


「き、救急車!誰か110番してくれ!」


「げほっ!げほっ!」ビシャッ!ビシャッ!


「おいおい、新種ウィルスじゃねぇよな?ヤバいって!」


「おい、写真とっとこうぜ!」パシャ!パシャ!


「やめろよ!行くぞ!」


「ああ、俺も関わりたくねぇわ……」


そして、次々と周りの観光客も血を吐いて倒れていく。直ぐに救急車が呼ばれ、観光客は医療センターに運ばれる。


新種のウィルスが蔓延していると言っても金沢は田舎だ。新種のウィルス感染者は驚くほど少ない筈だった。


だけど、それが間違いだったな。


その日、深夜2時に仕事から帰った俺は風呂に入り、カップ麺と安いアルコール飲料ってやつを飲んでスマホを片手にのんびりしていた。


「あー、ダルいわ~明日も仕事かよ……休みくれよ」


ウー!ピーポーピーポー!ウー!…………


やたら救急車の音がうるさいが、俺の住んでいる場所は観光地のど真ん中で近くに小学校があり大通りにも近い。


やたらサイレンがうるさいが、この時期は宴会なんかで無茶をする奴が多いから別段不思議なこっちゃない。


ウー!ピーポー!…………


俺はアルコール飲料と一緒に優しさで出来てる精神安定剤のバファリンを飲んで布団に入った。夜の間も救急車とパトカーのサイレンがうるさかったが追加に飲んだ睡眠薬で無理矢理眠った。


次の日の朝、俺は部屋の寒さで目を覚ました。


「さっむ!なんじゃコレ?」


おかしい?テレビがつかない。


「あれ?つかんな」


冷蔵庫の電源が切れている。


「おいおい、俺の冷食が……つーか水!」


電気もつかない。


カチカチ「マジか……停電?」


ガスも水道も止まっている。


キュッキュッ!カチカチ!バチチチチチチチ!


「はあ?インフラ全滅かよ!?有り得んだろ!」


ちな、俺の家はスイッチ一つでインフラの全てを最低限賄えるようになっている次世代型のモデルハウスの払い下げなんだが……すっかり忘れとったのは後で思い出したりする。


なんだ?何が起きてる?インフラは全てアウト、スマホには金沢市の地図が赤く染まっていた。


『石川県からのお知らせ……現在、非常事態が起きています。外出は控えて下さい……繰り返します。現在、県内に非常事態宣言が発令されました。外出は控えて下さい……繰り返……』


「え?マジで?外出禁止?オッシャー!仕事休みダゼ!やったね♪ヒャッホー!って……飯どうするよ?」


はあ?外出禁止だと?仕事はどうする?飯なんてカップ麺位しかねぇよ。


『金沢市で非常事態宣言発令……』


『石川県に非常事態宣言発令……』


『石川県が外部への移動制限地域に指定されました……』


『現在、金沢市の広範囲でインフラが稼働していません……』


『富山県境と福井県境は自衛隊により閉鎖されております……』


『現在、石川県全域が災害指定地域に指定されました……』


俺はスマホで情報を集めていく。金沢市全域に非常事態が起きていて福井県と富山県の境には自衛隊が配置されているらしい。高速道路は通行止め、公共交通機関もストップしているらしい。


既に市内はパニック状態で、このくそ寒い時期に久しぶりにストーブを出して暖をとった。ついでにカップ麺とインスタントコーヒーを作って朝飯を終わらせた。


「ストーブなんて何時ぶりだよ?3年か?まあ、良いや。お湯沸かして飯でも食うべ」


いったい何が起きてやがる?


家の外は以外と静かだった。大通りには人っ子一人居ない。俺はコンビニに食料を購入しに行った。


「ファミマ開いてっかな?しかし、さっむいな!」


しかし、コンビニはシャッターが閉められて貼り紙がしてある。しばらく販売中止で休業するらしい。


「おーい、24時間年中無休じゃないんかい!」


仕方なく、近くのスーパーに行くが全ての施設が閉鎖されていた。


「ここもかよ……」


近くの警察署に行くが新人警察官が対応に追われていた。どうにか備蓄の食料品なんかを貰って帰宅し鍵を閉めた。


「皆さん、並んで!並んで下さい!」


ドン!「ちょっと!どうなってるのよ!」ざわざわ……ざわざわ……


「すいません、警察では分かりかねます!」


ドン!ドン!「はあ?税金で食ってんだろ!調べろよ!」ざわざわ……ざわざわ……


「いえ、そういう場合は市役所か県庁に問い合わせ下さい」


ドン!「あ?だから!県庁にも市役所にも電話が繋がんないんだよ!なんとかしろよ!警察だろうが!」ざわざわ……ざわざわ……


「ですから、警察では、そのような対応は致しかねます!」


ざわざわ……ざわざわ……


『従業員へのお知らせ……現在、金沢市からの通達により、外出禁止命令が出ています。年内の出勤は停止となります。本日から冬季休暇となりますのでよろしくお願いいたします』


「え?なんじゃコレ?マジか……」


スマホでSNSを確認するが情報が錯綜している。当座は仕事も休業らしいので自宅待機だ。クリスマスなんて無くなれば良いって思ってたが、ここまでする必要はない。


俺はスマホのバッテリーに気を使いながら、寒さに震えてあつぎしつつ毛布にくるまる。


現在の状態

石川県全域のインフラほぼほぼ完全ストップ状態


拠点の主な食料

パックご飯9パック

カップ麺24個

水2Lペットボトル18本

アルコール飲料47缶

カセットコンロ1台

カセットボンベ12本

石油ストーブ

灯油57L

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