ポチの29話 不穏な報告
ルーナちゃんが孤児院から香辛料屋さんに移っても、商店街でお手伝いをすればいつでも会えるの。
だからポチ達は全然寂しくないんだよ。
「そうなの、ルーナちゃんはお母さんと一緒に香辛料屋さんにいるのね」
「そうだよ!」
「ふふふ、これはとってもいい事だわ。ルーナちゃんにとってもね」
うーん、ポチの話を聞いたマーサさんは純粋に喜んでいるけど、お肉屋さんのおかみさんはニヤニヤしているよ。
この前、香辛料屋さんでお手伝いした時に買い物に来たおばちゃんと同じ顔をしているなあ。
ポチわかるよ。
きっとお肉屋さんのおかみさんは、何か企んでいるんだ。
でもポチには、声掛けという大切なお仕事があるのだ。
と言う事で、今日はパン屋とお肉屋さんで頑張っちゃうよ。
「いらっしゃい! ミッケちゃん考案の新作パンができたよ。お肉屋さんとのコラボだよ!」
そうなんだよ。
今日は、ミッケちゃんの新作パンが発売されるんだよ。
ベースはこの間のお肉サンドイッチと似ているけど、ちょっとスパイシーな味付けなんだって。
パンも専用の物を作ったらしいよ。
大人向けのパンなんだって。
だから、ポチも気合い入れて声掛けをするよ。
「いらっしゃい! 新作パンを発売しているよ。大人向けのスパイシーなパンだよ!」
「お、新作パンか。大人向けなら試してみるか」
「まいどあり!」
おお、主に男性の冒険者が続々と新作パンを買っていくよ。
この前のお肉サンドイッチは甘めの味だから、女性とか子ども向けに売るんだって。
リルムちゃんが色々と販売戦略を立てていたよ。
「おやおや、またしても大繁盛ですな」
「あ、会長さんだ!」
「ははは、ポチちゃんは相変わらず元気だね」
「ポチはいつでも元気だよ!」
パン屋さんで声掛けをしていると、お店の前に太っちょの人がやってきたよ。
前にエプロンの事で話をしている、商工ギルドの会長さんだ。
会長さんは、手に持っている物をマーサさんに渡したんだよ。
「あらあら会長さん。どうしたのですか?」
「おや、マーサさん。回覧板ですよ。ちょっと急ぎの物なので、私が持ってきました」
「それはお疲れ様です」
「では、私はこれで」
「ばいばーい」
マーサさんが会長さんから回覧板を受け取って中を見ていると、何だかマーサさんの表情が険しくなったぞ。
直ぐにマーサさんがお隣のお肉屋さんのおかみさんに回覧板を回したけど、お肉屋さんのおかみさんもこれまた表情が険しくなっていったよ。
一体、何があったんだろう?
「ポチちゃん達も気をつけないといけないわね。隣の領地で、暴れ犬獣人が出たそうよ」
「暴れ犬獣人?」
回覧板を回してきたマーサさんが戻ってきて、ポチに声をかけたの。
何だろう、暴れ犬獣人って?
すると、パン屋にいた冒険者のおっちゃんが補足説明してくれたよ。
「おお、その話なら俺らも聞いた事あるぞ」
「体の大きな真っ黒の毛並みのやつだってな」
「顔に傷があるのが特徴らしくて、とにかく見境なく暴れまくるそうだ」
「えー、何それ。悪い犬獣人もいるんだね」
「ポチちゃんの様な可愛い犬獣人もいるけど、たまに気性の荒いやつもいるんだよ」
まるで、りっちゃんにちょっかい出してきたあの大きな黒い犬に似ているな。
悪い事をするなんて、同じ犬っ子としてポチもプンプンだよ。
「そうか、隣の領地に出たか」
「俺らも警戒しないとな。勿論、ポチちゃんも気をつけるんだよ」
「うん、分かったよ」
危ない犬獣人が出たから、急ぎの回覧板が出たんだね。
冒険者も気をつけてっていうから、ポチもちゃんと気をつけるよ。
でも、今日のポチには新作パンを宣伝するという大切なお仕事があるのだ。
まだまだお仕事頑張るぞ!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます