第18話:期待度MAXで恐怖MAX
1567年9月
北伊勢。千種城東方
「では左翼は明智殿。右翼、池田殿。正面中軍は、それがし滝川の備えにて」
滝川君の600の鉄砲隊を二手に分けて中央と右翼に。明智機動部隊は、兵250で左翼から回り込む。いわゆる横槍だ。
普通は横槍って持ち手の関係で右から回り込む方が効果的だけど、右手に三滝川があって厳しい。まあどっちでも大して違いないので平地のある丘を左手を回り込んで、鉄砲一斉射撃後の突入となっている。
「敵は北畠が主力、総勢6500。こちらは同数じゃが、後ろの千草城の突出に備えるための800がおらん。5700のうち、5500で敵のほとんどを支えねば。各々方、くれぐれも横槍が入る前に、後退・突撃をなされぬよう」
滝川のおじさまがハスキーボイスで、みんなに作戦を確認している。
「明智殿。
「承知いたした。この時のために配下を鍛えに鍛えてき申した。ご期待に応えるよう奮戦いたしまする」
いや~。
奮戦するのは部下なんだけどね。
鉄砲隊は前田のに~ちゃんと金森君に任せてあるし、突入する騎馬隊は世紀末救世主的なコスをした鼻ほじ武将、慶次だし。
采配は半兵衛っちが教えてくれる。
楽で楽で。
大船に乗っちゃいます。
さて、いざ、楽勝な戦場へ参らん!
◇ ◇ ◇ ◇
「斥候が帰って参りました!」
「通せ」
『物見』よりも『斥候』のほうがわかりやすいよね。とってもヲタクっぽいので好き。
「利用可能な進撃ルートはいくつですか?」
「2つ確認。沼地と深田の間。それから丘と深田の間」
てきぱきと半兵衛っちが、進撃ルートを策定する。
楽だけど、なんか物足りない。自分もかっこいいとこ見せたいな。そうじゃないと寧々ちゃんに寝物語ができない。
「半兵衛。どちらのルートの方が時間が短いか?」
床几(キャンピング用のパレットスツールみたいなやつ)に腰かけて、組んだ足の上に肘を載せ、かっこつけて頬杖をつく。
どう? かっこいい?
アゲハよ。見ているか?
必ず寧々ちゃんに報告するんだぞ!
……あ、アゲハ、今斥候に出てる。残念っ!
その質問を聞いた半兵衛っち。
「ハッ」とした表情で、俺の顔を見る。
そして、
「な、なんと遠望神慮な作戦を。では丘の裾野ではなく、わざと危険な沼地のコースを?」
ええええ?
何言ってるの。
沼地だよ?
一本道だよ?
逃げ場ないじゃん!
「とてもわたくしの思いつく様な作戦ではございませんでした。流石は戦の神髄を……」
それ、やめてください。
骸骨先輩。あなたは毎回こんな気持ちなんですね。その玉座。こっちのパレットチェアも同じ座り心地です><
とてもじゃないが、俺の頭では作戦が浮かんできましぇん。
しかたない。半兵衛っちから、その作戦を聞きだすか。
「うむ。それにかかる時間は?」
「はっ。丘を登るのにどれくらいかかるかで勝敗が決まりますが、多分30分は掛からないかと」
ああ。時間だけど、これは日時計でその月の1時間を決めて、やっと開発できた冬木製1時間砂時計と10分時計、それから持ち運びできる1分時計で1分を計っている。
もちろん、1つずつしかない。
あいつが作らないのだ!
「飽きた」と言って。
分かるよ、その気持ち。
目的が達成されれば、もう興味はない。
「ならばコースをたどる所要時間は?」
「兵員数によります。別動隊はどの小隊に?」
そ~だな。
本隊は200くらい必要か? いや多分だが、進撃する隊は囮。俺は丘の上から一斉射撃をする本隊を指揮すればいい。
じゃ、囮は50もいればいいか。いや30くらいでもいいかな? 盛大に音や煙を使えばいけるんじゃね?
「機動力に富む選りすぐりの騎馬隊でよいであろう」
半兵衛っちの顔色が、また真っ青になり、それから興奮したように赤くなってきた。竹中半兵衛ってこんなに感情を表すキャラだっけ?
「何と大胆な。では殿自らが囮となり丘の上で、狙撃と突撃を行うと? それではわたくしは責任をもって本隊を率いる利家殿へ、後方への迂回路と攻撃時期の助言をします」
本隊じゃなくて俺が丘の上で囮?
そこに武将は俺、ひひひひっ……1人?
襲って来る敵1000人以上を30人で防げって事?
「大丈夫だよ十兵衛。こんな時、気張る奴をつけておくから」
利家に~ちゃん。それって、
……け、慶次?
「後は、だれが適当か?」
「あの方ならば1人で十分かと」
げげ。
じゃあ、あいつに助言とか期待できないから、指揮采配は俺が全部考える?
「この作戦。殿の采配次第。誠に栄誉ある役にて。殿の采配故、既にこの戦、勝ったも同然!」
やめてくれええええええ!!
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