第58話:腐れ坊主に鉄拳を(第11章おわり)

 

「本願寺の大将。下間頼廉しもづまらいれん。明智家家臣、前田利益が討ち取ったぁ!!」


 だから、慶次。お前は信ちゃんの家臣でしょ?

 名乗りを改めてね。



 一揆衆は士気が吹っ飛んだあとは弱い。

 中央の一揆勢が一瞬で壊滅したことを知り、これは草(笑いではなく忍者を間諜として入れてある)が大げさに流言を流したんだけどね。

 正面の10000以上の兵が蜘蛛の子を散らすように逃げていった。


 左右から攻めてくる一向宗も士気は低い。そこに降り注ぐ大量の鉄砲射撃。

 これだけでいいかもしれないけど、俺にはどうしてもやりたいことがあった。



 慶次に後始末を任せて、本願寺の正門を開ける。

 そのうち多くの人がなだれ込んでくるだろうからね。


 様々な錠前を壊していく。主に米蔵と金蔵。豪華そうな倉を一つだけは残しておくよ。


 そして段々と奥へ。

 これくらいのことは加速しなくてもできる。僧兵がうじゃうじゃいたけど、一気に本丸に当たる場所まで強行突破。

 誰も俺を止められない。


 お百姓さんを殺すのは気が引けるけど、この連中を殺すのは何も感じない。

 でもヘタレな光秀は生かさず殺さず。右腕を斬り落とすだけで勘弁してあげるね。



 でもこいつだけは腕だけではおさまらない。

 正史でどれだけの人を苦しめたんだよ?


「何者か?」


 立派な装束を着た坊さん。

 顕如とか言うやつが、俺の目の前にすわっている。


「あんたを殺すために、未来からやってきた」


(○○、神様にこの家のすべてをささげないと災いが起きるんだよ)

(これも全てお前の為なんだ)


 と~ちゃんとか~ちゃんの真剣な狂った目を思い出す。



 相手は違うけど、見せしめにしたい。狂信者を作り出すとこういう目に合うよ、と。過去への見せしめ。


「あんたの教えでは進めば極楽なんだよな。逃げれば地獄。だったら俺に歯向かってみな。極楽へ行けるぜ」


「織田のものか? 何を申す。叡山を焼き討ちし多くの僧をなで斬りにする第六天魔王信長の家臣が。人非人のそなたに斬られる拙僧ではない。

 誰かある!」


 この丸々と太ったじいさん。

 周りにいるの護衛を呼んだ。


「いやいや。もうその人達、とっくに極楽に行っているよ。歯向かったからね。あんたも一緒に極楽いかない? きっと楽しいよ?」


 なにそんなきょろきょろして真っ青になっているの?


「き、貴様。悪鬼か妖怪か? なぜここまで一人で来れた? なぜそんなに強い」


「一子相伝の犠牲者だ。いや、宗教の犠牲者だね。宗教違いだけど、ここは見せしめになってくれ」


 俺はこのデブ坊主をかついで、外からよく見える矢倉へ登って行った。気色悪く太った身体が一目見て気持ち悪いように僧衣を脱がしておく。

 それを戦場からよく見える位置に吊るす。



「聞けぃ! 戦場の兵ども! この戦に正義というものはない。特に坊主には地獄しか待っていない。

 この者、本願寺の首魁、顕如とか言う肉塊だ!

 見よ、この太った身体。自分たちのやせ細った身体と見比べて見よ。どれだけ私腹を肥やしているか分かるであろう!

 今、御坊の金蔵と米蔵、全て開け放った。

 今まで民衆から寄進とか言って集めてきた財産、取り放題だ。早い者勝ち。織田勢は取らぬ。命も、もう取らぬ。

 だがこの肉塊を助けたいと思うものは、この明智十兵衛光秀が1人たりとも見逃さずに、地獄へ送ってやる。

 進んでも地獄へ送ってやる。

 退けば金銀財宝が待っている。

 さあ、どちらかを選べ!

 早い者勝ちだ!」


 もちろん、その声を合図に草(笑いではないよ)が、一目散に御坊の門を目指して駆けていく。

 それを引き金にして、我も我もという流れが出来ていった。


 群衆心理ですねぇ。

 でも皆さん、また群衆雪崩起こさないでね。

 大手門みたいな山門で交通整理したいけど流石に無理な状況。後は知らない。


「さあ、この人の流れを止めて見ろよ。お偉い坊さんなんだろ? 法力とかで止められるんでしょ?」


「人は弱いもの。悪人だからこそ極楽へ行けるのじゃ。

 なんであの者達を攻められよう」


 悪人正機説とか言う奴?

 そういうのって努力した後いう言葉じゃない?

 最初から努力放棄しちゃいけないよ。そんなことじゃ素敵なガンプラは作れないぞ!


 マスキングを失敗した時、マーフィーの法則を言っても空しいだけ。

 立派なヲタクは最後まで努力をするのが正義だ! フィットネスは努力しない光秀だったけど自分で稼いだ金で丸々と太っていたんだ。

 最後まであきらめずダンベルはきちんと棚に飾って置いた。ホコリかぶってたけど。


「そうか。じゃあな。腐れ坊主。進みも退かずもしないおまえはどこへ行くんだろうな。楽しみにして待っていな。最後まで人を惑わそうとする極悪人ならば梵天様のおそばに行けるだろ? おめでとう」


 そして最後のセリフを大声で周りに向けて放った。


「この肉塊を好きにしろ。助けるものには鉄砲玉を。切り刻むものには最高の宝物庫のカギをくれてやる。

 さあどうする!?」


 矢倉から吊るされた肉塊は瞬く間になくなっていった。

 俺はそこに出現した地獄に錠前のカギを投げ入れる。


 ・・・・・・


 復讐とはやってみると後味が悪いもんだね。

 これを題材とした映画でも作られば、少しは被害者減るかな。

 無理なんでしょね。


 やっぱり人は弱いものです。

 いい宗教に巡り合うといいね。


 光秀、ヲタク教は作らないつもり。

 でも家臣の奴ら、光秀の死後、神格化しそうでコワイ。

 絶対やめてよね。


 光秀、やっぱり宗教嫌いです!


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