第2話 不思議な縁があるように
他の人とは異なり、私は家族や教師の影響ではなく、偶然の出会いでクラシック音楽を好きになったのだ。
それは私が高校を卒業した時だった。
あの夏、私は蒼洲島の中央にあるアパートに住んでいた。そこは木々が茂り、海風が時折吹き抜け、窓を閉めていても涼しさが感じられた。ずっと試験勉強に忙しい高年級生活が終わり、ついに自分の好きな本を心ゆくまで読めるようになると思っていた。そこで久しぶりに本屋に行ってみた。
その本屋は私の親友が経営している店で、話は長くなるので最後まで聞いてください。
わずか半年足らずの間に、小竹本屋は改装され、都心から遠く離れ、騒音も少なく、広々とした場所に移った。都会の喧騒に疲れた店長さんは、この本屋から数十キロ離れたところにある別邸で、海辺に暮らすことを決意したと言われた。
だから、その姿が見えることも少なくなった。彼女の代わりに、無口で静かな感じの若者が数人、店番をしている。
「このヘッセを買いたいのですが。」
少女は積んだ本カートを隅に押しやり、ようやく棚の後ろから頭を出した。
「お待たせしました。」
「これ、ボロボロになっちゃったんだけど、新しいやつを用意しましょうか?」お客様は新しいものが好きなのだと、経験から学んだのか、彼女はぴしゃりと振り向きながら言った。
「いいえ、結構です。古い本が好きなんですから。」
ほのかに香水と汗の匂いが、秋風に乗って店内に伝わってくる。ある時、天井から流れるシューベルトと不思議な縁があるように思えた。早く帰って夕食を作ろうと思ったが、それよりもサンドイッチで十分空腹を満たせると考えて転向した。
ランプで日焼けした表紙の『車輪の下』を手に取り、隅っこで丸くなって読んだ。お腹が空いていても、夢中で読み終えるあの感じは、自分にとってなんともロマンチックだった。何年か後に、この瞬間が懐かしいと思うな、そう考えた。
いつの間にかページが頭打ちになり、顔を上げると、先ほどの少女がじっくりと私を観察していた。ネズミ色のシャツを着て、カーキのワークパンツ。汗で少し濡れたシャツ。少し息苦しくなるような圧迫感があり、一瞬固まってしまった。
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