07
ハッ、ハッ、ハッ
まだ日も登っていない早朝に息遣いだけ聞こえる。彼はあの日から、私に勝つために自己鍛錬を始めた。走る姿や剣を振る姿を見て、素直にカッコイイと思った。
そもそも彼はあまり外に出る子じゃなかった。たまに外に出てきても村の子供に馴染めず一人で輪の外から眺めているような子だった。そんな姿を見て、私が彼を守ってあげなきゃと、子供心に思った。母から彼が許嫁になると言われて一層その気持ちが強くなった。
だけど彼は、信託の日に許嫁になることを嫌がった。少しムカッとした。だから私は貴方より強いんだ、貴方を守ってあげられるくらいに。それを証明するために彼をボコボコにした。
そして彼が変わった。
その日から彼は、人が変わったように自分を鍛えている。そんな彼を見て、私は泣いた。そんなに私との結婚が嫌なのかと。それを母に相談する。
「シューベルト君はきっと、守られているだけなのが嫌なのよ」
「グスグス……どういうこと?」
「きっとシューベルト君はヴィルマの後ろじゃなくて横に立ちたいんじゃないのかな」
「横に……?」
「そう。だからヴィルマも彼に負けないくらい頑張って強くならないとね。たくさん鍛えて、彼の横に立てるようにね」
「でも、シューベルト私より弱いよ?」
「あら、分からないわよ。男の成長って早いんだから」
そういってクスクスと笑う母と、ハハハと乾いた笑いをあげる父がいた。でも彼は私の事が嫌いじゃないんだ、良かった。
それから私は、彼の成長を確かめたくなり、彼に勝負を仕掛ける。
「シューベルト、勝負よ!」
「やだよ」
「なんでよ!」
なによ! 貴方が私の横に立てるか見てあげるんだから戦いなさいよ!
「……15歳だ」
「?」
「成人になる15歳にお前を倒す。それまで待ってろ」
彼の目はとても真剣で、何かを決意した表情をしていた。きっとそれは、私を倒して何か大事なことを伝えるために必要なのだろう。
まさか、私を倒して改めて告白を――!?
こうして彼女の勘違いが進んでいく。
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