第6話  アルテアの火事

「マークウェルさん、今回は長かったですね。魔族の巣を一人で掃討なんて。

 やっぱり、パーティーを組んで行った方が、良かったのではないのですか?」


 冒険者ギルドの受付嬢が、くたびれてヨレヨレの状態で現れたマークウェルを見て言った。


「俺は、基本一人の方が良いんだよ」


「まぁ……ゆっくり、お休みください。宿はいつもの所でよろしいですか!?こちらから予約しておきますわ」


「いやいや、早く精算してくれ。金貨で良いから最高金貨、25枚だ!」


「分かりましたわ。流石にSSSランクの勇者様。どうか、お疲れを取ってまた、お出で下さいませ」


 受け付けのお姉さんは、最高金貨を25枚薄い布に包んで、マークウェルに渡した。


「落ち着いたら来るからな~」


「お待ちしております」


 金髪巻き毛の受け付け嬢は、いつも清楚だ。


 マークウェルが、外に出ると、城壁の方が騒ぎになっていた。

 火事になっていた!!

 嫌な予感がした。

 何故だ!?

 城壁の外に置いてきたはずなのに!!


 マークウェルは、呪文で風の精霊を呼んで城壁まで飛んだ。


 (げっ……)


 ブリジットが泣きながら飛んでる。

 火を吹きながら!!

 警戒した警備騎士に追われてるんだ。


「ブリジット!!」


 ブリジットもマークウェルに気が付いた。


『勇者サマ~~!!怖いよ~~!!』


 マークウェルは、ヒョイとますっぐに飛んで来た炎を避けた。

 炎は、建物に燃え移っていった。


「ブリジット!落ち着け!飛ぶぞ!大将はどうしたんだ!?」


 <マーク、俺はここだ。すまない。マークを待ちきれなくなった火竜の姫が、城壁の中へ行ってしまった。俺は、見失ってしまった>


「見失うなよ!アルテアを火事にする訳には行かない。大将、雨雲を呼べるか!?」


 <やってみよう>


 ブリジットが、キコキコ黒板にレトア語をを書いた。


《火なら消えるよ》


「え?」


 ブリジットが炎の方に、手をかざすとスーッと火は消えていった。

 建物のあちこちに焦げ目が残っただけだった。


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