70

彼女は色々と世話してくれた。


 宿の手配や、装備の手入れ、怪我の手当、ギルドへの換金などもだ。俺の仕事はもっぱら瀕死になった魔物への止めと剥ぎ取りだけ。いいのかこれで。


「あ、私がやっておくよ」


 彼女はとても世話好きらしく、こちらがやる前に率先してやってくれる。


うーん、ダメな男になりそう……せめて自分の服の洗濯くらいはやろう。


「え、エルフは水の精霊じゃないのか?」


「そうだよ。エルフは風の精霊から力を借りてるの。だから人間の魔力の仕組みも知ってはいるけど、よくわからないの」


ここに来て新事実。精霊は一体じゃなかったというのだ。ということはもしかしたら男に力を貸してくれる精霊もいるかもしれない……


「人間って何故か男性が蔑まれてるよね。なんかそういうの見てるとイライラしてくるわ」


「――!」


まさかそこに共感してくれるとは……


「ダメだよね。男性は弱いんだから優しくしてあげないと」


「え? あ、うん……」


なんか違った。エルフと人間の価値観の違いだろうか。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る