第22話 幼なじみの転生は気付けない(22) SIDE ケイン
「勇者様にはりついててよかった。勇者と魔族は引き合うという伝承は本当だったんですね」
なんかろくでもない情報が聞こえたぞ!?
あんなのに出会い続けるの!?
「だがスキありだ!」
オレは腰の剣を抜きざま、魔族の胴を薙ぐ……はずだった一撃は、魔族の体でぴたりと止まった。
「勇者様下がって! 魔族には魔力でしかダメージを与えられません!」
何そのしばり!
「それなら!」
オレはバックステップで下がると、指輪に魔力をこめ、手のひらから氷柱を打ち出した。
氷柱は魔族を直撃。
しかし、上半身凍傷まったなしの一撃は、魔族の表面を冷やしただけたった。
魔族はこちらに目もくれない。
「物理現象になってしまった魔法ではだめなんです!」
魔法ってそういう感じなんだ。
魔族とメグが互いに放った拳大の光球が衝突し、衝撃波を撒き散らす。
残っていた家具や壁が吹き飛んでいく。
魔族はフードが揺れた程度だが、メグはかべまで吹き飛ばされ、ぐったりと頭を下げた。
「魔女と言ってもこの程度か……」
魔族が愉快げにつぶやく。
十分強いように見えるけど!?
なにかできることはないか!?
魔石を通じて魔法を発動はできるのだがら、魔力をそのまま操ることだってきっとできるはずだ。
根拠なんてないがやってみるしかない。
魔石をきっかけとするため、指輪に意識を集中する。
これまでは撃ち出す魔法の結果をイメージしていたが、過程となる魔力の流れをイメージ。
理屈はわからないので、上手くいくかわからない妄想だが、どうせダメもと!
そうしている間にも、魔族が倒れたメグの頭に手をかざす。
しかし、次の瞬間、魔族の腹を光の帯が貫通し、拳大の穴がぽっかりと空いた。
血は出ず、ただ空洞があるのみだ。
「魔族は人間をなめて油断する。師匠の言っていた通りだわ」
顔をあげたメグがにやりと笑う。
気絶したフリかよ!
これほど強い相手によくやる。
魔族がそのまま追撃してきてたら死んでるぞ。
「凝縮魔力の隠蔽だと!? この魔女がぁぁ!」
魔族は手に闇が集中する。
腹に穴が空いても動けるのかよ!
「やば――」
メグは横に転がって避けようとするが、魔族が手を振り下ろす方が速い。
考えるより先に体が動いていた。
それは、ここ最近魔獣を狩り続けて身についた条件反射だったのかもしれない。
気づくと、オレの剣は魔族の首をその胴体から切り離していた。
「バカな! 剣士ごときに魔族たるこのオレが――」
それでもなお喋り続ける魔族の首にメグが杖から出した光をあびせ、消滅させた。
首から下も同様に、念入りに消していく。
「ふぅ……助かりました勇者様。魔力剣なんてどこで習ったんです?」
「いや、なんとなくやってみたらできた」
「て、天才……? それとも勇者様ってみんなこうなのですか?」
「他の勇者のことは知らないが、難しいのかこれ?」
さっきと同じ要領で集中すると、こんどはあっさり剣が蒼く輝いた。
半分無意識だったが、一度できるとコツをつかめたらしい。
「村一番と言われたあたしでも、一年かかったんですよ。ちょっと悔しいです……。でも、助かりました!」
死闘の後なのに、とても元気の出る笑顔だ。
魔族に魔女。
フィクション作品では馴染みのある単語が出てきた。
その意味が気になるところだけど……。
「まずはこの場をなんとかしなきゃね」
「ですね」
これだけ派手に暴れたのだ。
いつ警備兵がすっとんで来てもおかしくない。
下手をすると、オレ達まで人身売買組織の一員だと思われかねない。
瓦礫の下敷きになっていたゴロツキ達を縄でふん縛り、木の切れ端に「オレたちが人身売買の犯人です」と描いておいた。
捕まっていた子供は、布の上に丁寧に寝かせておく。
ちなみに子供は奥の部屋も含めて合計5人いた。
戦闘にまきこまずにすんでよかったよ……。
あとはもう一目散に逃走だ。
なんか、最近も似たようなことした気がするね。
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