第4話太陽

 あれは雪の降る頃の記憶だろうか。

 はっきりとはしないのだけれど、夢を見ていた。

 はるかに飛んでいく、白鳥の飛翔。

 僕は、研ぎ澄まされていく。

 神経の高ぶり、血管の迷宮のような、そんな世界に、落ちていった。

 僕は、オナニーをしていた。いった後に、精子の匂いを嗅いだ。

 生命を感じる。

 僕のハートが、詞を読んだ。

 そして僕は、ノートに一気に殴り書いた。

 カラフルな日記帳に。


「太陽」


草木に降りかかる雨


苦しみのように聞こえる、紛れ込む、虫たちの叫び。


一つの夢


一つの希望


一つの愛


生命は叫んでいる。


嘆きの祈りを聴く者はいるか?


叫ぶ声を、悲しむ声を、聴いているものは、弔うものはいるか?


草木に降りかかる雨。


スコールのように、尽きない涙が、スコールのように、尽きない涙が。

空から嘆いている。声を発している。


あるいは、一粒の雫のように。


天国はあるか? あるいは、地獄は?


君は信じるだろうか?


生命の歌を。


かすかに聞こえる、青空の兆しが。


そして自由を歌う鳥たちが、羽を休ませていた鳥たちが、再び青空へと飛び立つ時を、待っている。


躍動する景色。脈打つ太陽。


ほら、雨が上がった。雲間から、光が見える。


太陽は君を待っている。


君は、生命に包まれている。


幸せを感じる。


余韻は、耳鳴りのように、大地の歌を鳴らす。震える。


生命たちは震えている。


明日の訪れを、日の光を、火のような情熱をもって。


生きろ 生きろ 生きろ! と。


生命たちは歌っている。


小鳥がさえずり始めている。


そしたら、また空を見上げてみよう。


きっと光が見える。


僕は、カラフルな日記帳を閉じて、キスをする。

裏表紙に。

そこには、小さな文字でこうある。「ユニゾン」と。黒いマジックインクで。

僕は、少しだけ、心が晴れた。

それから、レラのことを想った。

そして、またした。


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