第7話 当社謹製
オレは期待を込めて、助手席のダッシュボードから「取り扱い説明書」を取り出した。
オレはなぜ、軽トラから離れると死にそうになるのか?
オレはなぜ、異世界に転移してしまったのか?
オレはなぜ、軽トラと共に転移したのか?
もしかしたら、そのすべての謎がこの「取り扱い説明書」で解消されるかもしれない。
震える手で、車検証が入っているビニールのカバーの中から冊子を取り出しすと、その表紙には―――
【軽トラ 異世界仕様車】
こう書かれていた。
うん。とりあえず取扱説明書が地球に居た時のまんまの内容でないことが分かったのには安心した。ここまで期待をもたせて「ハイ〇ェット 取り扱い説明書」とか書かれていたら落胆していただろう。
期待を込めて表紙をめくる。
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ごあいさつ
拝啓
この度は異世界転移おめでとうございます。
また、転移のお供に当社謹製の【軽トラ 異世界仕様車】をお選びいただき誠にありがとうございます。
さて、すでにお気づきのことと思いますが、ここ異世界の環境では所謂【地球の人間】は生存することが出来ません。この世界に広がる【魔素】が人間にとっては毒となるためです。
このような過酷な環境でのオーナー様の快適性を高めるべく、当社の製品には様々な
また、拡張性ゆたかなオプションパーツも充実しており、オーナー様の異世界ライフに彩を添えることが出来ると自負しております。
それでは、当製品がオーナー様の充実した異世界生活の一助となることを祈念致しまして、ごあいさつに代えさせて頂きます。
敬具
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「……なんじゃこりゃ……」
とりあえず。この世界では魔素というものが充満していてそれが毒になる。さっき軽トラから降りた時に激しく苦しくなったのはそのせいだということは分かった。
だが、更に疑問は増えた。
【異世界仕様】【当社謹製】【オーナー様】などという気になる文言。
この文言の意味するところは、この軽トラを作った、もしくは異世界仕様にカスタマイズさせた、意思を持った存在がいるということ。
そして、オレが地球で乗っていたのは普通の軽トラだったので、この軽トラをオーナーであるオレにあてがった、またはカスタマイズした何者かがいるという事だ。
その両者は別の存在なのか、それとも同一の存在なのか。もし同一だとすれば、そいつはオレが異世界に転移させられたことについても事情を知っているか、その原因となった張本人である可能性が高い。
仮にその人物? を
「X」はオレの前に姿を現すことはあるのだろうか?
はたして、「X」は敵なのか? それとも味方なのか?
現時点ではわからないことだらけだ。
とりあえず、今できることとして「取扱説明書」の続きを読んで「軽トラ 異世界仕様車」についての理解を深めていこう。
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