第13話 2022年のネットミームを食べる
2022年、12月31日。
大晦日がやってきた。
こたつでぬくぬく、紅白でも見ながら、みかんをひょいぱくもぐもぐ食べたいな。Twitterで「#今年も終わりなのでいいねした人に一言」のタグを使ってフォロワーと馴れ合いたいね。それに今年はれーちゃんとあいちゃんが一緒にいてくれる。平和な、癒しの年越しになるに違いないね~。窓の外に雪がちらついたなら景色も最高だね~。わ~。
さてここで何かのルールを確認しよう。
① 複数人で部屋に集まる。
② ほぼ何も見えないくらいに部屋を暗くする。
③ 食材を、それが何なのか他の参加者にわからないように鍋に投入する。
④ 食材が煮え次第、暗闇の中で鍋から具を取り出して食べる。
何かって、何だろうな~~~~??? わからないな~~~寝るか~~
「げんじつとうひを、やめろ」
「お、お、おにーさん……っ。闇鍋、もう、始まってますよ……! しょ、食材を入れてください……!」
「ウェッ↑」
「……」
こたつのある部屋は、暗い。コンロの火だけが明かりのすべてとなるほどに。
正四角形のこたつに入った四人は、僕と、れーちゃんと、あいちゃんと、スペシャルゲストの玄米法師さん。
配置はこんな感じだ。
玄
僕□あ
れ
「何で闇鍋することになってんの……」
「おおみそかは、2022ねんの、そうけっさんを、するひ。ことしの、りゅうこうした、ねっとみーむを、ごちゃまぜにして、たべることで、ことしもよいいちねんだったなーって、げろはきながら、おわれるんご」
「ゲロ吐きながら、終われるんご。じゃないよ!! ふつうに年越しそばで良くない!? あいちゃん、どう思う!!」
「あ、えと、えと、えーと……! は、はぅぅ……><」
「かわいいので許しますが!!」
れーちゃんが爆笑した。なんでこの子性癖が関係してくると急に笑い出すの。
横では玄米法師さんが黙っている。この人も謎なんだけど。というか誰なんだ。
「げんまいほうし。それは、よねづけんしのなまえの、かんちがい・ばーじょん。よねづけんしと、おぼえていたつもりが、あたまのなかでいつのまにか、げんまいほうしというなまえにすりかわってしまう、なぞのげんしょうが、にほんかくちで、おきているんご」
「それには諸説ありそうだけど……。まあ、この方もインターネット概念みたいな存在なんだね」
「じっしつ、よねづけんし」
「やめようね」
「もうどこへも行けないや」
玄米法師さんは脈絡のない言葉を発した。怖い。いまは暗くて見えないが、闇鍋開始前に姿を拝見したら、パーマの前髪で顔が半分くらい隠れていた。あと両腕だけものすごい筋肉隆々だった。KICK BACKのMVだなあと思った。
「ほら、にーと。さっさと、しょくざいを、いれろ」
くっ……。仕方がない。
僕は一番無難だと思われる食材を選んできたので、投入する。
入れるとき、食材が「ゆっくり霊m……」「……m理沙だぜ」と一瞬しゃべった。
次はれーちゃんが入れる番。
れーちゃんは「やめるっピ! 食べないでほしいっピ!」と悲鳴を上げる何らかの生き物を鍋に投入した。
次に玄米法師さん。
それを鍋に投入する瞬間、「あのー、食べるのやめてもらっていいですか? これってあなたの闇鍋ですよね?」という声がした。
えー、ここまでで既に闇鍋の意味がなくなっているのだけど、最後、あいちゃんがゲーミングな感じに光り輝く卑猥な形状の何かを華道部の格好をしながら鍋に投入したことで、全食材がゲーミングライトに煌々と照らされた。
「闇鍋の前提が崩壊していったよみんな」
「ご、ご、ご、ごめんなさいっ! や、闇鍋って、暗くないといけないって、し、知らなくて……あぅ……」
「でも、あいちゃんは、いんたーねっとの、しょしんしゃ。だから、これらのしょくざいを、しらないのでは?」
「う、うん……。知らない、です……っ」
「じゃあ、解説するね。僕が入れたのが『ゆっくり茶番劇』の」
「ティーダのチンポ気持ちよすぎだろ!」
「うわーーー!!!! どうしてワッカがここに!?」
今年5月に投稿されたFFⅩの音MAD『おとわっか』の主役・ワッカが突如現れて恍惚とし始めた。
「せめて伏せ字してよ」
「いいですか、落ち着いて聞いてください。あなたたちが闇鍋をしている間にこの家はインターネット存在に包囲されています」
