第19話 幼なじみの転生は気付けない(19) SIDE マリー
どうしよう。
どうするのが正解?
「え、ええと……人違いでは?」
「ですよねえ。人違いですよね。うんうん」
おーし、彼も無理矢理納得してくれたようだ。
「オレがマリさんをマリー様と間違えたこと、内緒にしてくださいね。もしマリー様にバレたら何をされるか……」
彼のマリーへの好感度がマイナスだ!
いやこれ、今のうちにどうにかしておかないとダメじゃない?
いったん引いてなんてことしている余裕はなさそうだよ。
やっぱり、すぐにでもなんとかしなきゃ。
「実は……私はマリーです」
「はぁ……お忍びというやつですか……」
うわぁ……隠してほしかったって顔してるよ。
「少し、お話しさせていただいても?」
「はい……」
めっちゃイヤそう!
悪いけどつきあってもらうよ。
まさか屋敷につれてくわけにもいかず、私達は彼の家へと向かった。
男の人の部屋に入るのは抵抗があったけど、これだけ私と距離をとりたがっている彼なら心配はないだろう。
…………たぶん。
「私の評判が最悪なのはご存じですよね」
念のため警戒し、私はドアを背に立ったまま。
彼はベッドにこしかけている。
「いえ……そのようなことは……」
この歯切れの悪さが、彼の心情を物語っている。
どうやら嘘は下手なようだ。
信用しやすくて助かる。
「いいのです。わかっていますから。お話とはそのことなのです」
「マリー様はこの街はおろか、公爵の収める土地全体から恨まれてることですか?」
そこまで言ってないけども!
そうかあ……この街だけじゃないかあ……。
「ま、まあそういうことです」
「まさかマリー様に逆らう者をオレに暗殺しろと!? 街から人がいなくなりますよ」
そんなに!?
「そうではなく、私の評判を上げる協力をしてほしいのです」
「賄賂を配ってまわるということですか? そういったことはあまり得意ではないのですが」
予想される手段がいちいち黒い!
私のイメージどんだけ……っていうのは今さらなんだよね。
「もっとまともな方法をとりたいのです。心を入れ替えていこうと思いまして……」
「……なぜそんな話をオレに?」
完全に信じてない顔だこれ!
しょうがないけどさ。
「これまで私がしてきたことを考えると、まともにとりあってくれる人はいないと考えています。それでもケインさん……勇者様ならと……」
私にできる精一杯のしおらしさで彼の目を見つめる。
「そもそも、なぜ急に心を入れ替えようなんて思ったんです?」
そこから疑うかあ!
当然だよね!
私でもそうするわ。
転生のことは、父にバレると命があぶないので伏せておくとして、それ以外の嘘はつかない方がいいだろう。
下手にとりつくろったところで、信用を得られるとは思えない。
「最近、身の危険を感じるのです。その……私は色々な方に恨まれてるようでして……」
「自業自と――あ、いや。それは大変ですね」
わかってるよ!
自業自得だって!
でも私がやったんじゃないもん!
「協力してもらえませんか? お礼はできるだけします」
「拒否権はないのでしょう?」
嘘じゃなくても信用してもらえてない!
脅されてると思ってるよねこれ!
背に腹はかえられないかぁ……。
こうなったら、脅しと誤解されて協力してもらうよ!
どうせ私の好感度はストップ安なんだからね。
ああもう! ハードモードすぎ!
せっかくの転生なんだから、おもしろおかしく暮らしたいのに!
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