40

 あの戦いから一日過ぎた。


 彼はあれからおば様から勘当された。既に街に生活基盤を築いているらしく、あっさりと彼は出て行った。


(あれ? 改めて告白は――?)


 思っていた展開と違った。てっきり私に勝った彼が『俺がお前を守る!』的なことをいって私が『クッ仕方ない、受け入れよう』という展開になると思っていた。


 改めて彼との最後の会話を思い出す。


『俺はお前と違って才能が無かった。だから今まで努力を重ねてきた』


(ここはいい。ただ事実を言っているだけだ。)


『お前は違ったようだな……』


(ここ! ここはおかしい。)


 私だって努力は続けてきた。でも確かに結果として私が負けたのだから努力が足りなかったのは認めよう。ただこの文面は少しおかしい気がする。何か裏の意図があるんじゃないだろうか。


(そういえば最後に彼はこうも言ってた)


『俺の嫁は俺が決める』


 まさか本当は、彼は彼を倒すような強者との結婚を望んでいて、本当は昨日私に倒されたかった。でも彼が勝ってしまったので、お前は違った。俺の求める嫁ではなかったっていうことだったのか!


(まさか――私が勝つのが正解だったの!?)


 しまった。私はなんて大きなミスをしてしまったのだろうか……後悔してももう遅い、彼は村から旅立ってしまった。


「お母さん!」


「どうしたのヴィルマ?」


「私、決めたわ! もっともっと強くなって、いつかシューベルトに再戦を挑む。そこで今度は私が勝って改めて婚約を言おうと思うの!」


「あら、本当にヴィルマはシューベルト君のことが好きなのね」


「ええ、だって私を倒した男の子よ!」


「ふふ、そうね。じゃあまた強くなって挑みにいこうか」


「うん!」


 待っていなさいシューベルト、いつか貴方の理想の女の子になって、改めて貴方の前に現れてあげるわ!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る