今年1月からTwitterで流行しているツイッタラーに衝撃の事実を伝える医者が現れ、衝撃の事実を告げた。
「いんたーねっとそんざいが、4にんもあつまったから、いっしょに、よくないものも、ひきよせてしまったんごねぇ」
「特級呪物みたいに言わないで」
「俺と鍋をしたな! これでお前とも縁ができた!」
「ドンモモタロウ!?」
「闇鍋。私の好きな言葉です」
「メフィラス星人!?」
「1、10、100、1000、満点サロメ~♡」
「壱百満天原サロメ嬢!?」
「お前ら笑うなっ! こいつは誰も知らねぇとこで、毎日ブルーアーカイブで過酷な」
「ブルアカでアレした生徒をかばうヤンクミ!?」
「俺はパーを出したぞ」
「シャンクス!?」
「ッハァッ……ッハァッ……ッハァッ……」
「過呼吸ずんだもん!? 待って待って、この調子で2022年の全ミーム登場してたら僕の家がパンクするってば! れーちゃん、助けて!」
「お、ちぇんそーまんの、まきまだ。おーい、まきまー」
「マキマに全て捧げると言いなさい」
「まきまに、すべてささげる」
「れーちゃんが支配されたああ!? どっどうすれば!」
「ぼ、ぼ、ボクに、ま、ままま任せ……! あうぅ……やっぱり怖いですぅ……!」
「可愛いから大丈夫! く、このままでは僕の家の床が重量オーバーで崩壊してしまう……!」
絶望。
インターネットにハマりすぎた者は、インターネットで身を滅ぼす運命だとでもいうのだろうか。
しかし、その時だった。
玄米法師さんが、ゆっくりと立ち上がり、口角を上げた。
「……! 玄米法師さん! なにか、策が!?」
「全部めちゃくちゃにしたい……」
「えっ」
「何もかも消し去りたい……」
僕は電撃的に理解する。
この玄米法師さんが、KICK BACKのすがたな理由。
あの曲のMVで、米津玄師は、演出でトラックに轢かれて跳ね飛ばされる。
「しかもいまのあなたはインターネット存在・玄米法師! ニコニコやYouTubeにはあのMVを改造して米津さんがトラックでなく新幹線に轢かれる動画や、きかんしゃトーマスに轢かれる動画など、さまざまなMAD動画がつくられた……! つまり! 全てのインターネット米津要素を備えたあなたは! 米津玄師が轢かれるシリーズの全てを再現できる!!」
KICK BACKのメロディが流れている。窓の外を見た。新幹線が、セイキンの乗った車が、角竜ディアブロスが、宮本浩次が……その他たくさんの米津玄師を轢いてきたやべーやつらが一直線に迫ってくる。
「待って! 確かに全部吹き飛ばせるかもしれない! でも僕たちも巻き添えになりませんか!?」
「あなたのその 胸ぇ~のぉ~」
「えっまっあ」
「なアアアアアアかアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!」
←宮本浩次
←きかんしゃトーマス
玄 ←トラック ←セイキン
僕□あ ←新幹線 ←オーズOP
れ ←ディアブロス
←ゴルシ
「うわあああああああ!!!!!」
「ふぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!」
←宮本浩次
←きかんしゃトーマス ←松岡修造
ラック ←セイキン ←モルカー
←新幹線 ←オーズOP ←サロメ嬢
←ディアブロス ←堤真一
←ゴルシ ←┌(^o^┐)┐
「ぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃ」
「はわはわはわはわはわはわ」
←宮本浩次 ←ちくわ大明神
ーマス ←松岡修造 ←ツイバード
イキン ←モルカー ←5ちゃんねらー
←オーズOP ←サロメ嬢
アブロス ←堤真一 ←DLSite
←┌(^o^┐)┐
「あばばばばばば」
「ふにゃにゃにゃにゃにゃ」
←ちくわ大明神
←松岡修造 ←ツイバード
モルカー ←5ちゃんねらー
OP ←サロメ嬢
←堤真一 ←DLSite
^o^┐)┐ ←草
「(気絶)」
「(失神)」
くわ大明神
←ツイバード
5ちゃんねらー ←来年も
メ嬢
←DLSite
←草
「」
「」
ド
←来年もよろしくお願
e
←草
「」
「」
←来年もよろしくお願いします!!!
「」
「」
くお願いします!!!
「」
「」
!!!
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