アナザーワールズ=スカイ

日々新

前書き

 昨今のゲーム業界は開発費の高騰が著しく、JRPGの黄金期のように、大作RPGをコンスタントにリリースすることは非常に難しくなっている。

 特にシングルプレイのゲームはフロービジネスのものがほとんどであり、継続的な収益を見込めないため、低コストで開発できるインディーズゲームが興隆している現状がある。


 Gocha Gocha Gamesがツクールシリーズのパブリッシング事業に取り組んでいる背景には、インディーズゲーム業界のクリエイターを積極的に取り込んでいきたい思惑があると推察する。

 カクヨムと提携してコンテストを開催する狙いは、おそらくストーリーテリングで差別化を図ることにあると思われるが、しかし応募要項の文言を見るに、単に高品質なビジュアルノベルを求めているわけではない、と見る。


 以上のことから、求められているのは「ツクールで」「低コストで開発できる」「ストーリーを活かした」「独自色の強い」「シングルプレイのゲーム」であると考察する。


 では具体的に、どのようなゲームがよいのか?


 これを考えていく上で、まずはメディアの性質の違いを押さえておきたい。


 1本のテキストを読み進めるだけの受動的な小説と、プレイヤーが能動的にストーリーに介入できるゲームとでは、当然ながらユーザー体験の幅は大きく異なる。

 ゲームというメディアの特性を活かすのであれば、いわゆる『プレイヤーの自由度』を広げる方向性で企画することが望ましい。


 しかしながら、フリーシナリオやマルチエンディングといった形でストーリーを用意すると、その分岐の数だけ金銭的・時間的なコストがかさむことになる。

 どれほど優れたアイデアであろうと、開発リソースが足りなければそれは絵に描いた餅だ。


 つまるところ、プレイヤーの自由度は確保したいが、開発リソースを温存するためにはストーリーの分岐を減らしたほうがよいという、もどかしい二律背反が生じてしまうことになる。


 これを解決するアイデアとして今回提案したいのが、コマンド選択式のADVである。


 言うなれば、「一本道のストーリー構成上でプレイヤーに自由度=コマンドを提示すればよい」という逆転の発想だ。


 ゲーム開発の歴史を振り返れば、過去にコマンド選択式のADVが採用されたことはあった。

 日本ではエニックス(現スクウェア・エニックス)から発売された『ポートピア連続殺人事件』などがその代表格だが、このような古典的なミステリーADVは、テキストの質を重要視したJRPGやサウンドノベルの発展によって次第にその数を減らしていった経緯がある。


 しかし今、もはやJRPGに全盛期の勢いはない。

 ノベルゲームも斜陽に傾いて久しい。

 JRPGやノベルゲームが衰退した原因としては、冒頭で述べた採算性の問題のみならず、ソーシャルゲームが台頭したことや、スマートフォンでアニメや漫画などの娯楽を手軽に楽しむことができるようになったことなどが理由として挙げられる。


 要は、テキストベースの凝ったストーリーの優位性が薄れているわけである。


 一方で、昨今はJRPGの衰退と反比例するように、オープンワールドRPGが人気を博している。

 またテーブルトークRPGの人気も再燃しつつある。

 このようなRPGが支持されているのは、やはりプレイヤーが能動的に動いてトライ&エラーを楽しめるという、メディアの独自性によるものだと見るべきだろう。


 ならば、コマンド選択方式で読み解くADVもまた、往年のゲーマーには懐かしさとして、新参のゲーマーには真新しさして魅力的に映ると確信する。


 余談だが、コンピュータRPGが浸透する以前は、TRPGやゲームブックが流行していた時期もあった。

 これらコンピュータRPGの原点をリスペクトして、コマンド選択式ADVの土台とする、というコンセプトに立脚しゲームの原案として取りまとめたい。


 結論としては、プレイヤーにコマンドを提示し、より深くストーリーに没入してもらうというアイデアから、ゲームの骨子となる原案小説を提案する。

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